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八月十五日午後一時三十分

 直接的な表現は有りませんが、水難事故や自殺等の描写が出てきますので、抵抗がある方はご覧にならないでください。

 同姓同名の方、申し訳ないです。

 第三話以降は週末に二話ずつ(土日に各一話ずつ)更新していきます。

 夏服の白い靴下に泥が飛び跳ねないか気を付けながらも足早に待ち合わせ場所に向かった。自分が探す人の姿はなく、ケータイを開いてみれば、メールが1通。


『ごめん、予定が押してちょっと遅れそう。』


 まあ、仕方ないか、とため息をついた。アスファルトの上で泡沫うたかたの王冠を作りすぐに黒灰色の隙間へと消えて行く雨を眺めていた。

 「ちょっと」が10分なのか、30分なのかそれとも1時間なのか、せめてそれくらいの目安を教えて欲しかったけど、そんなことで腹を立てるのも恥ずかしい気がしてゆっくり待とうと思った。付き合ったばかりの相手に、心が狭いと思われるのが嫌だったという考えもあった。

 電気屋の外につけられたディスプレイにはニュース番組が流されていて、専らこの台風と大雨の話題ばかり。


『台風に刺激された前線はさらに活発になっており、全国の広い範囲で大雨になるでしょう。台風の通り道の各地域では強風と浸水に、海沿いの地域では高波にも警戒してください。また山沿いでは雨により地盤が緩くなっている所もあり、土砂災害にも注意が必要です。では、各地の天気です。』


 待ちに待ったデートなのに、よりによって今日は雨。この後からさらに強くなるみたいだし、早く会ってどちらかの家かせめて建物の中に行きたい。ほんの微かに苛立ちを感じて、でもその苛立ちを掻き消すように顔にかかった前髪を寄せた。

 雨足が強まっても、まだ、来ない。電話くらい良いかな、と思い発信ボタンを押す。ウザいとか、思われないかと少し心配になったけど、出られないならその時はまた待っていればいいと大きく息を吸い込んだ。しかし、電話はかからず、電源が入っていないと言われてしまった。

 予想外の反応に、眉をひそめてしまった。人を待たせてるんだから、せめて後からでもかけ直せるようにしてくれれば良いのに、と。

 でも、1時間も待っていれば、苛立ちは心配と不安に変わる。靴の中がじわりと湿り気を帯び、冷気が足元から這い上がってきた。

―きっとケータイの電池が切れただけだ...すぐに慌てて来てくれる―

繋がらないケータイを強く握りしめて、人気の無い交差点を睨んだ。


『大雨洪水警報と強風注意報が出ています。台風が近づくに連れて、さらに風が強まることが予想されます。なるべく外出は控え、今後の情報に...』


 アナウンサーの無機質な声が雨音で聞こえなくなり、灰色だった景色は強い雨のせいで白く霞んでいた。

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