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「うぅ…寒っ」
平成2*年3月。
春も近いというのに雪がちらつく最中、体を震わせながら、俺、一之瀬 圭一は長い信号を待って居た。
長いなぁ。この信号。早く青になんねぇかなぁ。
苛立ちさえ覚えてきた頃、ふと隣りに女の子が来た事に気付く。
普通の子だったなら、視線を信号機へ戻して苛立っていただろう。
だが、その子は存在そのものが不思議だった。
肌も腰まで伸びた髪も白く、その上ノースリーブのワンピースまで真っ白で今にも消えてしまいそうな儚げな少女。
露出した服を着ているのに、不思議と『寒くないのか?』という言葉は出てこないぐらい、少女は都会の冬景色に溶け込んでいた。
儚い美しさに俺が見惚れていると、突然その子はゆっくり歩き出し、自分も我に返って信号機を見ながら歩みを進めようと顔を上げたが、信号機を見れば…信号の色は赤。
あれ?信号…赤、だよな。
横断歩道をゆっくり歩く少女に視線を向け、左右を確認すると自動車が少女に突っ込む寸前だった。
「あ、危ないッ!」
と、大きな声を上げた…が、何もないように自動車は走り去り。
少女もいなくなっていた。
周囲にいた人達は不思議そうに俺を見ていた。
当の俺はというと、差し延ばした手を引っ込める事も出来ず呆然としていた。
信号機が青になり周囲の人々が俺を置いて歩みを進めていく。
「は…な、なに…夢?」
俺がとぼけた顔で辺りを見渡しながら言葉を零した、その時…—
「ねえ」
唐突に俺の背後から声を掛けられる。振り返れば、先程の少女。
「貴方。私の姿が見えているの?」




