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勾玉遊戯 みすまるゆうぎ/鬼と巫女、兄と妹、二重禁忌の転生・異類婚姻譚  作者: さかきちか


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蔵姫追儺 08

 

 

「ただいま」


 玄関の引戸を開けると、――妹が立っていた。


 責めるまなざしが、柚真人を睨む。


 柚真人はちょっとした悪戯が露見てしまった子供のように、困った顔で首を傾げた。


「……終わったみたいね」


 そう、いう。


「うん。終わった」


 柚真人は、靴を脱いでコートを肩から降ろし、室内履に履き替える。


「そう」


 司が柚真人を追って、くるりと踵を返す。


「本当に、物好きだよね」

「……」

「……兄貴の気が知れないよ。他人の私生活に足突っ込むなんてさ。悪趣味だと思わないわけ?」

「……そう。そうかもしれないね」




 種を明かせば、簡単な事だ。




 司に背を向けたまま、柚真人は苦く笑った。


 ――お兄ちゃんが、大好き。


 三条という同級生が最初に柚真人を呼び止めたとき、柚真人は、その少年の傍らに二人の少女を見た。よく似た、幼い少女たちだった。


 ――お兄ちゃん。お兄ちゃん。あたし……この子と逝くの。もう、一緒にいられないの。


 少女の一人が一生懸命に、そう、三条に呼びかけていた。兄の祐一には、聞こえるはずもないというのに。


 ここから出たくない、といえば、それは我儘だと叱って、誰かがその重い扉を開けてくれると思っていた。少女はそうして兄に呼びかけていたのである。



     ☆



「そうでなけりゃ、おれだって考えたんだが」

「え? なにかいった?」

「いいや。――夕御飯にしよう、司。今日はどうする? 何か食べたいものある?」


 柚真人は司を振り返る。


「まだ早いから、なんだったらこれから買い物いくよ」

「そうね。でも……何でもいい。兄貴のつくる物、美味しいから」


 笑っているような、怒っているような、呆れているような、複雑な表情で司が言う。


「おなかは空いてるのよ。さっきから。うん、なんでもいい」




 ――まいる、よな……。


 逆らえない。たったそれだけのことなのに。

 そんな笑顔で、そんなことをいうから、ついつい前掛なんかして、台所に立ってしまうのだ。


 ――ああ……。そうでもなきゃ。……おれだって料理なんかしやしないんだよ。そのへんのところ……わかってんのか、司ちゃん?


 嘆息して、司には悟られないように背を正す。


 ――我ながら。なにやってんのかね。不毛なことを。


 それにしたって。


 無条件に弱いんだよな。『妹』には。


 どうにかしなければ、と柚真人は思った。

 それは苦い想いだった。

蔵姫追儺(了)

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