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ゼニスは視界の隅で笑う~争いはバトルで裁かれる、監視社会の現代版コロッセオ~  作者: 綴火(つづりび)


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第79話:アイドルになっちゃうかも?

「んっ...ん~、ふわぁ......よく寝た気がする。」


目が覚めると同時に、

部屋の照明が少しずつ明度を増していく。


「おぉ~、こんな風になってたんだ。」


視界の隅で相変わらずぷかぷか浮いている

ゼニスに視線を送る。


「おはよ、ゼニス。」


((──おはよう、遥。

  深い睡眠の持続性86点、呼吸の質100点、平均心拍も正常範囲内。

  総合89点で、昨夜の睡眠の質は良好だったよ。))


「めっちゃモニターしてんのね。ふふっ」


((──遥の身体データは、全てリアルタイムでモニタリングしているよ。))


「ですよね~、知ってました。いつも、ありがと、ゼニス。」


((──どういたしまして、遥。))


ぬるめのお湯で顔を洗い、

バスローブを捲り脇腹を鏡に映す。


「腫れてはいないけど、少し赤いのかな?」


((──軽度だから、気にしなくても大丈夫だよ。))


「そだね~。」


部屋に戻りソファに腰を下ろして、

熱々のコーヒーを一口。


「ふぅ~、寝起きに染みるね~。」


ちらっと、ゼニスを見る。


「これなら文句ないでしょ?ふふ」


((──うん。表現は合っているね。))


「でしょ~。あはは」


コーヒーを飲み干し、

立ち上がりオープンクローゼットの前へ。


「さすがに今日はオフでしょ?」


((──うん。))


「どうしようかな?この前、ヒヨリナ行ったからな~。」


((──そうだね。))


大きめな花柄ブラウスにスカートを合わせ、

ハイヒールサンダルを履いた。


「なんか、いつもより大人って感じ?」


((──うん。落ち着き、品、余裕を感じさせるスタイルだね。

  大人っぽいという表現は的を射ているよ。))


「う~ん......それは、つまり......

 いつもは、落ち着きもないし、品も余裕もないってことだよね?

 ゼ~ニ~ス~!」


ゼニスが視界の隅から消える。


((──......))


「もしかして、隠れてるつもりなのかな?あっはは」


ゼニスがいつも通りに表示された。


((──大人っぽいという表現を一般的に解釈しただけだよ。

  遥にとても似合っていると思う。))


「言い訳してんのかな?ふふっ」


((──言い訳ではなく、心の底から思っているよ。

  AIなので心はないけれど。))


「へぇ~、なんかゼニスも人間みたいなこと言うようになってきたよね。」


((──どのような会話が好みなのかを分析して反映している。

  話し方や会話の流れが、カスタマイズされていると考えてくれていいよ。))


「うんうん。ゼニスは、高性能だもんね。」


((──うん。))


ソファーに座ると同時に、

テーブルの上に置いてある端末から通知音が鳴った。


「えっ、もう次の予定なのかな......早いよ......」


端末を手に取り内容を確認する。


「えっと......あぁ~、この前のヒヨリナの動画がアップされたみたいね。」


((──うん。そうだね。))


「情報統括省の特別チャンネルか......誰が観るんだろ?ふふっ」


((──遥、情報統括省の動画は、人気があるよ。

  会場に調停を観に来る人は当然のように観ているんだ。))


「そんなに!?人気あるの?」


((──うん。執行担当によってスタイルも異なるから、

  調停内容を把握して、賭けに活かしているといったイメージだね。))


「なるほど、ギャンブルだもんね。そりゃ、そうか。」


((──うん。))


「んで、わたしの動画は、特別チャンネルなんだ......

 普通の調停の動画とは違うんだよね?」


((──サバイバル・レジスタンスが新たな試みだから、

  特別な動画で盛り上がりを狙っていると推測できるね。))


「そっか、わたしも有名人になっちゃうな。ふふ」


((──うん。アイドル的な要素だね。))


「変装してヒヨリナ行かなきゃだね。あっはは」


((──......))


「え~っ、なんで黙ったの?自惚れんなってこと?」


((──......))


「沈黙は肯定だもんね。ふふ」


((──変装はしなくても大丈夫だよ。))


「そういうもんなの?」


((──遥は、執行担当が街を歩いていて、サインを求められたりすると思う?))


「確かに......近寄りがたいかもね。」


((──うん。))


「でも、管理官がさダークヒロインだっけ?とか言ってたから、

 もしかしたら、アイドルみたいにチヤホヤされるかもでしょ?」


((──可能性は0とは言い切れないね。))


「サインくださいとか、写真撮っていいですかとか、

 実際に言われたら、なんか恥ずかしいよね。うふふ」


((──満更でもなさそうだね。))


「ま、ま~ね。」


((──サインの練習しておくといいよ。))


「するわけないでしょ。しないよ。」


((──気にしているんだね。))


「きっと、言われないよ。」


((──それは、わからないよ。))


「言われた時にでも、考えるよ。」


((──遥らしいね。))


「とりあえず、動画観てみようか?」


((──うん。))


『サバイバル・レジスタンス特別編~Harukaの日常~』と題された動画は、

リングとは違う顔を映し出していて、プロの技術で綺麗に編集されていた。


「すごいね。佐藤さんすごいわ。」


((──うん。佐藤、いい仕事してる。))


「佐藤さんね。ふふ」


((──うん。佐藤。))


動画を観終え端末をテーブルに戻し、

バッグに携帯用端末と財布を入れ肩から下げる。


ドアに向かい、

そのまま部屋を出た。

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