第77話:初戦の結果は?
ブー、という電子音と共に
ドローンがリング上部へと飛び上がる。
1R目とは異なり、
4401は突っ込んでこない。
((思ったよりダメージあるのかな?))
((──うん。左太ももが赤く腫れているから、
踏み込みが上手くいかないと推測できるよ。))
しっかり構えて、
間合いを取りながら4401を見据える。
((こないなら、こっちから仕掛けようか?))
((──うん。相手の隙を見つけてポイントで示すね。))
((お願いね、ゼニス。))
4401は肩幅に脚を広げ右手を後ろにし、
オーソドックスな構えで狙いをつけている。
4401が左脚を少し前に出した瞬間、
ポインターが赤く腫れた箇所に点灯。
左脚を踏み込み、
ポインター目掛けて右脚を思いっきり振り抜いた。
バチン、という音が響き、4401の動きが止まる。
苦悶の表情をしているが、
眼光の鋭さは衰えていない。
((いい感触だったけどな......))
((──確実にダメージは蓄積できているから、
焦らず落ち着いていこう。))
((うん。))
その時、
4401は力を振り絞るように前へ出る。
太ももに痛みなど感じていないかのように、
左、左、右と連続でパンチを繰り出す。
いつの間にか、
4401の間合いまで詰められていた。
((ヤバっ......))
ミシッ、右の脇腹にズシリと重い感触、
瞬間的に息が止まりそうになる。
そのまま、4401のパンチが容赦なく降り注ぐ。
成す術なく、ガードを固め後退。
((──遥、4401の左側に回り込んで。))
パンチを放ちながら前に出てくる4401の左側へ回り込むように、
右側に体を捻りながら躱す。
ポインターが、
左太ももに点灯、すかさず蹴りを当てる。
間髪入れずに左脇腹にも表示、
戻した右脚を即座に振り抜く。
バキッ、という鈍い音と共に
4401のガードが下がった瞬間、
左側頭部にポインターが点灯する。
左脚でしっかり踏み込み、
右脚を鞭のように4401の側頭部へ叩き込む。
ドサッ、と前のめりでリングに倒れ込む4401。
リング上部で戦況を見守っていたドローンが、
4401の側に降り、周囲を旋回しながら様子を伺っている。
「はぁ......はぁ......立たないで欲しい......」
((──4401のダメージ率87%と推測。
左肋骨6番目、7番目の骨折あり。
左太もも、重度の打撲と判別。
総合的に判断して立ち上がる確率は3%未満だよ。))
「ふぅ......はぁ......それなら助かるね。ふふっ」
((──うん。))
4401の様子を伺っていたドローンは、
リング上部へと飛び上がる。
それと同時に担架を手にした職員が、
リングへと入ってきた。
「あぁ......終わったみたいね......」
((──うん。お疲れ様、遥。))
職員は倒れている4401に一瞥もくれず、
荷物でも扱うように担架に乗せ、
リングの外へと運び出して行った。
観客席からは歓声はなく、
ざわざわとしている。
「マジで、しんどかったね。」
((──うん。頑張ったね、遥。))
リングにそのままへたり込む。
「あと19回とか地獄だわ......あはは」
((──......))
ゼニスと会話をしていると、
リングの中へと栞が入ってきた。
「あれっ......栞ちゃん?」
栞が顔を覗き込みながら、
声を掛けてきた。
「遥さん、お疲れ様でした。立てますか?」
「うん、大丈夫だよ。」
「それならよかったです。」
「栞ちゃん、見てたの?」
「はい、もちろんです。
遥さんの担当なので、ちゃんと見ていました。」
「そうなんだね。」
グッと両足に力を込めて立ち上がり、
栞と共にリングから通路へと移動した。
「わたしも脇腹とか痛いな......」
「大丈夫ですか、遥さん?」
栞が心配そうに顔を向けてきた。
((──遥の受けたダメージで、重篤なものはないよ。
脇腹や鳩尾は軽い打撲とデータ上で確認済み。
2日、3日すれば回復するよ。))
((おぉ~、それなら安心。))
「骨とか折れてないみたいだし、大丈夫だよ、栞ちゃん。」
「それなら、よかったです、遥さん。」
「栞ちゃん、心配してくれてありがと。」
「いえ、遥さんの担当なので、当然のことです。」
「うん。でも、ありがと。」
「はい、遥さんにはサバイバル・レジスタンスを
盛り上げていただく必要があるので、
参加できなくなると困ります。」
「......あっ、うん、そうだよね。えへへ」
((ぜんぜん、わたしのこと心配してる感じじゃないよね?))
((──うん。管理官の手のものだから、
運営側、情報統括省の考えで動いているという事だね。))
((なるほどね、友達にはなれそうもないかもね。ふふ))
((──うん。用心に越した事はないね。))
((だね。))
栞は歩く速度を上げ、
スタスタと通路の奥へと消えて行った。
「なんか......味気ないね。あはは」
((──うん。でも、管理官が寄越した職員という事を考慮すれば、
納得の行動とも言えるね。))
「確かにね。ふふっ」
キューブに戻ったゼニスの光が、
視界の隅で淡く光を放っている。
「ゼニス居るから、別にいいけどさ。」
((──うん。遥のサポートは任せてね。))
淡い光が少しだけ力強く光ったように見えた。




