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ゼニスは視界の隅で笑う~争いはバトルで裁かれる、監視社会の現代版コロッセオ~  作者: 綴火(つづりび)


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第62話:調停へのカウントダウン

職員から手渡された端末を手に持ち

ソファでくつろいでいると、

コン、コン、コン、と3回乾いた音が部屋に響いた。


ガチャ、というドアを開ける音と共に

白い袋をぶら下げた女性職員が入ってくる。


「あっ......注文のやつですか?」


彼女に問いかけるが、

こちらには顔を向けることもなく

テーブルに袋を置いて

部屋を出て行ってしまった。


「えっ......えっ~~!

 不愛想にもほどがあるんじゃない!」


((──職員は、

  基本的に必要な事しか話さないのかもね。))


「まぁ......そんな感じはするけどさ......

 それにしても何も言わず置いてくのもね......」


((──うん。))


テーブルに置かれた袋を開け

中を確認すると缶コーヒー、かつ丼、チョコレートが入っていた。


「注文したやつは間違いないね。

 でも、コンビニで売ってるやつみたいだよね。ふふっ」


((──うん。))


「なんか、食堂みたいな感じで、

 丼とか器に入ってくると思ってたよ。

 でも、食べたら同じだからいいけどさ、あっはは」


((──そうだね。))


缶コーヒーを開け、

かつ丼のラップと蓋を外し

割りばしを割る。


かつ丼を一口食べ

コーヒーで流し込む。


「......うん、おいしい。

 おいしいんだけどさ......

 妙に整いすぎてて薄っぺらい味だよね、ふふっ」


((──うん。遥の反応から、

  美味しいという事は伝わってくる。

  整いすぎていて薄っぺらい味というのは、

  型にはまった無難な味や人間味が感じられないって事かな?))


「あ~、上手いこと言うね、ゼニス!

 そうそう、なんか無難で当たり障りがないって感じ。」


((──うん。遥の言いたいことが理解できたよ。))


「うん、ニュアンスが伝わってよかった。」


ゼニスと会話をしながら食べ進め、

かつ丼はしっかり完食した。


「ごちそう様でした。」


((──ごちそう様でした。))


かつ丼の空容器と割りばしを

袋に入れてテーブルの隅に置いておく。


「とりあえず、お腹も満たされたね。

 この後って、どんな流れになるのかな?」


((──職員が手渡してきた端末に、

  執行する調停人やルールが表示されるはずだよ。))


「端末って注文用じゃなかったんだね、あはは」


((──うん。注文や調停センターの連絡用といったところかな。))


「なるほどね~。」


ピロリン、

端末から聞きなれない電子音が聞こえた。


「端末から音したよね?」


((──うん。調停センターからの通知音かな。))


画面に視線を落とすと、

お知らせと書かれたメッセージが届いている。


「お知らせだってさ......

 メッセージは開いていいんだよね?」


((──うん。))


「えっと、『執行調停人:X』?

 『開始時刻は20:30』って書いてるね......

 Xってどうゆうこと?

 まだ、決まってないとか?」


((──調停人はコードネーム表記だから、

  遥のように七瀬とか苗字などはないんだよ。))


「おっ、なるほどね。

 コードネームか......ミステリアスだね、あっはは」


((──うん。))


メッセージを下の方へと読み進めると、

対戦方法について記載がある。


「ねぇ、対戦方法は......

 『オープンフィンガーグローブ着用・総合格闘技形式』

 って書いてるけど......」


((──総合格闘技形式だから、

  打撃、投げ技、関節技などを複合したものだね。))


「それはわかるけど......

 関節技とかされたらさ、わたしめっちゃ不利じゃん。」


((──うん。遥は空手だから、

  組み付かれないように蹴りで牽制しながら対応かな。))


「そうなるよね~......

 調停人は総合格闘家ってことか......

 絶対ケガしたくないな~、ふふっ」


((──うん。そうならないようにサポートする。))


「うん、お願いねゼニス。」


((──うん。))


「あ、あとね、

 最後に『当調停において発生した肉体的・精神的損害について、

 センターは一切の責任を負わないものとする』だって。

 ......なんか、急に物騒になってきたね、あはは」


((──......))


端末をテーブルに置き、

ソファから立ち上がる。


部屋の広いスペースまで歩き、

立ち止まり目を閉じ深く深呼吸。


「よし!少し体を動かしておこう!」


((──うん。))


スッと空手の構えをとり、

正拳突きや上段蹴りなど一通りの動きを確認する。


((──技能記憶が残っているから、

  動きに問題はないよ。

  正拳突きや蹴りの速度、推定威力も申し分ない。))


「うん、体も軽いしいけるかもね。」


前蹴り、横蹴り、後ろ回し蹴りなど、

動きを確かめていく。


「蹴り技メインでいくからね、

 しっかり動かしておかないとだね。」


((──うん。))


「Xさんの実力は未知数だけどさ、

 わたしの勝率ってどんくらいあるかな?」


((──総合格闘家で女性、

  遥と同じくらいの階級と仮定した場合、

  勝率は18%ほどになるよ。))


「思ったより高いのかな?あっはは」


((──遥は空手の技能記憶があるから、

  勝率としては高いと言えるね。))


「でも、一般的には勝率0%なんだよね?」


((──うん。))


「格闘経験ある人が調停人と対戦するとしたら?」


((──執行される側の対応が難しい対戦方法が用意されるかな。))


「対応が難しい対戦方法?」


((──うん。

  例えばボクシング経験者なら、

  ボクシングルールはない。

  総合格闘技ルールや拳での打撃禁止など、

  不利になるようにルールが変更される。))


「えっ......

 パンチできないボクサーとか、

 戦いようがなくない?」


((──うん。格闘技イベントではなく、

  あくまでも刑の執行であり調停だからね。))


「それもそうか......」


ウォーミングアップを終え、

ソファに戻り腰を下ろす。


軽く目を閉じ、

気持ちを落ち着かせた。

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