表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼニスは視界の隅で笑う~争いはバトルで裁かれる、監視社会の現代版コロッセオ~  作者: 綴火(つづりび)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/86

第60話:第1特殊調停準備室

「また、南口からタクシーで行けばいいよね?」


((──そうだね。

  その他、バスという選択肢もあるよ。))


「バスは......時間かかりそうね。」


((──タクシーと比較した時に

  バスは到着までに時間がかかるね。))


「だよね......タクシーにしよっ。」


((──うん。))


いつものように北口から南口へ抜け、

タクシー乗り場を目指す。


「タクシー停まってるかな?」


((──南口はタクシー利用者も多いから、

  2~3台は必ず停車してるよ。))


「うん、だよね。」


南口へ到着し、

タクシー乗り場に視線を向けると

3台停車していることが確認できた。


先頭の運転手さんに合図を送り、

ドアを開けてもらい乗り込む。


行き先を、ひより市調停センターと伝え

タクシーは目的地に向け走り出す。


((第1特殊調停準備室ってネーミング......

  なんか仰々しいよね、ふふっ))


((──そうだね。

  確かに、必要以上に大げさで誇張され、

  いかにも立派そうに見せている感じはあるね。))


((でた、ゼニス辞書、ふふ))


((──うん。いつでも遥の側にゼニス辞書。))


「なにそれ~、

 ゼニスギャグですか~?あっはは」


大声で笑っても、

運転手さんはこちらを見向きもしない。


見慣れた光景ではあるけど、

この世界は、わたしに対して無関心だということを

改めて実感する。


((もしかして、緊張ほぐそうとか考えてる?))


((──遥のデータを分析する限り、

  緊張も不安もないことはわかっているよ。))


((さすがだね。全く不安も緊張もないよ。))


((──うん。遥らしいね。))


((むしろ楽しみでしかないかな......

  こんな発想もどうかと思うけどさ。))


((──そうだね。

  一般的には区分変更なんて避けるべき状況なのに

  あえて飛び込むという発想は、

  なかなかできるものではないよ。))


((とりあえず、調停制度のアンチ派としては、

  自治体の調停も知っておきたいよね。ふふっ))


((──敵を知るという発想なのかな?))


((まぁ......そんな感じかな。))


脳内での会話をしていると、

車窓からひより市調停センターが見えてきた。


入口付近に停車したタクシーから、

会計を済ませ軽く会釈をして降りる。


「2回目の調停センター到着。」


((──調停センター到着。))


「どこ行けばいいんだろ?

 チケット買った受付とか?」


((──チケット売り場とは反対側に

  被申立人の受付があるよ。))


「なるほど、反対側なんだね。」


((──うん。))


調停センターに入り、

前回とは反対方向へと進むと

右手に受付窓口が見えた。


「ゼニス、ここでいいの?」


((──うん。ここで合ってるよ。))


「出頭したんですけど~って言えばいいかな?」


((──整理番号3301と名前を伝えればいいよ。))


「整理番号ってあったんだね。」


((──うん。通知の最後に記載があったよ。))


「へぇ~、そうなんだ。」


受付にいる女性職員が

こちらに視線を向け口を開く。


「調停への出頭でしょうか?

 整理番号と氏名をお伝えください。」


「はい、3301、七瀬遥です。」


「3301、七瀬遥ですね。

 本人確認をお願いします。」


受付に備え付けられた端末に

左手の甲を当てる。


「はい、本人確認完了しました。

 それでは、通路を進み第1特殊調停準備室へとお入りください。」


「はい、わかりました。」


受付を離れ、

静まり返った通路を歩き出す。


スニーカーの音が、

少しだけ遅れて聞こえてくるような、

奇妙な反響が耳についた。


「受付も案外アッサリしてるね。ふふっ」


((──うん。そうだね。))


「どんなこと聞かれるのかな?

 なんかドキドキしてきたよ。あっはは」


((──楽しんでいることが伝わってくるよ、遥。))


「うん、退院してから一番ワクワクしてるかもね。」


((──うん。とても良い傾向だね。))


「できれば、ケガはしたくないけどね。」


((──そうだね。

  遥が怪我をしないように可能な限りサポートするね。))


「うん、助かる。

 でも......これってズルしてるみたいにならない?」


((──遥以外に存在が知られているわけではないから、

  卑怯や狡猾といった事にはならないから安心して。))


「だよね~!

 わたしの脳内見ないとわかんないことだもんね!あはは」


((──正確に言えば、

  CTやMRIでもわかるけれどね。))


「それはそうだね......

 まさか、そんな検査ないよね?」


((──うん。

  調停前にCTやMRIといった検査は

  行われることはないよ。))


「それなら、ズルはバレないね。ふふ」


((──うん。))


通路を歩いた先に

第1特殊調停準備室の案内板が

天井からぶら下がっている。


「ここだね。」


((──うん。))


「よし、入ろうか。」


((──うん。))


第1特殊調停準備室の冷たいドアを

ノックすると無機質な音が響いた。


そのままドアを開け

中へと入る。


室内にはテーブルと椅子があり、

黒いスーツ姿の男性職員が座っていた。


椅子に座っていた男性職員が、

手元の端末からゆっくりと顔を上げる。


その瞳には感情がなく、

ただ決めれられた動きをしているのように感じた。


「整理番号3301、七瀬遥。

 お待ちしておりました。」


機械的な声が室内に響く。

窓のない部屋の空気は、

外よりも少しだけ冷たく重い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ