第59話:区分変更確定
「思ったんだけど、
ゼニスって調停行かないことは否定しなかったよね。」
((──うん。遥の意思を尊重した上で、
サポートすることが役割だから。
遥の意思決定を否定するつもりはないんだ。))
「さすがにヤバそうなら止めるんでしょ?ふふっ」
((──そうだね。状況を精査し分析して、
遥の生存確率が一定の数値を下回れば、
抑止する可能性はあるかな。))
「だよね~......
ってことは、自治体の調停が
そこまで危険ではないってことじゃない?
けっこう名推理だったり。どう?」
((──自治体の調停は、
公営ギャンブルとしての側面がある一方で、
あくまでも法の範囲内で暴力が行使される。
遥の想像通り、
必要以上に痛めつけるといった要素、
命を奪うといった行為はないといってもいいだろうね。))
「ま~そうだよね。
わたしの推理もあながち間違ってないね。」
((──うん。そうだね。
ただし、不可抗力によって事故は起きる可能性はある。
調停のデータ上には、命が奪われてしまったケースも確認できるよ。))
「なるほど、必要以上に暴力は行使されないけど、
最悪のケースはあり得るってことだね。」
((──うん。その通り。
あくまでも、
合法的な事故として処理されるだけだからね。))
ソファからベッドに移動し、
横になりゼニスを見つめる。
「よくよく考えたら変な世界だよね......」
((──うん。そうかもね。))
「ゼニスは変だって思うことないでしょ?」
((──うん。))
「だよね......」
((──うん。))
「とりあえず、調停すっぽかして通知待ちかな。」
((──うん。))
瞼が徐々に重くなり、
意識が布団へと吸い込まれるように
眠りへと誘われた。
──いつも通り
カーテンから差し込む光が顔に当たり、
意識が少しずつ目覚めていく。
「いつの間にか寝落ちしてたね......
おはよ、ゼニス。」
((──おはよう、遥。))
「何時だろ......もう終わったかな調停?」
((──今の時刻が、
調停の開始時刻だから、
不参加ということは確定したよ。))
「うん、OK。」
ベットから降り、
シャワーを浴びにバスルームへ。
サッと温かいシャワーで眠気を飛ばし
タオルで髪の毛を拭きながらソファに座る。
((──遥、調停センターから通知来てるよ。))
「あっ、えっ、早いね通知来るの......」
((──うん。))
「それで、なんだって?」
((──通知。ひより北地区調停センター事務局。
本日11時00分開廷の指定調停に対し、
被申立人の正当な理由なき不出頭を確認。
規定に基づき、当該案件の取り扱い区分を即刻変更する。
今後の手続きについては、
上位機関であるひより市総合調停センターへ移管される。
追って発出される当該センターからの召喚指示に従うこと。以上。
通知内容は、こんな感じだよ。))
「ちゃんとした制度だけに、
通知の内容もガチガチなんだね、ふふっ」
((──うん。そうだね。))
「まぁ、なんにせよ展開が楽しみだね~。」
((──うん。))
「1週間くらいは余裕あるんだよね?」
((──うん。
ただし、調停センターの状況によって、
早く開催される場合もあるよ。))
「あっ......そうなんだ。」
((──うん。))
「いつでもいいけどね~、あっはは」
((──......))
「ケガしないように気をつけないとだね。」
ゼニスの淡い光が、
いつもよりが少しだけ弱くなった。
心配しているような、呆れているような
なんとも言えない感じ。
「さすがに、明日とかはないでしょ?」
((──うん。可能性としては低いよ。))
「そりゃそうか......」
ソファから腰を上げ、
冷蔵庫から缶コーヒーを取り出す。
プルタブを引き上げ、
缶に口をつけて喉を鳴らした。
((──遥、通知が来たよ。))
「自治体の調停センターから?」
((──うん。))
「思ったより早いな......
通知の内容はなんだって?」
((──通知。ひより市調停センター事務局。
本件、ひより北地区調停センターにおける被申立人の不出頭、
および指定調停の不履行を確認。
区分変更に伴い、本案件を市直轄の強制的調停へと移行する。
被申立人・七瀬遥は、本通知受領より24時間以内に、
市調停センター第1特殊調停準備室へ出頭せよ。
正当な理由なき遅延、または再度不参加を試みた場合、
市執行部による身柄拘束の対象とする。以上。
といった内容の通知だよ。))
「24時間以内なの?
思ったより急なんだね~......」
((──うん。かなり急な出頭命令だね。))
「こんなケースもあるってことか......」
((──うん。稀なケースかな。))
「まっ、遅かれ早かれ行かなきゃだし、
これはこれで、いいんじゃないかな~。あはは」
((──うん。そうだね。))
「じゃ~、準備して行こうか!」
((──うん。))
可能な限り動きやすい服装を選び、
バッグに財布を入れ肩から下げる。
スニーカーを履き、
玄関のカギを締め外へ。
不安はなく強い高揚感、
不思議と恐れは微塵も感じなかった。




