第47話:調停センター見学
「おはよ、ゼニス。」
((──おはようございます、遥。
睡眠状態は安定していました。))
「うん、
今日もよく眠れた感じがする。」
((──はい。
健康状態も良好です。))
カーテンの隙間から
やわらかな光が差し込んでいる。
それが、
いつもより心地よく感じられた。
「じゃあ、準備して出かけよう!」
((──はい。))
顔を洗い、髪を整えて、
着替えを済ませる。
USA-DE-PPONのバッグに、
財布と鍵を入れて準備を済ます。
「よし、準備完了だね!」
((──遥。
借りた本をお忘れなく。))
「あっ......
忘れるところだったよ、ふふっ。
ナイスアシストだね、ゼニス。」
((──はい。))
靴を履き、
玄関に鍵をかけて外へ出る。
「う〜ん、
今日も天気いいね〜。」
((──はい。
降水確率は低く、
安定した天候で過ごしやすいです。))
「お出かけ日和だね〜。」
((──はい。))
ひより北地区公民館へ向かって歩き始める。
「とりあえず、本を先に返して、
調停センターを見学して、
また図書室に戻って本借りようかな。」
((──はい。))
「調停センターって、
そこまで見どころないよね?」
((──調停中の室内は公開されていません。
見学可能なのは、
共用スペースや案内掲示などに限られます。))
「だよね......
見学も、すぐ終わっちゃいそうだね。」
((──はい。))
「でも、楽しみなのは変わらないからいっか!」
((──はい。))
道路の右側に、
ひより北地区公民館が見えてきた。
「けっこう近いよね。」
((──はい。))
公民館へ入り、
奥の図書室へと向かう。
「本の返却、お願いします。」
受付の司書さんへ、
借りていた本を手渡す。
「はい。少々お待ちください。」
司書さんはPCへ向かい、
何かを入力している。
「はい。返却ありがとうございます。」
軽く会釈をして、
図書室を後にした。
「わくわく見学ツアー行ってみよ~!」
((──はい。))
公民館の入口まで戻り、
調停センターへ向かう。
「このまま入ってもいいのかな?」
((──はい。
受付で、見学したい旨を伝えてください。))
「OK。」
調停センターのドアを開け、
中へ入る。
「すみません。
見学したいんですけど、大丈夫ですか?」
調停センターの受付にいる女性に声をかける。
「はい。見学ですね。
本人確認をお願いします。」
受付の女性は表情を変えず、
端末を差し出してきた。
左手を端末に近づけ、
本人確認を済ませる。
「はい。本人確認は終了です。」
軽く会釈をして、
その場を離れた。
「なんの説明もなかったね。」
((──はい。
調停中の部屋はロックされています。
入室できるのは、
当事者と調停人に限られます。))
「なるほど......
誰も入れないってことね。」
((──はい。
出入りは制限されています。))
「ふ〜ん、そうなんだね。
とりあえず、案内図でも見てみようかな。」
((──はい。))
壁に掲示された案内図に、
視線を向ける。
「思ったより広いね......
調停室が30もあるよ。」
((──はい。
軽微な紛争を扱う施設のため、
地区公民館に併設された調停センターでは、
調停室が多めに設置されています。))
「そっか。
それだけ利用数が多いってことだね。」
((──はい。))
調停センターの廊下は静かで、
誰も居ないような雰囲気がある。
「なんか、静かすぎない?」
((──はい。
調停室は完全防音です。
そのため、施設内は静かになっています。))
((あっ......声、出してたわ。ふふっ))
((──廊下での会話は制限されていません。))
((そうなんだ......
でも、独り言が多い人だと思われるのもね。ふふふっ))
((──はい。特に問題はありません。
これまでの行動傾向と一致しています。))
((もう、失礼だな〜。うふふ))
((──周囲の利用者は、
他人の行動に注意を向けていません。
遥は気にせず会話を続けて問題ないと思われます。))
廊下を歩いて、少し奥へ進む。
壁沿いに、案内表示が設置されていた。
矢印の先には、
『調停室』と書かれている。
その先は、低い仕切りで区切られていて、
こちら側とは、空気が少し違うように感じた。
((調停室の方、行ったらダメそうだね......))
((──はい。
ここから先は、関係者のみが立ち入る区域です。))
((やっぱり、そうなんだね......))
((──はい。))
((ドアには番号がついているんだ......))
((──はい。
調停は、指定された番号の部屋で行われます。))
((小窓もないし、
外からは何も見えそうにないね......))
((──はい。
外部から内容が確認できない構造になっています。))
((初めてだよね......?
きっと初めて見たはず......
なんか、新鮮で面白かったかも。))
((──はい。))
((帰ろっか?))
((──はい。
図書室には立ち寄らなくて大丈夫ですか。))
((うん。
今日は調停センターを見学できたし、
図書室は、また今度にしよう。))
((──はい。))
受付の女性に、
お礼を伝えて調停センターを後にした。
そのまま公民館を出て、
自宅へ向かって歩き始める。




