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第41話:新たな楽しみの兆し

「公園でぼーっとしながら飲む缶コーヒーって、

 なんかおいしいよね。ふふふ」


((──はい。))


ベンチの背もたれに、

そっと体を預ける。


缶コーヒーは、

もう半分くらいまで減っていた。


「この辺、来たことないんだろうね......

 ぜんぜん、わかんないや。

 住宅しかないのかな?」


((──周辺は住宅地が中心のエリアです。))


「そっか。

 じゃあ、ちょっと歩いてみよっか。」


((──はい。))


缶コーヒーを飲み干し、

自動販売機の横に設置されたゴミ箱へ捨てる。


「とりあえず、

 道なりに行ってみよう。」


((──はい。))


しばらく、

道なりに歩いてみる。


左右には、

背の低い家が途切れなく並んでいて、

その間を縫うように、

細い道が続いていた。


視界に入るのは、

門扉やポスト、

植木鉢の並んだ玄関先ばかり。


「あぁ......

 ここ、ほんとに住宅街なんだね。」


((──はい。))


歩いているうちに、

この辺りが、

生活のためだけに作られた場所なんだと、

なんとなくわかってくる。


「このまま先に行っても、

 なにもなさそうだし、戻ろっか?」


((──周辺情報を確認しましたが、

  住宅以外の施設は、

  特に見当たりません。))


「うん、ありがと。ゼニス。」


((──はい。))


さっき歩いてきた道を、

そのまま引き返す。


少し歩くと、

視界の先に公園が見えてきた。


公園の中は相変わらず静かで、

人影は見当たらない。


「ホント住宅しかなかったね、ふふ」


((──はい。))


そのまま公園の中へ入り、

先ほどと同じベンチに腰を下ろす。


「なんか、毎日が夏休みみたいだね。あっはは」


((──遥は、

  ゆっくり休むことが必要な状態です。

  何もしていないからと、

  気に病む必要はありません。))


「うんうん。

 わかってるよ、ありがと。」


((──はい。))


「そのうち、バイトとかしたほうがいいかな?」


((──現時点では、

  必要性は確認されていません。

  ただし、遥がアルバイトをしてみたいのであれば、

  サポートは可能です。))


「うん。

 その時はよろしくね。ゼニス。」


((──はい。))


「たぶん、バイトしないと思うけどね。ふふっ」


((──はい。

  現状において、

  無理に行動を増やす必要はありません。))


「うん。」


しばらく、

ぼんやりとした時間が過ぎる。


「そろそろ、帰ろっか?」


((──はい。))


ベンチから腰を上げ、

公園の出口に向かって歩く。


「スーパーで食材、買っていこうかな。

 それとも、ゼニスネットスーパーにしようかな?」


((──遥にお任せします。))


「じゃあ、ゼニスネットスーパーにしよう。ふふ」


((──はい。))


自宅に向かって歩き始めると、

通りの向こうに、

公民館の建物が目に入った。


「あ、

 公園の反対側って、公民館あったんだね?」


((──はい。

  ひより北地区公民館です。))


「へぇ~。

 公民館って、図書室とかあるよね?」


((──はい。

  図書室があり、

  調停センターも併設されています。))


「......そうなんだ。

 ん? 調停センター?」


((──はい。))


「調停センターって、

 初めて聞いたような気がする......」


((──本人確認作業と同様に、

  遥が覚えていないだけだと推測できます。))


それ以上、深く考えることもなく、

そのまま自宅へ向かう。


住宅街の道は静かで、

行き交う人も少ない。


「ゼニスネットスーパーで、なに買おうかな?」


((──遥にお任せします。))


「家に帰ってから、決めよっか。」


((──はい。))


しばらく歩いて、

少しだけ見慣れた我が家にたどり着く。


「ただいま~。」


((──お帰りなさい、遥。))


「ゼニスもね。」


((──はい。ただいま。))


「よし、手洗いとうがいしてこよう!」


((──はい。衛生管理は重要です。))


洗面台に向かい、

手洗いとうがいを、

サッと済ませた。


「食材、どうしようかな~......」


ソファに腰を下ろす。


「なんか、リクエストないの? ゼニスは。」


((──はい。遥にお任せします。))


「じゃあ、お肉とか野菜を、

 適当に注文しようかな。」


((──はい。))


鶏肉や豚肉、

キャベツやニンジンを、

頭の中で思い浮かべる。


((──以上で、よろしいですか。))


「うん。

 とりあえず、こんなもんかな。」


((──注文を確定しました。

  およそ2時間で到着します。))


「うん、ありがと。」


((──はい。))


少し間を置いて、

天井を見上げたまま考える。


「そう言えばさ......

 公民館の図書室って、本借りられるよね?」


((──はい。

  貸し出しは可能です。))


「へぇ~、いいね!

 あとで、本借りに行ってみようかな!」


((──はい。))


「本読んだら、

 ゼニスも一緒に読んでることになるよね?」


((──はい。

  視覚から得た情報を整理し、

  同時に内容をまとめることも可能です。))


「いいね。

 本読むのも楽しみになるね。」


((──はい。

  知識を得る行為は、

  良好な状態につながります。))


「そだね~。」


((──はい。))


新たな楽しみができたことに、

胸の奥が、

少しだけほっこりした。

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