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第37話:変わらない青空

「ゼニス、ひより緑地公園で朝ごはんにしよう。」


((──はい。このまま向かいますか?))


「うん、このまま行こ~。」


((──はい。))


北口から駅ビルの中を通り、

見慣れた南口へ出る。


駅前広場を抜け、

しもむらやホテルの前を通りすぎて、

大通りの交差点へ向かった。


道なりに真っすぐ進むと、

ひより医科大学附属病院が見えてくる。


その先に、

ひより緑地公園の入口があった。


「思ったより近いよね、公園。」


((──はい。))


公園の中へ進み、

相変わらず真新しいベンチに腰を下ろす。


「ここって、前回来た時も思ったけど、

 静かで人もいないよね。ふふっ」


((──はい。この時間帯は、

  会社や学校へ向かう人が多いため、

  公園を利用する人は比較的少ない時間帯です。))


コンビニ袋を脇に置いて、

中から飲み物とサンドイッチを取り出す。


飲み物にストローを差し、

一口飲む。


「うん、うるおった!」


サンドイッチの包装を外して、

そのまま食べ始める。


「サンドイッチも美味しいね!」


((──はい。レタスとハムの比率が適切で、

  味と食感のバランスが取れています。

  ただし、食感や味の評価については、

  推測の域を出ませんが。))


「あっはは!

 でも、その分析、合ってると思うよ!」


((──はい。))


サンドイッチを食べ終え、

軽く息を吐いた。


「ふぅ......朝ごはん終わり。

 ごちそう様でした。」


((──はい。朝食完了を確認しました。))


空を見上げる。

いつもと変わらない、

絵に描いたような青空。


「なんか、空もいつも同じように感じるね......

 そんなわけないか......」


((──日中の空は、

  太陽光が大気中でレイリー散乱を受けるため、

  広い範囲で青く見えます。

  実際には高度や太陽の位置によって

  色はわずかに異なりますが、

  変化が緩やかなため、

  人間の視覚では

  『ほとんど同じ』と認識されやすい状態です。))


「うわぁ......

 めっちゃ説明、長いんですけど~。

 あっはは~」


ゼニスの淡い光が、

少しだけ照れたように、

弱くなった気がした。


「レイリー散乱とか使ってくるあたりが、

 なんかゼニスっぽいよね~!」


((──はい。遥の知識レベルを前提に、

  言葉を選択しています。))


「ふぅ~ん。

 じゃあ、わたしが知らなかったらどうするの?」


((──その場合は、

  小学生でも理解できる表現に置き換えて説明します。))


「あっはは!

 いいね、それ!」


((──しかし、

  遥の知能は高く、知識も豊富であるため、

  そのような状況は想定していません。))


「褒めてくれてるんだね。

 ありがと。」


((──はい。))


公園内に流れる、

ゆったりとした時間が、

ただ、心地よかった。


そこへ、

ランニングウェアに身を包んだ女性ランナーが、

通りかかる。

一糸乱れることのないペースで、

走り去って行った。


「ランニングかぁ......」


((──ひより緑地公園は、

  外周が整備されたランニングコースになっており、

  走りやすさから、

  利用者も多いと推測されます。))


「そうなんだっけ?

 ベンチでぼーっとするくらいしか

 したことないから知らなかったな。

 えへへ」


飲み物を口に運んでいると、

さきほどの女性ランナーが、

また同じように通りすぎていった。


「さっきと同じペースだね。

 すごい体力......」


((──はい。

  走り慣れたランナーであると推測できます。))


「だよね~。」


((──はい。))


しばらくして、

三度、

全く同じ場所を、

同じペースで、

女性ランナーが通りすぎる。


「......3周目なのかな?

 でも、同じペースすぎない?

 っていうか......

 汗、かいてないよね?」


((──発汗量は個人差が大きく、

  体質のほか、

  運動習慣、性別、体格、年齢などによっても異なります。))


「あっ......

 そっか~。

 確かに、そうだね。」


((──はい。))


「せっかくこっちに来たから、

 帰りに、くろいわベーカリーにも

 寄っていこっか?」


((──はい。非常に良い選択です。))


「ゼニスは、

 メロンパンもお気に入りだもんね。

 ふふふ」


((──はい。))


((さすがに、4周目はないのかな?))


なんて考えていると、

女性ランナーが、

タオルで汗を拭いながら走り抜けていった。


「......汗。

 かく人だったね~......」


((──はい。))


「3週目までは、

 ウォーミングアップだったのかもね。」


((──はい。

  その可能性は十分にあります。))


「うんうん。

 なんでも考えすぎはよくないよね~。

 ふふ」


((──はい。))


「よしっ!

 くろいわベーカリー寄って、

 帰宅しよ~!」


((──はい。))


ベンチから腰を上げ、

公園の出入り口へ向けて、

歩き始めた。


「せっかくだし、

 メロンパン以外も買いたいよね?」


((──はい。))


「ゼニスは、リクエストないの?」


((──チョコレートクリームが詰まった、

  チョココロネをリクエストします。))


「ほぉ......

 ガトーショコラといい、

 もしかしてチョコレート好きなんじゃない?」


((──はい。

  チョコレートには、

  カカオにはトリプトファンやテオブロミンが含まれ、

  セロトニンやドーパミンの分泌を助け、

  幸福感やリラックス感を高める——))


「はいはい、

 また長くなりそうだから、

 そのへんで止めとこっか。あはは」


いつも通り、

くだらないやり取りを楽しみながら、

公園を後にして、

大通りへと出た。

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