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第36話:不思議な光景

目が覚めると、

白い天井が視界に入った。


カーテンの隙間から差し込む光はやわらかい。


「......ふぁ......」


小さくあくびをして、

そのままベッドの上でごろりと寝返りを打つ。


体はちゃんと休めた感じがする。

思っていたより、

引っ越しの疲れもぜんぜん残っていない。


「おはよ、ゼニス。」


((──おはようございます、遥。))


視界の隅で、

淡い光が静かに揺れている。


いつも通り。

本当に、いつも通りだ。


ベッドから起き上がり、

カーテンを開ける。


朝の光が部屋に広がって、

白い壁と床をやさしく照らした。


「顔洗ってこよ~。」


((──はい。))


洗面所へ向かい、

顔を洗う。


冷たい水が、

まだ少し眠っていた意識を引き上げてくれる。


「今日は、なにしようかな~?」


((──朝食はどうしますか、遥?))


「そだね~。

 朝ごはんのこと考えてなかったな、えへへ。」


((──では、コンビニエンスストアで調達しましょうか?))


「うん、いいね。」


タオルで顔を拭きながら部屋に戻り、

ショートパンツとボーダーのカットソーに着替える。


「よし、コンビニいこっ!」


((──はい。))


部屋の鍵と財布を持ち、

そのまま部屋を後にした。


コンビニに向かう途中で、

思ったよりも人が多いことに気づいた。


スーツ姿の人、

イヤホンをつけたまま早足で歩く人、

スマホを見ながら駅へ向かう人。


((朝だから、出勤とかの人多いね。))


((──はい。住宅地も多いため、

  駅への人流はそれなりにあります。))


((だよね~。))


((──はい。))


そんなやり取りをしながら歩いていると、

いつの間にか、コンビニに到着していた。


コンビニの自動ドアが開くと、

軽い電子音が鳴る。


店内は、少し混んでいる。

コーヒーマシンの前に1人、

レジにも、2、3人並んでいた。


((朝のコンビニって感じ......ふふふ。))


((──はい。))


棚を見ながら、

おにぎりとサンドイッチの前で少し迷う。


その時、

店内が少しだけバタついたのを感じた。


売り場の方で、

店員さんと男性客が言葉を交わしている。


声ははっきり聞こえないけれど、

空気が、少しだけ張りつめている。


なんとなく気になって、

そちらへ視線を向けると――


男性客のバッグを指しながら、

店員さんが、何かを確認するように声をかけている。


((えっ......もしかして、万引き?))


((──はい。

  その可能性は高いと推測されます。))


そのやり取りを見ていると、

奥の扉が開き、

オーナーらしき人が出てきた。


店員さんに何かを確認すると、

男性客と少し言葉を交わす。


男性客は、

抵抗する様子もなく、ただうなずていた。


そのまま、

店の奥へと連れていかれる。


張りつめていた店内の空気が、

すーっと元に戻った気がした。


((絶対、万引きだよね?))


((──はい。))


((なんか変なタイミングでコンビニきちゃったね......ふふ))


((──万引きは、認知されている件数で

  年間およそ十万件前後発生しています。

  時間換算では、5~6分に一件程度です。

  特に珍しい事例ではありません。))


((おぉ~......さすがゼニス辞書!))


((──正確には、一般的な用語定義ではなく、

  公開されている統計データを参照しています。))


((うんうん、細かいことはいいの......ふふ))


((──はい。))


サンドイッチやおにぎりを選んで振り向くと、

コンビニの外に、

パトカーが停まるのが見えた。


警察官が2人降りてきて、

そのまま店の奥へ入っていく。


少しして、

万引きをしたと思われる男性と一緒に出てきた。


店の外で、

何か言葉を交わしている様子が見える。


その時、

男性の左手の甲に、

何か機械のようなものを当てる動作があった。


一瞬のことで、

何をしているのかはわからない。


((えっ......なに、してるんだろ?))


男性を乗せたパトカーは、

何事もなかったかのように走り去っていった。


((ねぇ、ゼニス......今のなんだったの?))


((──状況から判断すると、

  万引きの疑いで警察が対応したものと思われます。))


((違くて......警察の人がなんか、手の甲に当ててたでしょ?))


((──何をしているのか、確認できませんでした。))


((そっかぁ......なにしてたのか気になるね......))


((──遥は、同様の場面を目にしたことはありますか。))


((ううん、万引きで警察が来たのは初めてかな......))


((──これまでに、

  同様の場面を目にした経験がなかったため、

  違和感と感じてしまったのではないでしょうか。))


((そういうもんなのかな~......))


((──はい。))


冷蔵ケースから飲み物を選んで、

そのまま腕に抱えた。


レジに向かい、

会計を済ませて、コンビニを出る。


((なんか不思議な光景を見た気がするな......))


((──初めて目にする状況だったためだと推測できます。))


((そうなんだろうけどさ......))


((──帰宅して朝食にしましょう、遥。))


((だね、考えても仕方ないもんね、ふふふ))


コンビニ袋を持ち、

アパートへと向かって歩き出した。

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