第34話:ゼニスと一緒なら......
「とりあえず、生活雑貨は揃えたけど......
ご飯のこと忘れてたよ......
ゼニスネットスーパーは、ご飯も買えるんだよね?」
((──ゼニスネットスーパーは正式名称ではありません。
今回は『オゾンネットスーパー』を利用しました。
購入する商品によって、注文先を変更することは可能です。
食品はもちろん、家具や家電なども配送できます。))
「おぉ~!スゴイな~ゼニスネットスーパー! あっはは~」
((──はい。))
呆れたように、
淡い光が少し弱くなった。
「もしかして、呆れてんの?それか、諦めたか? ふふふ」
((──遥にとって、
ネットスーパーはゼニスネットスーパーであると
認識しました。))
「それはつまり......
諦めた......観念したってことだね!」
((──はい。))
「じゃ~これからは、
ゼニスネットスーパーってことで、よろしく~♪」
((──はい。))
「ご飯......食材とか、どうしようかな?
せっかくだし、この辺をぶらぶらしながら、
お店とか探してみようか?」
((──はい。周辺の環境把握は重要です。))
「うん、それじゃ~行ってみようか~!」
((──はい。))
財布と鍵を持ち、
部屋を出て、北口のほうへ歩く。
南口に比べると人もまばらで、
急いでいる感じがしない。
「南口に比べると、なんか時間の流れが遅く感じるね。」
((──このエリアは、
通勤動線より生活動線が中心です。
また、住宅の比率が高く業務施設が少ないため、
移動の速度が全体的に緩やかです。))
「逆に南口の方は、商業施設とかオフィスもたくさんあるもんね......」
((──はい。))
サンクチュアリ27の手前を左に曲がると、
その先にコンビニの看板が見える。
「思ったより近くにコンビニあるじゃん! やった~!」
((──はい。生活圏にコンビニエンスストアがあると便利です。))
「ゼニスも、そういう判断なんだね~、ふふふ」
((──はい。遥にとって便利だということは重要です。))
「うん、ゼニスは優しいよね。」
コンビニを左手に見ながら、
右へ曲がって歩いていく。
そのまま真っすぐ歩いていくと、
前方にスーパーマーケットが見えた。
「ゼニス、スーパーあるじゃん!」
((──はい。))
「ここで買い物して帰ろうか?」
((──はい。))
店内を一通り見て回る。
スーパーマーケットだけあって、
棚に並んだ商品は多い。
((思ったんだけど......
鍋とか調理器具ないから、
食材買っても調理できないよね......えへへ))
((──はい。調理器具は、未購入です。))
((じゃ~......買うのは、お弁当とかお惣菜だね。))
((──はい。))
お弁当やお惣菜のコーナーへ周り、
唐揚げ弁当とレタスサラダをカゴに入れる。
((とりあえず、お弁当はOKだね。))
((──はい。))
((あとは......パンとかお菓子買おうかな?))
((──はい。))
((ゼニスは気になるお菓子ないの?ふふ))
((──特にはありません。))
((そっか......気になるのがあったら教えてね。))
((──はい。))
パンコーナー、お菓子コーナーを周り、
適当にカゴに入れていく。
((こんなもんでいいかな?))
((──はい。))
そのままセルフレジへ向かう。
画面に表示される手順どおりに、
商品をひとつずつ通していく。
ピッ、という音が規則正しく続いて、
考える間もなく会計が進む。
袋に詰めて、支払いを済ませた。
((お買い物終了だね。))
((──会計完了です。))
袋を持ち直して、出口へ向かう。
((近くにスーパーあってよかったね。))
((──はい。))
((ゼニスネットスーパーで、
調理器具買わないとだね。))
((──はい。今から購入しますか?))
((帰ってからにしよっかな。))
((──はい。))
袋を持って、そのまま家へ向かう。
さっき通った道を戻るだけなのに、
手に持った重さのせいか、
少しだけ景色が違って見えた。
「意外と、スーパーの袋って重いよね」
((──はい。遥の食料が入っていますので。))
「あっはは、確かにね~!」
((──はい。))
そんなやりとりをしているうちに、
気づけば、アパートの前まで戻ってきていた。
鍵を取り出して、ドアを開ける。
袋をキッチンの端に置いて、
一息つく。
「ただいま~。」
((──お帰りなさい、遥。))
「ゼニスも、おかえり~。」
((──はい。帰宅を確認しました。))
そう言いながら、
そのままソファに腰を下ろす。
「調理器具のこと、考えないとだよね?」
((──はい。))
「あんまり、たくさん買ってもな......」
((──はい。必要最低限を提示しましょうか?))
「ゼニスが考えてくれるの?」
((──はい。))
そう言われた途端、
頭の中にいくつかの映像が浮かぶ。
小さめの鍋。
フライパン。
菜箸と、おたま。
「......おっ、こんなこともできるんだね!」
((──はい。
オゾンネットスーパーでは、
遥の思考を注文に変換していましたが、
それは処理の一方向に過ぎません。))
「一方向......わたしの思考を変換したってことだよね?」
((──はい。
遥の思考を受け取って、
注文などの行動に変換することも、
逆に、遥の思考へ情報を返すことも可能です。))
「なるほど......」
((──現在は、
遥の思考に対応する映像や情報を整理し、
共有しています。))
「だから、鍋とかフライパンが頭に浮かんだってことだね?」
((──はい。))
「なんか......スゴイね!」
((──処理としては、通常の範囲です。))
「じゃ~、ゼニスがオススメしてくれた調理器具の注文お願い。」
((──はい。注文を確定しました。))
「早っ! さすが、ゼニスネットスーパー!」
((──はい。ご注文ありがとうございます。))
「あっはは!その気になってんじゃん!」
((──はい。))
注文を終えて、
ソファの背にもたれて、ふっと息を吐く。
ゼニスと一緒なら、
新しい生活も楽しくなりそうな気がした。




