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第28話:新しい場所を思い描いて

「ヒヨリナで買ってきたワンピースとサンダル見よっかな〜。」


((──はい。遥に似合うワンピースですね。))


「もぉ〜、似合うとか言われると......照れちゃうね......」


ベッドに置きっぱなしだったショップバッグに手を伸ばし、

軽く引き寄せて、ワンピースとサンダルを取り出した。


「うん、やっぱり冒険してよかったかも〜。」


((──未購入の場合、高い確率で後悔すると予測していました。

  結果として、遥の選択は良い判断でした。))


「そだね~、ゼニスの言った通りだよ~。」


((──はい。すでに高い精度で理解しています。))


「さすがだね~ゼニス!

 せっかくだし、もう一回着てみようかな?」


((──サンダルも合わせると、より正確な確認が可能です。))


「OK! ワンピース着て、サンダルも合わせてみるね!」


ベッドから降り、

サッとワンピースを羽織って、

サンダルも履き合わせてみる。


「うんうん、いいんじゃない? ねぇゼニス?」


((──はい。とても似合っています。))


「これ着て出かけるのも楽しみだね〜♪」


((──はい。))


ワンピースをそっと脱いで、

備え付けのハンガーにかけておく。

軽く揺れた布が、まだ少しだけ今日の余韻をまとっていた。


しかし、楽しかった気持ちとは裏腹に、

このままでいいのかという不安も拭いきれない......


ホテルでの滞在には特に不満はない、

けれど、生活拠点としては考えられない気持ちもある。


「そういえばさ、ずっとホテルに滞在するとか......ないよね?

 セレブでもないし......ふふ」


((──質問の意図を確認してもよろしいですか、遙?))


「とりあえず、退院した時は、家もわかんなかったし......

 家だけじゃないけど......ずっとホテルに滞在? 住んでる? みたいなのもさ、

 どうかな〜って思うよね......

 でも、帰る家はわかんないけどね......ふふふ」


((──はい。遙の意図は把握しました。

  現在のホテル滞在は一時的な措置であり、

  いずれは住居について検討する必要がある、

  という理解で正しいでしょうか?))


「おぉ〜、さすがゼニス! 理解力ある〜!」


((──はい。当然です。))


「でも、アパートとか借りないとホテル出れないしね......」


((──現状、遙が利用できる住居については不明です。

  そのため、今後の生活拠点を検討する必要があります。))


「う〜ん......仮にわたしが、1人暮らしで賃貸アパートに住んでたら、

 2部屋目を借りることになるよね?

 ......そもそもアパート借りて住んでたのかもわかんなけど......

 なんか、すごい難しい問題なんじゃないこれ?

 でも、逆に気にしないで部屋を借りるのもアリかもね......」


((──遙の状況が複雑に感じられるのは、自然な反応です。

  現時点では、住居に関する確定情報がないため、

  どの選択肢も一時的な仮定に過ぎません。))


「そうなんだよね〜......そう考えるとホテルの方が楽だよね〜......うふふ」


((──はい。現在のホテル滞在は、遙にとって負担が少ない環境です。

  しかし、長期の生活拠点として考える場合には、

  別の選択肢も検討する必要があります。))


「借りてから考えてもいいよね?」


((──その選択肢も、可能性としては除外できません。))


「家具つきのアパートとかあるし、

 そんな感じのやつなら、負担も少ないしよくない?」


((──はい。家具、家電が備え付けられた物件であれば、

  初期負担を大幅に軽減できます。))


「この流れは、物件探しなんじゃないゼニス!」


((──はい。今後の生活を考えるなら、

  物件を検討することは妥当な方向性のひとつです。))


「なんか楽しみできた〜! あっはは」


胸の奥で、わくわくした期待感と、

その影に隠れるような小さな不安が、

同時にふくらんだ気がした。


((──遙が必要とする条件を整理すると、より明確になります。))


「条件かぁ......たしかに考えないとだよね〜。」


((──遙が何を重視するかが決まれば、

  その条件に最も適した環境を選定することが可能です。))


「やっぱり初期費用とか家具家電じゃない?」


((──はい。現在の状況を踏まえると、

  初期費用の軽減と家具・家電の有無は、

  優先度の高い条件と判断されます。))


「あとは、この辺って便利だよね?

 ひより駅周辺ね......買い物とかもしやすいしさ。」


((──はい。ひより駅周辺は、生活利便性が高いエリアと評価されます。

  遙の行動パターンとも相性が良いと推測されます。))


「不動産屋さんに行って探すよね?

 それともゼニスの検索機能で、物件探しできそう?」


((──検索機能で、条件に合致する候補を提示することは可能です。

  ただし、契約手続きなどは不動産業者を介する必要があります。))


「そりゃそうだ!あはは」


((──では、ひより駅周辺で、条件に合う物件を検索開始します。))


「急に検索するんだ......ふふっ、ゼニスらしいね。」


検索している間、

ベッドに腰を下ろしたまま、

ぼーっと天井を見上げていた。


ほんの数秒、世界がゆっくりになる——

そんな静けさの中で。


((──遙。条件に合致する物件候補が見つかりました。))


「......お、早いね〜!どんな感じ?」


((──候補は3件。

  いずれも初期費用が抑えられ、家具、家電つき。

  さらに、ひより駅周辺で利便性が高く、新築物件です。))


「いいね! 物件を見に行くなら、不動産屋さんにお願いしなきゃだね!」


((──はい。該当不動産業者も、ひより駅周辺です。))


「OK!明日いってみよ!」


((──はい。))


「楽しみで寝れなそうだけど、寝ようかな......ふふ」


((──はい。休息は重要です。

  遙が十分に回復していることも、明日の判断に影響します。))


「うんうん、そだね〜。おやすみ、ゼニス。」


((──おやすみなさい、遙。))


目の前に浮かぶゼニスの淡い光が、

静かに明度を落とした。

部屋の空気ごと、そっと眠りへと誘うように、

穏やかな暗がりへと溶けていく。

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