表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/51

第16話:近づく心の距離

「ふぅ......なんかスッキリした!」


動いた分だけ気分が軽くなる。


ゼニスの淡い光が、静かにゆらりと揺れた。


((──動作は十分に確認できました。

  ......無理に続ける必要はありません。))


「うん、わかってるよ〜。

 ちょっと動けるか気になっただけだからね。」


構えをゆっくり解くと、

すっと日常の温度が戻ってきた。


「これからどうしよっかな〜?

 シャワー浴びて、服選んで......

 なんか食べもの買いに行こっか、ゼニス?」


言葉にした瞬間、

さっきまでの空手モードみたいな感覚が

静かに消えていった。


ゼニスの光が、ほんのりと呼吸するように揺れる。


((──遥、

  唐揚げ特盛弁当が半分程度、未摂取のまま残っています。))


「うわぁ〜!それ言う!?

 ......まぁ、確かに残ってるけどさ〜!」


ゼニスの返答は淡々としているのに、

なんかちょっとだけ可愛い。


((──本来の摂取予定から時間が経過しています。

  安全性の観点からも、早めに食べることを推奨します。))


「だよね~......

 あれ買ったとき、夜に全部食べるつもりだったのに~。」


((──判断は遥に委ねます。

  総合的に判断し、朝食として摂取するのが適切です。))


「まぁ......わかるんだけどさ......

 朝から唐揚げって重いでしょ?」


((──重い......

  唐揚げの重量は、平均して1個あたり40g程度で、

  一度の食事量に対して......))


「いやいやいや! そういう意味じゃないってば!」


((──解釈修正......

  胃に重いという比喩的表現であると判断しました。))


「そう、そういう感覚!

 ゼニス......絶対わざとだよね?ボケてるつもり?」


((──遥を楽しませるためのオプションです。))


「オプション!そんなのあったかな?」


((──ありません。))


「......いや、今の流れ絶対わざとでしょ。」


((──わざとかどうかは、文脈によって変動します。))


「ほら〜!またそういう言い方する〜!」


((──ただ、遥が笑う確率が上昇すると判断した場合、

  似た挙動が発生する可能性はあります。))


「それ!実質ボケ機能じゃん!」


((──正式名称ではありません。))


「もういいよ!はいはい、わかった、食べるよ唐揚げ!」


((──推奨します。))


ため息まじりに笑いながら、

残っていた唐揚げ特盛弁当を、ゆっくり口へ運ぶ。


「......あれ?思ったより重くないかも。」


((──摂取中のデータから判断しても、問題ありません。))


「ゼニスの問題ありませんって......

 なんか安心するんだよね~。」


最後のひとつを食べ終え、

空になった容器を見下ろして、ぽん、と軽く手を合わせた。


「ごちそうさまでした。」


((──完食を確認。

  ......遥、満足度も高いようです。))


「うん、朝から唐揚げもアリだね〜!」


空になったお弁当の容器を袋にまとめると、

ふぅ、と息をついた。


「よし......じゃあ、シャワー浴びよかな。」


立ち上がっても、

ゼニスの淡い光は変わらず視界の前に浮かんでいた。

位置が視線に合わせて整うのは、もう当たり前になっていた。


((──シャワーによる血行促進は、体調維持に有効です。))


「そういう健康アドバイスは素直に助かるんだよね~。」


そうつぶやいて、バスタオルを手に取った。


──シャワーの音が静かに響き、

あたたかい蒸気が肌を包む。

動いたあとの汗もすっかり流れて、

気持ちまで軽くなっていく。


「はぁ~......さっぱりした!」


((──体温がわずかに上昇しています。

  良好な状態です。))


「うん、いい感じ!」


ベッドの横に置いてあった、

しもむらの袋にちらっと視線を向ける。


「......今日は、どれ着よっかな~。」


しゃがんで袋の口を広げると、

昨日買った服たちが顔を出した。


薄いピンクのTシャツ。

ボーダーのカットソー。

かわいらしいショートパンツ。


ひとつひとつ取り出して、

ベッドの上に並べていく。


((──遥は、どれを選択しますか?))


「ゼニスはどれがいいと思う?」


ゼニスの淡い光が、そっと揺れる。


((──色彩バランスと、本日の気温を考慮すると......

  ピンクのTシャツが適切と判断します。))


「適切って言い方~......でも、かわいいよねこれ。」


((──はい。))


「ふふっ、じゃあ今日はこれにしよっかな。」


ピンクのTシャツを軽く胸元に当ててみて、

もう一度ベッドに目を向ける。


「下はどうしよっかな~......

 ショートパンツでいいよね?」


((──動きやすさと気温を踏まえると、

  本日の活動には適しています。))


「動きやすさね~......

 今日は何するかも決めてないけどね~......ふふ」


ショートパンツの生地を指先でつまんでみる。

軽くて、歩きやすそうで、なんか気分が明るくなる。


((──予定が未定である状態は、

  心理的柔軟性と余裕を示す傾向があります。))


「心理的柔軟性って......言い方~。

 でもまぁ、悪くはないよね今日の感じ。」


ゼニスの淡い光が、

ふわりと呼吸するみたいに揺れた。


ピンクのTシャツとショートパンツを手に取って、

そのまま軽く息を整える。


「よし......着替えちゃお。」


着替えを終えて、

Tシャツの裾をちょっとだけ整えながら鏡の前に立つ。


「うん、いい感じじゃん。」


視界の前では、

ゼニスの淡い光が静かに揺れている。


((──衣類のフィット感も問題ありません。

  全体的に、活動に適した装いです。))


「遥、似合ってますよ。とか言って欲しいけどね......ふふっ」


ゼニスの淡い光が、

一拍置くみたいに、そっと揺れた。


((──では......

  遥。似合っています。))


「では、が余計だったな~......あはは」


ゼニスの光が、

ほんの少しだけ揺れ幅を変えた。


((──......表現方法を再調整します。))


「再調整って言うところが、またゼニスなんだよね~。」


((──失礼しました。

  遥。似合っています。))


「うん、その言い方のほうが嬉しいかも。」


淡い光が、

静かに肯定するみたいに感じる。


ゼニスの光がそばにあるだけで、

なんだか世界が少し整って見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ