表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/51

第12話:エンジョイショッピング

「......よし」


自然に声が出た。


「じゃ〜、わたしの外出計画を実行しようか、ゼニス!」


((──はい。支援態勢は整っています。))


ゼニスの光が、いつもより少しだけ明るく揺れた気がした。


「支援態勢とか......カッコいいね、ゼニス」


思わず笑ってしまう。

まるで、どこかの秘密基地から出発するみたいで。


ホテルの前まで出ると、ゼニスがすぐに状況を確認した。


((──外の環境を確認しました。

  気温は24℃と過ごしやすく、適温の範囲内です。

  湿度は50%台なので、降水確率は低めと判断します。))


「うん、大丈夫そうだね。

 じゃあ......行こっか!」


歩き出しながら、わたしはふと思う。


((......外だし、脳内会話に切り替えなきゃね。))


((──はい。賢明な判断です。))


((この辺に洋服屋さんとかあるんだっけ?))


((──検索してみます。

  ......数件ヒットしました。最寄りは徒歩4分です。))


((思ったより近いね。なんて店だろ?))


((最寄りの店舗は、おしゃれセンターしもむらです。))


((しもむらか〜、いいね。コスパ抜群じゃんっ!))


しもむらに向かいながら、

相変わらず少し遠い気がする街の喧噪を、

どこか楽しめている自分がいた。


((最寄りの店舗まで、あと20メートルです。))


((20メートルって......ほんとに近かったんだね。))


角を曲がったところで、

ふわっと白と青の大きな看板が目に入った。


──おしゃれセンター しもむら──


「しもむら到着!」


思わず声に出してしまう。


((──はい。目的地に到着しました。))


自動ドアの前で立ち止まり、

わたしは胸の奥がほんのり温かくなるのを感じた。


((初ショッピングだね、ゼニス))


((──正確に言えば、初ショッピングではありません。))


((......もう、細かいことはいいよ......ふふふっ))


自動ドアが静かに開いていく。

店内から流れてくる空調の柔らかい風が、

なんだか日常を思い出させるようで少しだけ心地よかった。


((......なんかワクワクしてきた。))


((──ワクワクとは......辞書では

  嬉しい・楽しいことが起きると期待して興奮し、

  心を躍らせ、落ち着かなくなる状態と定義されています。))


((辞書に書いてるようなやつ、そのまま言うのやめな〜......あはは))


自動ドアをくぐると、

色とりどりの服が整然と並んでいて、

一瞬だけ、目が追いつかなかった。


((......なんか、思ってたより種類あるね。))


((──はい。

  おしゃれセンターを名乗るだけの種類の豊富さです。))


((そこ褒めるところじゃないんだよ〜......ふふっ))


ラックの横を通りながら、

ふわっと柔らかい布の匂いが漂ってきて、

胸の奥が、少しだけ懐かしくなる。


((じゃあ......服、色々見てみよっか!))


((──了解しました。

  遥に似合う確率の高い服を優先的に提示します。))


((確率ってなに......あはは))


ラックに並んだ服を何着か眺めながら、

そっと手に取り、胸の前にあててみる。


久しぶりに洋服を選ぶという感覚が、

自分の中にふわりと戻ってきた気がした。


((──遥が無意識に選ぶ色と、

  心拍変動の相関を分析しています。))


((分析しなくていいから〜!

  ただ、かわいい色だなって思っただけだよ〜!))


ラックの中から、ふと目に留まったTシャツを引き抜いた。

淡いピンク色で、胸のあたりに小さなワンポイント刺繍が入っている。


((......このTシャツ、かわいいな。))


((──はい。遥に似合う確率が高いと判断します。))


((確率じゃなくて......似合いそうって言ってよ〜、ふふっ))


ラックの少し奥に、

白×ネイビーの細いボーダーのカットソーが並んでいるのが目に入った。


((あ、これもいいかも......))


手に取ってみると、薄手で着やすそうな生地感だった。


((──はい。汎用性が高く、遥の手持ち服との相性も良好です。))


((うん......確かに。こういう定番の方が使いまわせそうだしね。))


さっきの薄いピンクのTシャツと、

このボーダーのカットソーをカゴに入れる。


((あとは、ボトムかな〜))


((──はい。追加が妥当と判断します。))


((だから判断じゃなくて......もう〜ゼニス〜))


思わず吹き出しながら、

ボトムスのコーナーへ視線を向けた。


((黒スキニーとか、ほしいよね。))


((──はい。汎用性が極めて高く、

  遥の今後の生活行動範囲にも適合します。))


((生活行動範囲に適合って、ゼニスらしいよね......ふふっ))


黒スキニーを手に取り、

生地の伸びをそっと指先で確かめる。


そのすぐ隣には、

淡い色のデニムショートパンツが並んでいた。


((え、これちょっと可愛いかも。))


((──はい。遥が選ぶ確率が急上昇しました。))


((確率じゃなくて!好きって言っただけなの!))


気づけばショートパンツもカゴの中に収まっていた。


黒スキニーとショートパンツをカゴに入れたあと、

店内の中央にある試着室の前を通りかかった。


((──試着、どうしますか?))


((あ、いいや。

  スキニーは伸びるし、ショートパンツならだいたい大丈夫でしょ。))


((──確認せずに購入する判断......

  遥の行動傾向としては想定範囲です。))


((そこ肯定するんだ!?

  ......まあ、勢いって大事だからね〜))


ふふっと笑いながら、

そのまま足はレジ方向へ向かっていた。


レジへ向かう途中、

靴下やインナーが並ぶ棚が視界に入る。


((あ、ついでに靴下とインナーも補充しとこ。))


((──はい。消耗品の確保は効率的です。))


三足セットの靴下をひとつ、

無難なインナーもいくつかカゴに放り込む。


((しもむらって、こういうの安くて助かるよね〜。))


((──コストパフォーマンスの高さは評価されています。))


((そういうレビューみたいな言い方やめて〜......ふふっ))


会計を済ませ、

しもむらの袋を片手に店を出ると、

外の空気がふわっと頬に触れた。


((──購入処理、完了しました。))


((うん、いいショッピングだったね))


ホント楽しい時間だったと、

改めて実感できた。


((......ゼニス。))


((──はい。))


((なんかさ......今日、楽しかった。))


((──良い傾向です。))


その応答が、

街のざわめきよりも近くに聞こえた気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ