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陽キャアイドルの幼なじみの秘密を陰キャオタクの俺だけが知っている件について  作者: 水沢紗奈
Stage.1 再会と新しい始まり

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Voice.4 だけど本当はこれ、やりたかったんだよね

 俺達はカラオケのロビーで受付をして、ドリンクバーで飲みものを選ぶ。


「俺はサイダーにするけど、篠原何にする?」

「私はアイスティー」


 それぞれ飲みものを入れてから、一緒に部屋に行ってドアを開けた。

 2人には少し広いくらいの大きさの部屋の壁の真ん中にはテレビがついていて、流行のアーティストのミュージックビデオが流れている。

 台の上にはカラオケ機器と選曲をするタブレットが置かれていて、テーブルには食べものを頼めるタブレットがあった。


「たっくんってよくカラオケ来るの?」

「俺は歌苦手だからあんまり来ないけど、メガネと文豪によく連れてこられる」

「目崎くんと文谷くん、カラオケ好きそうだもんね」

「うん。篠原先に歌っていいよ」


 そう言って、俺は篠原に選曲をするタブレットを渡す。


「ありがとう」


 篠原はそれを受け取って、ソファーに座った。

 俺も篠原の隣に並んで座る。


「私もよくカラオケ来るんだけど歌う曲は周りに合わせてて……」


 そう言って、篠原は曲を選んで送信ボタンを押す。


「だけど本当は()()、やりたかったんだよね」


 テレビの画面に予約した曲のタイトルが表示された。

 それは、『ENDLESS FLAME』。

 魔法少女リリカルこのはの2期、『魔法少女リリカルこのはDews』のオープニングテーマになった柚木真奈さんの代表曲で、「エンフレ」と略されるくらい人気がある曲だ。

 しかも映像は、俺と篠原が中学1年生の時に行った東京ドームで、柚木真奈さんが最初に『ENDLESS FLAME』を歌った時のライブ映像だった。

 篠原は立ち上がってマイクを持つと、テレビの横に立って言った。


「真奈ちゃんのライブのセットリスト再現カラオケ!」


 俺は目を輝かせる。

 すかさずスクールバッグからさっきメイトで買ったものを取り出した。


「じゃあ俺、さっきメイトで買ったペンライト振る!」

「あ、いいねそれ! お願い!」


 俺はペンライトの色をオレンジ色に変える。

 しばらくして、曲名のテロップと一緒に映像とライブバージョンのイントロが流れて、篠原が歌い始めた。

 柚木真奈さんの映像の振りと同じタイミングで、篠原も同じ振りをする。

 カラオケのライブ映像があるから歌詞のテロップを見ながら歌っていたけれど、テレビを見なくても完璧に歌詞と振りが頭に入っているみたいだった。

 歌も上手いし、柚木真奈さんの歌は篠原の声に合っている。

 何より、柚木真奈さんのライブ映像を観ながら歌っている篠原はすごく楽しそうだ。

 俺は曲のリズムに合わせてペンライトを振る。

 1番と2番が終わって間奏に入り、『ENDLESS FLAME』で定番のコールの前にさしかかった。

 篠原は声をあげる。


「いくよー!」

「エンドーレスフレーイム!」


 俺と篠原は一緒に曲名を叫んだ。

 誰かと一緒にコールするのは初めてだけど、こういうのってすごく楽しいんだな。

 歌い終わった後、篠原はソファーに座る。


「すっごく楽しい……!」

「わかる。俺も同じこと考えてた」


 篠原はアイスティーを飲んでから言った。


「東京ドームのライブで最初にこの曲のイントロがかかった時に、ファンのみんながいっせいにオレンジ色のライトに変えてたの見て感動したんだ」

「俺も、初めてライブに行ってあの光景見た時、すごく綺麗でファンのみんなの団結力すごいって思った」

「そうそう。真奈ちゃんもすごく嬉しそうな顔してて、ライブってあったかいなって思ったの」


 篠原にとって最初のライブで、そんなふうに思ってたのか。

 楽しんでくれて、真奈さんのファンになってくれたならすごく嬉しい。

 篠原は食べものを頼むタブレットを取って言った。


「歌ったらおなかすいちゃったから何か食べようか」

「うん」

「見て見て。ここのカラオケ、食べものの種類すごく多いよ」


 篠原に言われて、一緒にタブレットのメニューを見る。

 たしかにフライドポテトだけでも数種類あって、みんなで食べやすいパーティーメニューもあった。


「本当だ。たくさんあってどれにしようか迷うな」

「私、フライドポテトとハニートースト食べたい」

「いいよ。じゃあそれともう1つ何か頼もう」


 篠原は自分が言った食べものを選択する。

 サイドメニューからメインメニューに切り替えると、ご飯ものからパン、麺類から揚げものまでいろいろな食べものが表示された。

 ある食べものを見た篠原が首をかしげる。


「ねえ、このロシアンたこ焼きってどれくらい辛いのかな?」


 ロシアンたこ焼きの説明には、「激辛香辛料使用!」と書かれていた。


「……食べてみる?」


 2人でおそるおそる顔を見合わせる。

 篠原は軽く笑い飛ばした。


「せっかくだし頼んでみようか」


 俺はうなずく。


「まあ辛いっていっても食べられる辛さだよな」

「うん。きっとそうだよね。……たぶん」


 篠原はそう言って、さっき選択した食べものに追加でロシアンたこ焼きを選択すると、注文送信を押して食べものを頼んだ。

 食べものを注文して待っているあいだ、柚木真奈さんのライブのセットリストの曲順でカラオケを歌う。

 ちょうど半分くらい歌い終わった時、女性の店員がノックをして入ってきた。

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