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陽キャアイドルの幼なじみの秘密を陰キャオタクの俺だけが知っている件について  作者: 水沢紗奈
Stage.2 ゲーム制作と深まる関係

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Voice.11 やってみたいことがあるんだ

 ――次の日の朝。

 ホームルームが始まる前の時間、篠原はメガネと文豪に、放課後の屋上で歌が聴こえるという噂が気になっている、ということを話していた。

 話を聞いたメガネと文豪は声をあげる。


「そんな噂あったの!?」

「うん」


 篠原がうなずく。

 メガネは嬉しそうに言った。


「もしかしたら、その人だったら俺達の部活に入ってくれるかも」

「そしたら本格的な部活になるのか」

「そうだな」


 文豪の言葉に俺がうなずくと、篠原が言う。


「でもどうやったらその人に会えるかなって考えてたんだよね」

「うーん……」

「おはよー!」


 みんなで考え込んでいると、明石と木暮が学校に来た。

 明石はいつも朝からテンションが高い。


「おはよう」


 木暮は普通のテンションで挨拶をした。


「おはよう。茉昼、夕乃」


 俺とメガネと文豪も、2人におはよう、と返す。

 明石は首をかしげた。


「朝からみんなで何考え込んでるの?」

「実はね――」


 さっき俺達が話していたことを篠原が話す。

 話を聞き終わった後、明石が言った。


「そういうことかー」

「茉昼、何かいいアイディアない?」

「うーん……。私が聞いた話だと、『放課後の音楽室でピアノを弾いてると屋上から歌が聞こえてくる』っていう噂だったんだけど……」

「ピアノ?」


 明石の話を聞いて、篠原は何かを思いついたような表情をする。


「篠原、どうかした?」


 俺が聞くと、篠原は口を開いた。


「瀬尾くん、目崎くん、文谷くん、今日の放課後仮入部終わったらみんなで集まれる?」

「大丈夫だけど」


 俺達は首をかしげる。

 すると、篠原は笑顔で言った。


「やってみたいことがあるんだ」


 ――放課後。

 俺達3人は篠原に言われて音楽室に来ていた。

 篠原が楽譜をグランドピアノの譜面台に置いて、準備をする。


「よし。準備できた」


 そう言って、椅子に座った。

 朝のホームルームの時間に明石の話を聞いた篠原が、自分がピアノを弾いたら屋上で歌ってる声が聴こえるんじゃないか、と言った。

 そして、歌が聴こえたら篠原がピアノを弾いているあいだに、俺達が屋上に行く。

 そうしたら屋上で歌ってる人に会える、というのが篠原のアイディアだった。

 篠原は曲を弾く前に、練習曲を弾いて指を慣らす。


「じゃあ、弾くね」

「わかった」


 俺がうなずくと、篠原はみんなが知っているポップスの曲の伴奏をピアノで弾き始めた。

 イントロが終わってメロディーに入る。

 その瞬間、曲に乗って歌が聴こえてきた。

 俺とメガネと文豪は声をあげる。


「……やった!」


 そして、俺達3人は歌声をたどるように走る。

 階段を上がって、屋上のドアを開けた。

 夕日に照らされて、誰かが歌っている。

 そこに居たのは――。

 このあいだ教室で俺達と一緒に音読をした、同じクラスの音海歌織(おとみかおり)だった。

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