0009. 職業は陰陽師。スキルの数はサイコロ次第
私の真剣な問いに、卑弥呼様は満足げに頷いた。
「よっしゃ、ええ覚悟や。ほな、あんさんのために、陰陽師のええとこ、教えたるわ」
さっきまでの神々しい雰囲気はどこへやら、急に胡散臭い商人のような笑みを浮かべ、なぜかエセ関西弁に切り替わった。
「まず大きな特徴は、五行思想と式神やな。陰陽五行の術を使えば、最初から簡単な魔法みたいな真似ができるで。式神は、紙で出来てるゴーレムのようなモノやな。紙以外でも出来るんやけどな」
彼女は続ける。
「せやけど、このジョブは器用貧乏になりやすいんや。やれることが多すぎて、全部究めようとしたら時間がなんぼあっても足らへん。メリットしかない甘い話なんておまへんで」
(口調が……! しかもなぜエセ関西弁!?)
ツッコミたい欲求が喉までせり上がるが、私の生存本能が、直感が「スルーしろ」と警鐘を鳴らす。乗せられたら負けだ。
それにしても、陰陽師は色々できる分、デメリットもあるのか。それを正直に教えてくれるのは、ある意味で親切とも言えるが、暗に「もうこれにしろ」と言っているような圧を感じる。選ばなかったとき、どんなことになるか怖いな。
ここまで強く勧められた以上、もう選択肢は一つしかないだろう。
「説明、ありがとうございます。ジョブは、ご推薦いただいた陰陽師にします。それで、残りのスキルですが、スキルは何があるんですか」
「スキルはジョブに紐づいとるから、あんさんが選べるんは共通スキルだけや。選べる数は3から5個やな……う〜ん、そうやな、これで決めよか」
卑弥呼様がにやりと笑うと、モノクロの部屋の真ん中に、音もなく巨大なサイコロが出現した。某お昼のテレビ番組で使うような、一辺が1メートルはありそうな代物だ。
「……これを?」
「そや。出た目が、あんさんが貰えるスキルの数や。ほれ、振ってみ」
こんな演出はいらない。しかも、テーブルやソファー等の家具が邪魔で転がしにくい。私は部屋の隙間を見つけ、どうにか「よっこいしょ」とサイコロを押し転がした。コロコロと重々しく回転し、やがて止まった面には【4】の目が浮かび上がっていた。
「……4か。おもんないわー」
卑弥呼様が心底がっかりしたように肩をすくめる。
「こういう場面はな、5を出して『遠慮せえや!』か、3を出して『日頃の行いやな!』ってツッコまれるのがお約束やろ。ほんま、つまらんヤツやで、あんさん」
(知ったこっちゃない!)
なぜ神様相手に芸人魂を求められるのか分からないが、ここもスルー一択だ。
「それで、共通スキルは、何が取れるのですか?」
陰陽師のジョブスキルも気になるが、まずは自分で選べる共通スキルから確認しよう。
「共通スキルも、ジョブと同じやね。大きくは攻撃系と生産系、特殊系や。陰陽師にしたんで、特殊系の共通スキルは、ほぼ無いで。攻撃系と生産系をこのリストから選びや」
ジョブの時と同じように空中に再び光のリストが浮かぶ。ただ、こっちはジョブと違い、膨大なスキル名が長々と連なっていて、目が疲れる。私は4つのスキル枠を念頭に、慎重に項目を吟味した。
(う〜ん、異世界転生モノの定番、『鑑定』と『アイテムボックス』は無いのかぁ。もしかして、特殊系だから陰陽師だと取れないのかな?……スキルを3つだけ選んで最後に鑑定、アイテムボックスがあるか聞いてみて、あれば、どちらか取るか、3つのうちの1つを諦めて、両方取るかしよう)
(まず生存のための基盤として、自衛するにしても、赤ちゃんスタートだし、運動苦手だし、ブーストがないと、簡単に負けちゃいそう。『身体強化』は必須かな。あれ、でもリストには『身体強化』は1つしか無いな。スピード強化とか、防御力強化って感じに分かれてないから、全般的に強化されるのかな?まぁ、あとで聞いてみよう)
(次は錬金術みたいなのが欲しいけど、これもリストに無い。錬金術は魔法の世界のモノって感じだから、無いのかな。そうすると、長生きのため、食事は大事だから、生活の質を上げるために『料理』かな。一人暮らししてたから、それなりに作れるけど、より美味しい方がモチベーション上がるし、狐火ちゃんに美味しい食事を作ってあげたいしね)
(そして3つ目は、どうしようかな〜。興味を惹かれるのがほとんど無いな。唯一あるとしたら、『錬成』か。これが錬金術の代わりになるのかも。未来への投資として、何かに使えるようになったらラッキーぐらいで『錬成』にしよう……。よし、3つ決めたし、卑弥呼様に確認だね)
「卑弥呼様、とりあえず決めてみましたが、『鑑定』や『アイテムボックス』は、無いんですか?あれば、取りたいのですが………」
「鑑定のようなスキルは陰陽師のジョブスキルに含まれとるで。だから、別に取る必要ないで。まぁ、鑑定スキルだけ持っていても、知識がないと鑑定出来へんけどな〜。いわゆる、鑑定眼やな」
(えぇ〜、思ってたスキルと若干違うけど、別に取らなくていいなら、ラッキーと考えよう)
「アイテムボックスは、まあ転生特典で無料で付けたるわ。ただし、時間停止や容量無限とかやない、ささやかなもんやで。性能は行ってから、確認しや。あと『時の始原霊』と『空の始原霊』がいれば、機能拡張できるで、この情報もオマケや」
(オッシャー、チート3点セットの1つ、とりあえず最低限でも、アイテムボックスがあれば、かなり便利になりそう!)
「オマケ、ありがとうございます。それとスキルの質問なんですが、身体強化って、1つしか無いんですか?あと、錬成って、なんですか?錬金術もないんですか」
「質問多いな。……まぁ、ええけど。身体強化は、1つやね。体全体を強化出来るヤツやで。このスキルは発動中、常時エネルギーを使うから、体内のエネルギー切れに注意せな、あかんよ」
「錬成は、行って使えば、わかるんやけど、まぁ、オマケで教えたるわ。その言葉の通り、いろんなモノを変化させることが出来るスキルや。いろいろと使い勝手ええから、実験してみいや。最後に錬金術は今のところ、無いで。錬成があるから、それで代替出来るんとちゃうか」
(なるほど、身体強化は常時消費型アクティブスキルね。錬成は、思ってた以上に便利そう!戦国時代で何が作れるか分からないけど、生活の質を上げるのに使えそうだね!錬金術は扱いが雑だな。無いなら、しょうがない、錬成スキルに頑張ってもらおう)




