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【改稿版】戦国幻獣物語 〜目指せ、戦国ひきこもりモフモフ生活! 八百万の幻獣をモフって今日も生き抜くぞ、おぉーーっ!〜   作者: 蒼葵美
14XX年 モフってたら生活基盤ができました

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0021. 閑話・【二郎太郎】御神託は謀りか

 父上の言葉に叔父上が静かに、しかし鋭く切り込んだ。

「殿、お二人がお聞きしたという御神託、いかようなことであったのでしょうか。事が事だけにその内容と某達の動きによっては、我ら里見一族が岐路に立つやもしれませぬぞ」

 さすがは叔父上だ。おれが喉まで出かかって言えなかったことを単刀直入に尋ねてくれた。父上の真意を見極めるため、おれも一度は殊勝な態度で忠誠を誓う。


「父上。この二郎太郎、いかなる御神託であろうとこの身命を賭して完遂致す所存にございます。して、その内容とは」

 だが、父上から返ってきたのはあまりに冷たく、そして理不尽な言葉だった。


「二人ともその忠義、嬉しく思う。だが、御神託の詳しい内容はこれから指示する儀が完遂した後でなければ、その方らですら伝えられぬ。これは真里とも話をした上での当主としての決定じゃ。覆ることはないと思え」

 ――頭が、真っ白になった。


 教えられない? なぜだ。御神託が本当に里見家のためを思うてのことならば、我ら身内に隠す必要などどこにもないはず。

 やはり、これは……。


「その上で三人には頼みたい。まずはこの地の南、平砂浦へいさうらの地に新たな社を建立する。かの地を神領とし門前町も築くのだ。これは御神託に対する奉納として行う。氏兼はその社の宮司として。二郎太郎は出仕として仕えよ。たきは女官として社を支えよ」

 父上の言葉が、おれの胸に氷の刃のように突き刺さる。


 宮司……出仕……。それは武家としての道を絶たれ、社に籠るということ。俗世から、政から、切り離されるということだ。

(……廃嫡、か)


 病弱な兄上に代わり、いずれおれが家を支えるのだと、そう信じて疑わなかった。父上はそれを快く思っていなかったのか。生まれたばかりの妹・琴を新たな中心に据え、邪魔なおれたちを御神託という、誰も逆らえぬ都合のよい口実で家から排除するおつもりなのか。


 叔父上が、憤然と声を上げた。

「殿! 何故に我らが神職に! 特に二郎太郎様は御家の御曹司にございますぞ! 嫡子では無いとはいえ、次代の御家を支えるお立場の方を社に押し込めるとはいかなるお考えか! この氏兼、今の話だけでは到底、腹落ちはできませぬ!」

 叔父上も同じ考えに至ったのだ。これは我らを追い落とすための謀りごとだ、と。


「父上!」

 おれは目頭に溢れる熱いものを堪えきれなかった。

「おれも、叔父上と同じく納得できませぬ! おれは廃嫡されるのですか! 神の御使いの御神託と偽り、我らを家から追い出すおつもりか!」

 その瞬間、父上の纏う空気が一変した。


「――馬鹿者どもが」

 それは怒りというよりも絶対零度の殺意だった。部屋の温度が肌でわかるほどに下がる。


「当主である儂の言葉を……、あまつさえ神聖なる御神託を謀りごとと抜かすか。……失望したぞ。その方ら、この場で腹を切れ」


「……え」

 言葉の意味が、理解できなかった。

 腹を切れ? 父上がおれに死ねと、そう言われたのか?


「切れぬなら、儂が斬る」

 父上の手が静かに腰の刀の柄にかかる。

 ああ、そうか。そこまで疎まれていたのか、おれは。邪魔だったのか。

 父上の罠だったのか。この人払いのされただだっ広い広間はおれたちを処刑するための場所だったのか。

 もう、何も考えられない。叔父上が何か必死に弁明しているが、その言葉もおれの耳には届かない。ただ謝らなければ。何に対してかは、もう分からぬが。


「……ちち、うえ。もうしわけ、ございませぬ……」

 その絶望的な静寂を絹を裂くように破ったのは、赤ん坊の鋭い泣き声だった。


「ふ、ふえぇぇぇええええええん! いやぁぁあああ!」

 妹の琴の声だ。

 その声に弾かれたように、今まで静かに成り行きを見守っていた母上が動いた。


「お前様!」

 母上はおれたちを庇うように、毅然とした声で父上を諌める。


「お怒りはごもっとも。なれど、血を分けた弟と我が子にいきなり死を命じるとは、あまりに早計にございます! この者たちの愚かさは、後ほどじっくりと諭せばよいこと! それにご覧なさいませ! 琴がお前様の殺気に怯えております! 里見家の未来を担う姫に血族同士が争う姿を見せて、何とするのですか!」


 母上の言葉のほとんどは、鳴り響く耳鳴りにかき消されていく。

 恐怖に支配されたおれと叔父上は、ただ床に額をこすりつけ、許しを乞うことしかできなかった。

 やがて、父上の凍るような声が響いた。


「……嘆かわしい。だが、琴の顔に免じ、命だけは助けてやる。――二郎太郎と氏兼を座敷牢へ押し込め。たきもじゃ。たきは後室に幽閉せよ」

 やはり、そうか。殺されはせぬが、おれはもう……。

 血の気が引いていくのが、自分でもわかった。ぐったりと顔も上げられない。


 父上の号令で駆けつけた小姓たちに脇を抱えられ、まるで罪人のように引きずられて、広間を後にした。

 もう、この場所に戻ることはないのだろうか。

 生まれてからずっと過ごしてきた、我が家。厳しくも優しかった父上と慈愛に満ちた母上の顔。

 その全てが急に遠い世界の出来事のように思えた。

 座敷牢へ向かう冷たい廊下を歩きながら、おれはただ、なぜこんなことになったのか、そればかりを考えていた。

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