表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改稿版】戦国幻獣物語 〜目指せ、戦国ひきこもりモフモフ生活! 八百万の幻獣をモフって今日も生き抜くぞ、おぉーーっ!〜   作者: 蒼葵美
14XX年 モフってたら生活基盤ができました

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/43

0018. 口裏合わせの観客になりました

「お前様、連雀は光賀でよろしかったのですか。まだまだ年若でありましょう。上手く甲斐での人買いができましょうか」


「真里、あやつ(光賀)は、津島の出じゃ。そこいらにいる連雀より、遅れを取ることもあるまい。儂らが思うとるより老獪であるぞ。

 若輩に見せて、しっかりと利を考えておる。甲斐でも上手く孤児の奴隷を集めてくれるだろう。それに義父上に文を出すのじゃ、大きな問題にはならんだろう」


 うとうとと微睡んでいた私の意識を現実に引き戻したのは、地響きのような荒々しい足音だった。

 ドタ、ドタ、ドタ……! まるで巨人が歩いているかのようなその音に、私はびくりと体を震わせる。

「……氏兼が来たようじゃな。相変わらず、歩く音だけで誰か分かる男よ」

 父上の呆れたような声が聞こえる。どうやら、これから私の未来の側近チームとの顔合わせが始まるらしい。

 母上は私をそっと抱き上げると、部屋の隅へと移動し、また床に寝かせ、部屋から出ていった。

 その母上と入れ替わるように大きな影が部屋に入り、私の前で平伏するのが見えた。

「殿! 氏兼、ただいま罷り越しました!火急な話があると聞き申したが、何が起こりましたか」

 腹の底から響くようなものすごい大声だ。赤ちゃんの鼓膜には刺激が強すぎる。この人が私の叔父上で未来の神社の宮司様になる堀内氏兼さんか。第一印象は「とにかくデカくて、うるさい」。


「氏兼、急くな。他にも話す相手がおるゆえ、真里が呼びに行っておる。来るまで白湯でも飲んで待っておれ。誰ぞ、氏兼に白湯を持ってまいれ」


 やがて母上が二人の人物を連れて部屋に戻ってきた。

 一人は、母上の側でかいがいしく働く、たきさんという侍女。この人が私の身の回りを差配する女官長になるらしい。

 そしてもう一人、母上の隣でおずおずと控えている、まだ少年といった風情の男の子。父上によく似た、少し気弱そうな優しい瞳をしている。

(……この人が、私の〝お兄様〟の二郎太郎さんか)

 初めて見る、今世での兄。その存在がなんだか不思議でくすぐったい気持ちにさせた。


「誰ぞ、部屋の襖を取り外し、部屋を開け放て。その後、遠くまで離れぃ。話はそれからじゃ」

 父上は部屋の襖を全て取り払うよう命じ、厳粛な空気を作り出す。

 私と母上を除く三人が父上の前に平伏した。私は母上の腕の中から、これから始まる壮大な「口裏合わせ」のたった一人の観客となった。


「皆に話すは、我が里見家の未来を左右する密議。ここにいる五人以外、他言は無用と心得よ」

 父上の低い声に三人が「ははっ」とさらに深く頭を下げる。


 父上が語り始めたのは、母上と練り上げていた、巧みなカバーーストーリーだった。

 いわく、先日、父上と母上の二人の夢枕に同時に御稲荷様の御使いが立った、と。

 いわく、それは里見家の家運隆盛の吉兆であり、感謝を捧げるために壮大な社を建立する、と。

(なるほど、上手い!)

 私の存在――〝姫御子〟であるという核心部分は完全に隠し、神託の主体を「御使い様」にすり替えることで、話の信憑性を高めつつ、過度な動揺を避けている。真実を半分だけ混ぜ込んだ嘘は、最もばれにくい。

(お母様、なかなかの脚本家じゃないの!)

 父上の言葉に、叔父上、お兄様、たきさんの三人は息を呑み、その表情を驚愕と畏怖に染めていく。

「殿、そのような霊験が……!」


「父上! この二郎太郎、身命に賭して御神託を完遂いたします!」


「たきの命は、御方様のものにございます……!」

 三者三様の、しかし心の底からの忠誠の言葉。


 彼らはこの壮大な計画が腕の中ですやすやと寝息を立てている(フリをしている)赤ん坊のためだとは夢にも思っていないだろう。

(さて、と)

私は改めて、未来の私の側近チームの顔ぶれを、頭の中で整理した。


【琴姫プロジェクト・初期メンバー】

* 宮司(神社の最高責任者): 叔父上の堀内氏兼(愛称:ミスター・ボイス)

* 出仕(身の回りのお世話係): お兄様の二郎太郎(愛称:心優しき若様)

* 女官(侍女たちのトップ): 母上の腹心・たきさん(愛称:頼れる姐さん)

* その他: これから集められる忍者さんたちと、甲斐の国から来る子供たち……。

 

 なんというか、前世のブラック企業とは比較にならないほど、個性的で壮大なチームになりそうだ。

この人たちと私はこれからどんな人生を歩むのだろう。

 父上が家臣たちに何事かを命じ、部屋の外が再び慌ただしくなる気配を感じながら、私はそっと目を閉じた。

 壮大な茶番劇の幕開けに、少しだけわくわくしている自分に気づかないフリをして。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ