転がるコロ丸
「じゃ、まずは何か食料でも探すか……」
異世界に転生したばかりとはいえ、腹が減っては戦もできぬ。
悠真は転がり続けるゴブリンに話しかけながら、森を進みはじめた。
「なあ、コロ……名前つけようぜ? コロコロゴブリンって毎回呼ぶの面倒だし。」
【選択肢】
▶ 転がりん
▶ コロ丸
▶ ゴブタ(ありがち)
▶ やっぱ名前とかどうでもいいや
「……コロ丸でいこうか。うん、コロ丸。」
名前を呼んでみると、ゴブリンはくるくると嬉しそうにその場でスピンを始めた。
転がりすぎて地面に穴を掘り始めたが、特に止める理由もないので放置することにした。
すると突然、彼の視界に文字が浮かび上がる。
【クエスト発生】
《初級クエスト:大地のキノコを探せ》
難易度:★☆☆☆☆
報酬:たぶん食べられるキノコ(安全保証なし)
「なんだよ“たぶん”って……!」
異世界仕様のふざけたシステムにツッコミを入れつつも、食料調達のためクエストを受ける。
「コロ丸、キノコ探しに行くぞ!転がりながらでいいからな!」
【選択肢】
▶ いきなりキノコを食べてみる(ギャグ)
▶ コロ丸をキノコ探知機として転がす(意味不明)
▶ ちゃんと周囲を探索する(普通)
悠真は――
「コロ丸、そっち行ってみろ!転がってるうちにキノコに当たるかもしれん!」
コロ丸「コロォ!」
謎の掛け声と共に、コロ丸は勢いよく茂みに突っ込んでいく。
そして――
「コロォォッ!!」
ドゴン!!
茂みの奥から、何か固いものにぶつかる音。続いて地鳴り。
茂みをかき分けて出てきたのは――
「……いや、キノコでかすぎるだろ」
そこには高さ3メートルはありそうな巨大キノコ型モンスターが立っていた。
森の中、勇ましく拳を握る神谷悠真。
背後には転がり続けるコロコロゴブリン――通称・コロ丸。
異世界に来たからには、当然自分は何か特別な存在。
強くてニューゲーム、無双してハーレム……それがテンプレだろ、と信じていた。
「ステータス見た感じは地味だけど……きっと戦ったら目覚めるタイプだな、うん」
そしてその時は来た。
――ドゴン!!
【変異型モンスター:キノキノン】
レベル:15
体力:???
状態:超不機嫌
「でけえ……でも関係ねぇ、俺、最強だしな!」
【選択肢】
▶ 正面から突っ込む(脳筋)
▶ スキル“選択”で何かを起こす(意味不明)
▶ とりあえず叫ぶ(謎)
▶ 逃げる(現実)
悠真は一番上を選んだ。
「いっけぇぇぇぇ! スーパーパンチ!!」
叫びながら全力のパンチを放つ。
手応え、なし。むしろ痛い。
「イタタタタタ……っ、うそだろ、こいつカッチカチじゃねぇか……!」
キノキノン「……グゴォ」
その瞬間、巨大キノコの太い脚が悠真の腹を直撃した。
「グッ……あがッ……!!?」
吹き飛ばされ、木にめり込む悠真。
体力ゲージがほぼゼロに。
「……まって、俺、チートない……? ほんとに……ないの……?」
コロ丸「コロォォッ!(全力で転がって逃走中)」
「お、おい待てコロ丸〜〜〜ッ!!」
こうして、悠真の異世界最初のバトルは、「見せ場ゼロ」「一撃で敗北」「モンスターにはガン無視」の三拍子がそろった、輝かしい(?)幕開けとなった。