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18話 魔法

 


「今、治しますね」


「治すって、回復魔法使えねーくせにどうやって」


「使えますよ」


「は?」


 腕の怪我を回復魔法で癒すと、サイラス様は心底驚いた表情を浮かべながら、綺麗に治った傷跡を確認した。


「痛くねぇ……嘘だろ、お前、攻撃魔法だけでなく、回復魔法も使えるのか!?」


「はい」


「どうやって……魔法の仕組みが根本から違うから両方を習得するのは難しいって、帝国騎士団の魔法使い連中が言ってたのに!」


「猛勉強しました」


 魔法の習得には、第一に、複雑な魔法の構造である《魔法式》を覚える必要がある。

 一つの魔法ごとに覚える魔法式は違うが、攻撃魔法、回復魔法、補助魔法など、大きく仕組みが違う魔法については一から全く新しい魔法式を理解しなければならず、例えるなら、他国言語を理解し、その言語で難関校の試験を受け直さなければならないほど難しい。


 だから大概の魔法使いは選んだ種類の魔法だけを覚えて行くのだが、元より学ぶことが大好きなリネットは、実戦に出れなかった分、魔導書を読み漁り、様々な魔法を習得していた。


 それは、分かる人から見れば、リネットがどれだけ努力してきたかが分かることで――――


「……何でそんな奴が、妹を虐めてなんかいんだよ」


「何か言いましたか?」


「何でもねぇよ!」


 何で怪我を治したのに怒られるの?


「兎に角、任務は達成だ! こいつ等は数を増やして住処を拡大する魔物だから、人に被害が出なかったのは幸いだったな」


「……サイラス様、魔物に詳しいんですね」


「は! これくらい、ワードナ侯爵家長男の俺なら当然だ!」


「はい、凄いです」


 これは、本心の称賛だ。

 お恥ずかしながら、私の魔物の知識は学生時代で止まっていて、ほぼない。サイラス様が魔物に詳しいのは、勉強したか、騎士団での経験によるものだろう。


「ワードナ侯爵家長男とか関係なく、それは、サイラス様の努力の成果です。私は、そんなサイラス様の努力を尊敬します」


「なっ――そ、そんなの、当たり前だ! 俺は、ワードナ侯爵家長男として、当然のように求められることをしているだけで……」


「そうなんですか? でも、貴族として産まれても努力しない人達がいる中で、帝国騎士団にも入隊出来たんですから、サイラス様は凄いですよ」


 何の努力もしない代表の妹が、家の中にいましたからね。


「い、いいから、もう行くぞ! さっさと戻って、任務の報告をしなきゃなんねんだよ!」


「はい、あ、サイラス様、先に戻っていてくれませんか?」


「はぁ? 何で?」


「ちょっと……休憩してから戻ります」


「ふざけんなよ、お前!」


「ふ、ふざけてるわけじゃなくて、ちょっと……魔力が切れてしまって、動けないんです」


「はぁ?」


 魔力は、魔法を使うために必要な体力のようなものだ。体力が無くなれば、動くことは出来ない。


「元からの魔力の量が少ないのもあるんですが、実践から長く離れていたので、学生時代から魔力の量が変わっていないんです」


 魔法の習得と違い、魔力は実践を積むことで成長する。

 普段は魔力を上手くコントロールして省エネで魔法を使っているが、それにも限度があるのだ。特に、攻撃魔法は得意だけど、それ以外の魔法の省エネはまだまだ未熟だったりする。


「ばっ! じゃあ俺に回復魔法使わなきゃ良かっただろーが!」


「私を助けて怪我したのに、そんなこと出来ません」


 私が油断したのが原因の、私の不手際なんですから。


「任務は完了ですよね? 私は休憩してから戻るので、私のことは置いていって下さい」


 ここら辺は他に魔物もいないし、少し休憩すれば問題無く帰ることが出来る。

 これ以上私に付き合うのは嫌だろうと思って提案したのだが、サイラス様は何故か、不機嫌そうに考え込んでしまった。


「…………ああ! クソっ!」


 長い沈黙の後、サイラス様は私に背を向け、しゃがみ込んだ。


「さっさと乗れ!」


「乗るって……背中に? 私をおんぶして下さるんですか?」


「いいから早くしろ!」


「……では、失礼します」


 私が背中に乗ったのを確認したサイラス様は、ゆっくり立ち上がり、来た道を戻るために足を進めた。


「……」

「……」


 何となく、沈黙が流れる。


「……お前、本当に妹を虐めてないのか?」


 沈黙を破ってサイラス様の口から出て来たのは、意地悪姉についてだった。


「虐めていません」


「……そうか」


 今まで私のことを意地悪姉だと決めつけて話してきたサイラス様が急に確認をしてきた意味は分からないけど、今までのように、『嘘をつくな!』と、怒鳴られることはなかった。



 ◇◇◇



 帝国騎士団本部に着くと、サイラス様は私を背中から下ろした。


「ありがとうございます」


「別に! お前を置いていくと、先輩である俺の立場が悪くなるから仕方なくだ!」


「はい、それでも、ありがとうございます」


 私のことが大嫌いでしょうに、こんなに良くして下さるなんて、正直、サイラス様がこんなに仕事に真摯な方だとは思いませんでした。


「……お、俺は、魔物には詳しいんだ!」


「? そうですね」


 急にどうした。


「だから……お前が勉強したいなら、俺が教えてやってもいいけど!?」


「え……」


「仕方なくな! 魔物の知識がなくて足を引っ張られても困るから、仕方なく! 俺が教えてやってもいいぞ!」


「いいんですか!?」


 何てありがたい魅力的なお言葉! 本を読んで覚えるのもいいけど、経験のある教師に教えてもらうのが一番手っ取り早いし、本に載っていないことも教えてもらえるし、良いことばかり!


「嬉しいです、よろしくお願いします、サイラス様」



誤字脱字報告ありがとうございます。感謝します。

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