第9話 1人目の友達
一輝(いつき=イッキ)には実の両親がいない。
里親は優しさ溢れる格闘家の男。
小さい頃から格闘技を教えこまれ、小学生になると実の両親の話も聞かされた。
礼儀正しく、人に優しく、明るく強い男、イッキはそんな男に育った。
イッキ「東条とは幼馴染なんだ。
でも昔はあんな性格じゃなかった。
俺は急激に変わっていく東条を、ただ見ているだけだった。
でも・・・今度はちゃんと話してみたい。
そんでもって昔みたいにもどりてぇ」
玲「もし戻れたとしても、今までしてきたことが全て許されるわけじゃないでしょ」
イッキ「また・・・いちいちなんなんだよ」
玲「言ってること全てが、現実見れてない感じ。
あんたが昔みたいに戻りたくても、あっちがどう思ってるかなんて分からないじゃん。
あっちが何か背負ってるのなら、あんたも一緒に背負って、そのうえで全部解決させてやる、とか具体的な目標を口にしなよ」
冷泉「おーい、そこまで」
冷泉「言ったら今の玲だって、自分の理想をイッキくんに押しつけてることになるぞ?」
玲「え・・・そうですか?」
冷泉「思いを伝えたり、分かりあうのは難しいものさ」
冷泉「なんにしても、自分が関係していることで、誰かが傷ついたりするのは、黙って見ていられないな」
冷泉「イッキくん、玲はもともと喧嘩が強かったわけじゃあないんだよ。
さっきも言ったけど、玲は北条として産まれ、もとより東条と関わりがある。
産まれながらに背負ってしまったものから、逃げずに向かい合うために、彼女は強くなろうとしている。
そして玲の覚悟は俺も認めている」
冷泉「その先で何があろうと、な」
冷泉「イッキくん、この先も東条と呼ぶあの少年を追いかけても、待っているのは思いもよらない大きな争いかもしれない。
今回は誠があの場にいたから君も助けられたが、あの時の不良達は君の身体の心配なんてしてなかった。
もしかしたら脳にダメージを受けて、深刻な状態にされていた可能性だってあるんだぞ?」
冷泉「君を大事に思う人がいるのなら、悪いことは言わない。
東条と関わるのはもう、やめといた方がいい」
イッキは黙って立ち上がり、そのまま玄関から出て行った。
庭にいた誠と目が合う。
イッキ「泣いてんのか?」
誠「ごめん」
イッキ「なんでまた謝ってんだよ、誠にはなにもされてねーって」
誠「したよ」
イッキ「あ?」
誠「初めて学校で喋った時、僕をいじめる奴がなんで優しくしてくるのか不思議だった」
誠「姉さんに惚れてるって噂で聞いたんだ。
だから家に来たのも、きっと姉さんに近づくことが目的なんだろうと思ってた」
誠「でも、街中で大勢に囲まれながら、話しているの見つけた時、こっそり聞いちゃったんだ」
誠「僕が思ってた君とは、全く違ってた」
誠「ちゃんと自分の気持ちを伝えたこともないのに・・・ちゃんと・・・気持ちを聞いたこともないのに・・・勝手に嫌なやつだって決めつけて・・・」
誠「守って・・・くれていたなんて・・・」
イッキ「分かったから!もう泣くなって!」
誠「本当に・・・ごめん」
イッキ「・・・俺もごめん」
誠「僕達・・・友達になれるかな?」
イッキはとびっきりの笑顔で応えた




