第1話 最強と呼ばれた男の誕生日
男は言った。
「3次元に時間を加えたものが4次元ならば、人間はすでにそれを体現している」
「それは、思い」
「思いの連続が今を作り上げている」
「そして、思い出という過去があるから、未来を作り出す事ができる」
「思い、は目には見えないが、それは、いつもそばにある、つまり俺たちは常に4次元に干渉しているんだ」
そう言った男は齢60を迎えたばかりで、バースデーパーティの余韻に浸っている真っ最中だ。
大きなデスクに両足を乗せて、リクライニングしながらタバコを吸っている。
テーブルの向こうには、豪華なソファに座り、頭をかかえている男がもう1人。
ソファの男「どうするんですか・・・」
齢60の男「何が」
ソファ「あと5年しかないんですよ」
齢60「・・・まーたその話か」
ソファ「・・・」
齢60「人はいつかは死ぬ」
ソファ「そうですけど、少しくらい御自分のために、好きに生きれる時間があっても良いじゃないですか・・・」
齢60「だからこうやって、パーティしたんだろ」
ソファ「そうですけど・・・」
齢60「もういいって、レイの気持ちだけで充分救われるよ。
もう利き手も使い物にならねぇし、仕事も終わりだ。
誰かの願いを叶え続ける生き方も、悪くなかった。
それもこれも、お前がいてくれたおかげだ。
感謝してるよ」
レイ(ソファ)「あ・・・」
齢60「ん?」
レイ「ディンさん、俺の願い・・・まだ言ってませんよね」
ディン(齢60)「あぁ!?」
レイ「前に言いましたよね?
俺が感謝する時が来たらなんでも願いを叶えてやるって」
ディン「あぁ・・・正直忘れてた。
にしても、よく覚えてたな」
レイ「約束、守っていただきますよ」
ディン「ていうかっ俺の誕生日なんだから、お願いを聞いてもらうのは逆なんじゃないか?」
レイ「いいですよ。何でもお願いしてください。
でも叶えてさしあげたら、こちらの願いもちゃんと聞いてくださいね?」
ディン「おー。そうくるか。
じゃああれだな、我が社の方針に沿わないとな?」
ディン&レイ「一度交わした約束は、必ず守る」
ディン「よーし。じゃあまずは俺の願いからだな。
よし、ゲーム作るぞ」
レイ「え?ゲーム・・・ですか?」
ディン「あぁ、でもな、ただのゲームじゃねぇぞ?」