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18 そんなことをしてもいいのはっ

「これがつまりなのか?」


 項より少し上のあたりに靄のようなものが黒っぽく映っていた。


「まあ、レントゲンなので平たくなってますけど、実際は奥の方にあるんですけどね。下垂体とかね、そういったところからいろいろな指令がおきてホルモンとか分泌されるんですけどね。そこがつまっているんですよ、彼。だから指令がうまく伝わらなくて、オメガのフェロモンの値が低くなっているんです。でも彼の体はちゃんと成長しているから、こんな風に子宮が出来上がっているんです」


 そう言ってモニターに再び画像が映し出された。


「ちなみにこれがベータ女性の子宮の画像」


 二枚の画像が並べられた。


「どうです?大きさはほとんど同じでしょ?彼の子宮はね、十分に成長しているんですよ。ただ、フェロモンが分泌されないから、発情期が来ないから、妊娠しないだけ」


 バンッ


 その瞬間義隆が机を強くたたいた。


「ど、どうしたんですか、いきなり」


 義隆の行動に医師は驚いた。もちろん医師だってアルファだ。名家一之瀬家お抱えの医師になれるほど優秀な医師だ。


「妊娠、する、のか?」

「ええ、しますよ。ただ、フェロモンとホルモンが正しく分泌されていないから、発情期が来ないんです。発情期が来ないということは排卵していないということになるので妊娠は望めませんよ」

「じゃあ、どうすればいい?」


 義隆の質問に医師は小さくため息をついてから答えた。


「このあたりのつまりを解消する手術をすれば一発ですが、難しい手術になります。なにより彼本人が自分のことをベータだと思って生きてきていますからね。オメガになるための手術なんて受けてくれる可能性はほぼないでしょう」


 できるだけさらりと自然に言ってみて、医師は義隆の反応をうかがった。


「他に方法は?」


 以外にも義隆が静かに聞いてきたので拍子抜けしてしまった。


「民間療法に近いのですが、不妊治療でも行ってはいます。簡単に言うとマッサージです。世間一般的にはリンパマッサージと言われています。体のむくみの解消や、高血圧の予防などでも行われているんですよ」


 そう言いながら人体の図柄をモニターに映し出した。


「血管とリンパ管の略図です。老廃物を取り除くためにリンパの流れをよくするマッサージをするんですよね。それによって子宮周りの血流が良くなり、オメガフェロモンの分泌を促すのではないかと言われています」

「どれくらいで効果が出るんだ?」

「人それぞれです。ただ間違いないのは相性のいいアルファのフェロモンを感じながらの方が効果が出やすい。ということです」


 それを聞いて義隆が黙り込んだ。


「接近遭遇しただけで彼は卒倒したのでしょう?それはつまり彼の中に眠るオメガが反応したということではありませんか?」

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