超能力
何時ものように午前7時過ぎにアパートの部屋から出る。
部屋から出た途端、アパートの管理会社の顔見知りの社員に声をかけられた。
「おはようございます」
「おはようございます、どうしたんですか? こんな朝早くから」
管理会社の社員は脇に退いて自分の後ろにいた女性3人を紹介した。
「今日から清水さんの隣の部屋に入る太田さん御一家です」
続けて社員は紹介した女性3人に向けて清水を紹介する。
「こちらは隣の部屋の清水さんです。
このアパートの最古参ですから分からない事がありましたら彼にお聞き下さい」
「最古参って大袈裟だなぁ、新築のアパートに最初に入居しただけでないですか」
社員に軽口を返し女性3人に挨拶した。
「清水です、宜しくお願いします」
「太田と申します、こっちは娘の詩織と香織です。
これから宜しくお願い居たします」
挨拶が済んだところで俺は会社に出掛ける事にする。
「すいません、電車に遅れちゃうので私はここで失礼します」
女性3人と管理会社の社員に頭を下げ会社に向かう。
実はちょっと前まで引っ越す事を考えていたのだが、止めた。
引っ越そうとした理由は、裸を勝手に鑑賞していた女たちが引っ越してしまったから。
勝手にっていうのは俺が透視能力を持つ超能力者だからだ。
透視能力と聞いて世の中の女性の裸体を見放題だと思った奴、お前の考えは正しい。
俺も中学や高校生の頃それを何度も試みた。
だけど俺の透視能力は微調整が効か無いんだ。
学校や電車の中で可愛い女の子の身体を見つめて透視しようとしても服だけでなくその女の子の身体まで透視してしまい、俺の目に映るのは人体模型のような筋肉や内臓に動くガイコツだけだった。
これじゃ宝の持ち腐れだと色々試みた結果、建物の壁を透視しながら女の子を見るとドンピシャで裸体を鑑賞できるだけで無く、微調整も出来る事に気が付いたって訳さ。
それで今のアパートなんだけど、太田さん一家が入る部屋に以前は可愛い女子大生の3人組みがルームシュアして入居していたんだけど、2ヵ月程前になんか揉め事が起きて1人が出て行ったあと残った2人も、2人では家賃の負担が大き過ぎたのか引っ越してしまった。
うちのアパートは一階にダイニングキッチンとリビングに結構広いそれぞれ独立してる風呂とトイレ、二階に部屋が3室とトイレがある家族向けのアパートで、単身で入居してるのは俺だけ。
それで女子大性たちが入居していた部屋の逆側の隣部屋、こちらに入居しているのはジャニーズ系の美青年で、俺はこいつが引っ越して来たときはリアルAVが観られると期待したもんだ。
それなのにジャニーズ系の美青年が部屋に引っ張り込んだのは男、それも中年のデブ。
その向こうにもう1部屋あって若い夫婦が住んでいるんだけど、若い奥さんの裸体を鑑賞してる時にデブの身体が重なって見えたときの悍ましさと言ったら……。
だから俺は此方側の部屋を透視する事は止めていた。
まぁそういう訳で引っ越そうと思っていたのだが、太田さん一家を見て引っ越しするのは中止する事にする。
40歳前後の美熟女の人妻に女子大生だと思われる美女と高校生くらいの美少女の3人の裸体を拝めるなら、引っ越しするなんて考えは捨てますよ。
ウキウキしながら定時で会社を後にした俺はコンビニで弁当とビールにツマミを購入し、それから帰宅。
ピンポーン
風呂にお湯を入れていたら呼び鈴が鳴った。
リビングのモニターを覗く。
モニターには隣に引っ越してきた美孰女の奥さんと40代半ばの旦那さんらしい男性が、ドアの前に立っているのが映っていた。
ドアを開ける。
太田さんの旦那さんらしい男性が挨拶してきた。
「こんばんは、太田です。
挨拶が遅れてすいません。
此れ私の実家で収穫された桃です、宜しかったら食べてください。
これから宜しくお願い致します」
挨拶し紙袋に入った桃を差し出して来る。
「御丁重にありがとうございます。
清水です、此方こそ宜しくお願い致します」
太田さん夫婦は挨拶を済ませて帰った。
ドアの鍵をかけ風呂に入り俺はTシャツとトランクス姿になる。
テーブルの上に買ってきた弁当と缶ビールにツマミを並べると共にティッシュボックスを置く。
隣の部屋の脱衣所を透視しながら弁当を食べビールを飲み終えた頃、3人の美女が脱衣所に入ってきた。
オ、3人一緒に風呂に入るようだ幸先が良いなぁ。
なんでサッサと裸体を透視しないかって言うと、やっぱりシチュエーションってのも大事だと思うんだよ。
最初くらいは服を脱いで行くところから鑑賞しなくちゃ。
服を脱ぎだした3人の美女を見つめて生唾を飲み込む。
「え? …………」
チクショー、やっぱり明日引っ越し先を探そう。
幾ら俺が透視能力を持っていても、透明人間の身体を見る事は不可能だからだ。