表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ダブり集

携帯電話の怪

作者: 神村 律子

 皆さんは「携帯電話」をお持ちですか?


 もしお持ちなら、このお話を読む前に電源を切る事をお勧めします。




 律子は携帯依存症とも言うべき状態で、片時も携帯を手放せないでいた。


 その理由。


「いつ、出版社から受賞の連絡があるかわからないから」


 あり得ない。


 彼女は小説の公募に投稿した事がないのだ。


 それなのに、毎日のように出版社からの連絡を待っている。




 彼女が携帯を手放せない理由。


 実はもう一つある。


 それは誰にも言っていない事なのだが、彼からのメールを待っているのだ。


 いや、はっきり言ってしまえば、「彼」ではない。


 只の同好会仲間。


 小説家を目指している仲間同士の集まりで、一目惚れした年下の男。


 相手は全く恋愛感情などない。


 もし愛情があるとすれば、それは「お母さん」のような存在。


 それほど歳は離れていないが、男の方はそういう気持ちだ。


 律子はそれに全く気づいていない。


 傍目には哀れにさえ見えてしまう。




 彼女はその2つの連絡相手のために、寝る時さえも携帯を手放さなかった。


 家族も彼女の行動を心配し、心療内科の受診を考えたりした。


 しかし、元来医者嫌いの律子は、どんなに家族が説得しても、病院に行ったりしなかった。


 また、過酷な減量をさせられると思っているのだ。


 今ではリバウンドし、着られる服がほとんどなくなってしまっている。




 そんな状態でも、彼女は携帯を放さなかった。




 しかし律子の携帯は鳴らなかった。


 彼女は携帯ショップに行き、携帯が壊れていると騒いだ。


 携帯はどこも異常がなく、どうしても納得しない律子に困り果てた店は警察に通報した。


 律子は警官にも食ってかかり、支離滅裂な事を言い続けた。


 彼女は公務執行妨害で緊急逮捕され、警察に連行された。




 留置所に入れられる時、彼女は携帯を没収された。


 律子は泣いて嫌がったが、警官は携帯を取り上げ、律子は留置された。


「私は携帯がないと生きて行けないの! お願いだから返して!」


 彼女は叫び続けた。


 しかしその願いは聞き入れられなかった。




 翌朝、律子は遺体となっていた。


 彼女の姿は、携帯で話しているようだったという。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 律子がかわいそうでなりません(>_<) 妄想や思い込みも、度が過ぎれば害になるという典型的な例ですね。 次作も楽しみにしています。
2011/03/16 15:23 退会済み
管理
[一言] 何だか久しぶりに神村先生のホラーを読んだような気が……。 でもこれ、どこかの話と繋がっているような……まぁ気にしないことにします。 ちなみに私、今時ケータイを持っていない希少な人間です。 な…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ