1.異世界への扉
1.異世界への扉
真夏の休日、俺は家でゲームに没頭していた。
実を言うと休日だけでなく、ほぼ毎日家に引きこもっている。
1年前ブラック企業に勤めていて、過酷な労働、パワハラ、人間関係に疲れ切って体を壊してしまったのだ。
辞めてからは、気が楽になったものの、実家に住み着いて転職活動もしていない。
働くことが怖くなって、無気力に過ごすだけの人間になった。
今日はいつもやっていた格闘ゲームは飽きたし、違うゲームでもしてみるか。
そういえば、前に海外サイトで買ったゲームがあったな。
なんてタイトルだっけな?
あ、思い出した。
「Old North War E」
変なタイトルだよな。
欲しかったゲームにセットでついてきたものだから、正直どんなゲームかは知らない。
だが、まずはやってみようということで、起動させた。
すると画面が真っ黒になって、フリーズした。
「あれ、おかしいな」
しばらく待っていると
画面がピコン!と表示された。
<< 転移しますか? >>
<< YES or NO >>
「は?転移って、、、バッカじゃねーの?このゲーム制作者演出ダサすぎ。中二病かよ。」
と嘲笑しながらも、YESを押してみた。
……………………………...
数秒たっただろうか。もちろん何も起きない。
「ほら、やっぱなんも起きねーじゃん」
と言って仰向けになって、寝ころんだ。
ブーーーン.....ブーーーン......ブーーーン
ん?何の音だ!?
音はテレビから聞こえる。
起き上がってテレビを見ると、画面が波打っているようにグニャグニャしている。
……….どうなっているんだ?
恐る恐る画面を触ってみると、指が画面の奥にスーーーっと入っていったのだ。
「うわっっっ!!」
思わず大きな声が出た。
なんなんだこれは。
テレビの画面をすり抜けるだと!?何の冗談だよ。幻覚でも見ているのか?
困惑しつつも、気になって俺はもう一度触ってみることにした。
……………...やはりすり抜ける。
さらに手を奥に突っ込んでみる。
みるみるテレビの中に入っていく。
そしてついに頭を突っ込んでみる。
上半身がすっぽり入った。
辺りを見回す限り、真っ暗だ。
怖くなって頭をテレビの外へ出そうとしたその時
<< ゴゴゴゴゴゴゴ!! >>
地震か!?こんな時に限って...!
しかも結構揺れてるぞこれ!
「あ、やばい!」
一瞬だった。足が浮いて、そのまま態勢が崩れて、テレビの中に吸い込まれるように入ってしまった。
「うわあああああぁぁぁぁぁ!!」
落ちる!落ちる!落ちる................っ!
真っ暗な空間だが、引力に従ってどんどん落下しているのはわかる!
これは危険な匂いしかしない!目をぐっと閉じた。
俺はニートのまま死ぬのか!
「クソ! クソ! クソオオオォォォォォォォォォ!」
................あれ、落下が終わった?
どうやらまだ生きているようだ。
全身のあらゆるところを手で触ってみるが、特にケガもなさそうだ。
ひとまず良かった。
さて、ここからどうするか。
だが、周りは何も見えなくて、真っ暗だ。
そうだ!スマホがポケットに入っていたはずだ!
救助を呼ばないと!
急いでポケットからスマホを取り出すが、どうやら電波が入っていない。
「クソっ!だが、懐中電灯代わりにはなるだろう。」
スマホのライトで正面の床を照らしてみた。
特に何もなさそうだ。
続いて、右側、左側、後ろ、スマホのライトを向けて明かりの先を見てみるが、本当に何も無い真っ暗な空間だ。
一体、俺はどこにいるんだ?
なんとかして脱出しなければ.......!
「誰かーーー!誰かいませんかーーー?」
「返事してくださーーーい!」
「おーーーい!おーーーーーい!」
誰もいない、か......
とにかく、歩いてみることにしよう。
............何も見当たらない。
1時間くらい歩いてみたが、本当に床以外何一つない。
このままだと本当にヤバイ..
喉も乾いてきたな。
とにかく、何でもいいから手がかりを見つけないと。
引き続き周辺を歩き続ける........
……………………………….
ダメだ.....やっぱり何も見つからない..........
だが、これ以上むやみに体力を削らな方が良いだろう。
少し体を休めるとするか.....
こんな未知の状況でパニックになって当然のはずだ。だが、体力が失われ、真っ暗な空間にいるため、次第に眠くなってきた。
ウトウトしていたその時、ズドン!!と大きな衝撃と音がした。
な、なんだ!?何か落ちてきたのか!?
場所はどこだ!?
とにかく、衝撃があった場所に行けば何かわかるかもしれない。
衝撃音は後ろから聞こえたから、後ろ側に進んでみるか。
スマホのライトを照らしながら、後ろに一歩踏み出したその時
「うわあああ!何か足にくっついたあぁぁ」
しかも生温かい......
ビクビクしながら、ゆっくりとその何かの方へライトを向けると、白い毛並みの小動物のようなものが目に映った。
なんだこれ?生き物か?
よく見ると若干動いているような....
その小動物らしき生き物へ顔を近づけてみると、顔面へダイブしてきた。
「うぎゃああああああぁぁ!」
慌てて引き剥がそうとするが、びくともしない。
この野郎......!
「離れろーーーーー!」
ダメだ、離れない。俺は一度心を落ち着かせた。
...........よし、生き物をしっかり掴んで手前へ一気に押し出してやる。
「おらぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
なんとか引き剝がせた。
「え..............」
引き剥がした瞬間、目の前の光景に驚いた。
真っ暗だった空間が真っ白になっている。そして、その生き物の姿もはっきりと見えた。
「こ、これは....なんだ?」
おそらく生き物だが、こんな生き物は見たことがない。
真ん丸な目に角が2本、白い毛並みに、お腹にポケットらしきものも付いている。
結構可愛らしい生き物だな.....
おそらく害は無いだろうと思った時、その小動物がガブっと手の甲を噛んだ。
「いってぇぇぇ!何しやがんだ!」
噛まれてビックリした俺は掴んでいた小動物を手放したが、なんと浮いているではないか!
そして何事も無かったかのような表情で、ぼーっと俺を見ている。
「マジで何なんだよ!意味わかんねえよ!」
ズキズキと痛む手を見るとしっかり歯形が付いて血も出ている。
「うーー、結構痛むなこれ.........」
ってあれ?手の甲を見ると、薄っすらと黒い円が浮かんできている。
「え、なんだなんだ!?」
さらに、その円の中にこの小動物らしき絵が浮かんできている。
いわゆる紋章というものだろうか。
さっきから理解が追いつかないことが立て続けに起きている。
この変な空間、見たことない小動物、そして紋章。
まさかとは思うが、本当にさっきのゲーム経由で異世界転移したのだろうか?
俺はこの謎の小動物に話しかける。
「おい!俺は異世界に来たのか!?お前は誰だ!」
「キュピ?」
「キュピ?じゃねえよ!ちゃんと答えてくれ!」
「キュピピ!キュピピ!」
ダメだこりゃ......
ここからどうすれば......
ん?この謎の小動物が前進し出した。
行く当てもないし、ひとまず着いて行く。
この謎の小動物の進む先に目をやると、何やら真っ黒なドアらしきものが見える。
「まさか外への出口か!?」
さっきまで何も無かったはずなのに、急にドアが出現していることに驚きつつも、俺は慌てて走り出した。
ドアの前にたどり着いた俺は謎の小動物とともにドアを開けて、その先へ進み、脱出に成功した。




