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月光

作者: 工藤まなみ

ピアノソナタ第14番嬰ハ短調 作品27-2 『幻想曲風ソナタ』("Sonata quasi una Fantasia")は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが1801年に作曲したピアノソナタ。

『月光ソナタ』という通称とともに広く知られていますが『月光』という題名に略して呼ばれる事もあります。


黒森 冬炎様の劇伴企画参加作品です。BGMにこの曲を流して読んで頂けると嬉しいです。

夜の空を眺めて今までの出来ごとを振り返る。


外の庭では沢山の虫が歌を奏でている。


それを雑音と他の国の人達は感じるそうで、日本人とポリネシア人以外、虫の音はうっとうしい雑音でしかないそうだ。こんな夜は、日本人で良かったと思いながら窓辺で虫の音色を聞いている。

日本人は虫の奏でる音色を声として脳が認識するそうだ。だからこんなに心が落ち着くのだろう。

そっと囁くように、時には激しくロック調になったり、聴いていて飽きない。


空には雲一つ無く、美しい星達がその美しい輝きを競い合っているようだ。夜空にはミルキーウェイが帯を夜空に描ける。その中でひときわ大きな輝きを放つ恒星を目で追ってみる。星座が出来上がる。その星座の物語を思い出す。神だって意外と人間らしいじゃないか、喧嘩したり、嫉妬したり、他の女を寝取ったり‥‥‥。殺し合ったりもする。


私は大切な人を亡くしてしまった。そう今はその感傷に浸っている。君は、最後は笑顔だった‥‥‥。虫たちは私を笑っているのだろうか? それとも励ましてくれているのだろうか‥‥‥。


君と一緒に眺めた夜空はこんなに冷たかったっけ。月灯はこんなに寂しかったっけ。隣にいつも居た君はもう居ない。心がかき乱される。そしてこんなにも大切だったのだと思い知らされる。


月灯に浮かぶ君の姿、今でも覚えている。私を見るその優しい眼差し、柔らかい唇、夜風にサラサラとなびく黒髪‥‥‥君の匂い。忘れるものか。君と過ごした日々は宝物だ。いつか君の元へ逝く日は沢山の君の知らなかった物語を聞かせよう。


心に空いた空洞は埋まる事はなく、また朝はやって来る。今は、この夜の暗闇の中でなら頬を流れる物も隠してくれるだろう。夜風がそれを拭いてくれるだろう。色を無くしてしまった景色も、いつか私に再び鮮やかな景色として戻る事はあるのだろうか。この暗闇で この暗闇で 私はこれからも過ごして行く。この暗闇の中で君を想いながら‥‥‥。

この曲は伯爵令嬢ジュリエッタ・グイチャルディに献呈されたものであると多くの書に書かれています。ピアノの教え子だった彼女とは身分差ゆえその恋は敵わなかったと言われています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読んでいて、とても切ない気持ちになりました。 でも悲しみばかりではなくて。虫の音や星々の輝きが。主人公を、主人公の想像通り見守っている感じが伝わって来て感動しました。
[良い点] 主人公は大切な人を亡くしてしまって、それでも悲観的なことばかり考えずに、「いつか君の元へ逝く日は沢山の君の知らなかった物語を聞かせよう」と、どこか心の強さが現れる独白をしていることに感嘆し…
[良い点] 「劇伴企画」から参りました。 虫の鳴き声、夜空の星の輝き、そして月灯に浮かぶ君の姿 、と思いを馳せる様子が『月光』の曲を伴って浮かんできました。 寂しいけれど美しく、切ないお話でした。
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