SFC 天地創造
SFCのマイナーRPGをやってみた感想文です。
本作を一言で例えるなら、『SFC 聖剣伝説2』の大人向け版といったところだろうか。
ゲームシステムは基本的にゼルダの伝説や聖剣伝説と変わらないが、ストーリー展開が秀逸で、尚且つ「こんな難解な伏線、子どもに分かるのだろうか?」と疑問に思ってしまうほど頑固で硬派なストーリー展開に終始している。
以下、ネタバレを含む大まかな本筋のストーリーです。
物語の始まりは、とある小さな村から始まります。
本当に穏やかで平和な村としか形容詞が見当たらないような、のんびりした村に主人公の少年は暮らしています。ただ、主人公は少しわんぱくで、近所の家で飼っているニワトリを追い回したり、近所の老人が池で釣った魚を逃がしたりして怒られている悪ガキです。
でも、そこで初っ端から少しプレイヤーの不安を煽るような台詞が登場します。
主人公含め、その村の人たちが、ここが一体どういった所なのか、自分達が一体どうして、いつからここで暮らしているのか分からないといった感じの発言をします。ただ、なんとなくみんなボーっとしている感じで、平和を謳歌しています。それは主人公も同様で、近所に住む少女に恋をしたりして、穏やかで平和な村の暮らしに最早、疑問も感じなくなっています。
そんなある日、戒律に厳しい村の長老が村の外に出掛けて留守の日に、主人公を含めた村の悪ガキ達が集まって、とある『肝試し』を決行しました。
その肝試しとは、長老の家にある『開かずの扉』を開けて、その先に何があるのか確かめて来るというものでした。長老は厳しく、誰もが恐れるような人だったため、悪ガキ達も怯えており、ましてや開かずの扉を開くなど皆逃げ腰でしたが、悪ガキのリーダー的存在だった主人公は「オレが開けてやる」と言ってその扉を開けて、その先にあった地下へと続く階段を無鉄砲にどんどん降りていきました。
すると地下には宝箱があって、主人公がその宝箱を開けてみると、ピンク色のボールに羽が生えたような変な生き物が出てきて、主人公に馴れ馴れしく付いてきました。
主人公は訳が分からず、とりあえず皆が待つ部屋まで戻ってみると、部屋で待っていた友人達は皆、石になっていました。それを見て慌てて長老の家から出てみると、村の住人達も全て石になっていました。主人公が途方に暮れていると、長老が村に戻ってきて状況を察し、唯一動いている主人公を叱ります。
ここで選択肢が出ます。
一つは『このままで良いなら、この村も住民達も永遠に保たれる』という選択肢。これを選ぶとここでエンディングです。
もう一つは、『再び村の住人達を元通り動かせるように戻す』という選択肢。こちらを選ぶと本編が始まるのですが、ネタバレですが、この村は幻想の村であり、現実世界を復元してしてしまうと村人達が一時的に元に戻っても最終的には消えてしまい、村そのものも全て消えて無くなってしまいます。このあたり、ドラクエ6のストーリー設定と類似していますね。
これは最序盤の選択肢であり、ゲーム本編を始めるには当然、後者の選択肢を選ぶ必要があります。
主人公は、とりあえず好きな女の子だけでも石化を解いてあげたいといった感じのノリで、長老に頼んで封印を解く旅に出ることになります。ここで長老から、村の外にある6つ(+ 隠しダンジョン2つ)の封印の塔に行って、それぞれの封印を解いてこいと言われて旅立つのですが、先述の通り、この村は幻想の世界なので主人公はこれまで村を出たことが一度もない事に気がつきます。村の外がどうなっているのか考えてみたことすらも無かった自分に気がつきました。
それでも、村人達を救うためにとりあえず村の外に出てみると、そこは未完成の異空間。空に地面があったり、歩いている地面は溶岩が流れていたり雲があったり、太陽が無かったり、全てが未完成というか雑に出来ている世界でした。そんな世界を歩いていると、塔があって、それぞれの塔の封印を解いていく訳ですが、それぞれの塔の封印を解く毎に、異世界の惑星に異変が起こります。異世界の惑星は、初めは水の惑星なのですが、塔の封印を一つ解く毎に一つづつ大きな大陸が海から浮上し、陸地が出来ていきます。しかし、主人公は異世界で起きている異変に気が付くはずもなく、ただ村人達を救いたいという想いだけで次々と塔の封印を解いていきます。全ての塔の封印を解くと異世界の惑星は地球の姿となります(隠しダンジョンの封印はムー大陸とアトランティス大陸)。全ての塔の封印を解き、村に戻るも村人達は石になったままです。そして、長老に連れられて村の外にある巨大な穴へと行きます。その穴は地球へと続くワープホールで、かつて封印されて何も無くなってしまった地球を元通りに再生してこいと言われます。
ただ、ここでも選択肢が出て、地球を再生出来たら村人達の石化は解けるが、それは同時にこっちの世界も消えるため、もう永遠に村人達に会う事は出来ないという、この時点では何故か分からない伏線が張られます。地球に行かずにエンディングという選択も出来ます。
以下、ストーリーの核心ネタバレを含みます。
地球は人間による環境破壊が進み、それを見かねた神(長老)が一旦フリーズ(封印)していました。スタート地点の主人公達が暮らす村は神が作った村で、かつての荒れた地球の中でも救済に価する一握りの人間の意識を救って住まわせている村でした。そして長老は、またいつの日か地球を動かさなければならないと常々思っていたところでした。ただ、現実と夢とは両立せず、現実の地球を再始動してしまうと、神の村も、せっかく救って平和な暮らしを与えた人間の意識も消えて無くなってしまうため、どうして良いか分からなくなっていました。そのため、地球再始動のため村を消し去るスイッチとなる、主人公が開けてしまった宝箱、パンドラの箱には誰も近づかないよう戒めていた折、悪ガキの主人公がパンドラの箱を開けてしまい、村人達がフリーズして(石になって)しまい、地球再始動へ向けて進まなければならなくなってしまいました。
主人公が地球に降り立ってからは、ある程度王道なストーリーです。
始めは何もありません。どこまでも続く褐色の大地。先ず始めに植物の封印を解きます。すると大地は植物に覆われます。次に魚、鳥、動物、そして最後に人間の封印を解き、かつての地球が復元されていきます。ここで印象に残る仕様があり、始めは野生児のような状態で地球に降り立った主人公は、復活した植物や鳥、動物などと普通に会話が出来ますが、やがて人間が復活して理性や知性、人間性などを身に付けていき、人間らしくなっていくにつれ動植物と会話が出来なくなっていきます。初めのうちは誰もいない世界で励ましてくれたり楽しく会話してくれていた草木たちが、何を言っているか分からなくなってくるセリフコマンドはリアリティがあって結構怖いです。
人間が復活してからのストーリーは、ゲームシステムを含め少し変わってきます。
基本的なアクションRPGとしての操作は変わらないのですが、それぞれの町に住む人たちのアイテム交換などのお遣いをこなしていき、電話や飛行機などの発明を手伝って、町を発展させていきます。サブイベントで、ある村で、主人公がスタート地点の村で恋をしていた少女の実体に出会い、その少女が置かれている不幸な環境に、現実世界の地球は再生しない方が良いんじゃないかと悩んだりしたりする事もあります。
そして、人間の文明が神によって封印される前の状態ほどに再興されると、空から長老(神)の声が聞こえ 「もう良い。良くやった。こっちの世界は消える。お前はそっちで暮らしていけ。」みたいな事を言われます。主人公は地球で知り合った冒険家と組んで、自分が最初に通って来た異世界に通じる大穴を世界中探し回って見つけ出し、最初の村に戻ります。
すると村は住民諸共消えかかっていて、村に残っていた長老によって主人公も神の住む異次元へと引っ張り込まれます。
ここでラスボスとの対決。ラスボスは長老です。
ラスボスを倒した後、ここまで一緒に旅をしてきたピンクのボールに羽が生えたような生き物が正体を現します。この生き物は幻想の世界の創造主。この幻想の村はこの創造主がいる限り維持出来るが、神がいなくなってしまったから住民たちは消えてしまうとのこと。
主人公は地球に行って実体を得てしまっているので消えないで生きていく事も出来るとのこと。神と人間がいつまでも一緒にいる事は出来ないので、この後すぐに消えてもう二度と主人公の前に現れる事は無いと言い残し、ピンクボールな創造主は消えてしまう。
そして最後に創造主の「地球を再興してくれた礼に、一晩だけ夢の中でこの村の人たちに会わせてやる」という声がどこからともなく聞こえてきてくる。
主人公が誰もいない自分の家に帰り、ベッドで眠りに就いて気が付くと、スタート時と同じように村のみんながいて、みんなスタート時と同じようにのんびりと話しをしてくる。
スタート時の村人達の会話の内容に違和感があったのは、この時点と繋がる伏線となっており、この時点ならば辻褄が合う。
恋をしていた少女の元に行っても普段通りののんびりとした会話しかせず、プレイヤーが満足したら再度家に戻って眠るしかない。
目覚めると、誰もいない。
そして 「また一人ぼっちか」という台詞でエンディング。
エンディングの後に少しだけムービーがあり、地球に住む実体の方の恋人の家が映され、深夜にドアをノックする音が響き、起きてきた少女がドアを開けて完結。
まあ、ハッピーエンドなんでしょうね。
このゲーム、武器やアイテムの種類が少なく、必殺技もコマンド入力だったりするなどシンプルですごく遊びやすいゲームだと思います。ゼルダや聖剣伝説のような見下ろし型ARPGではありますが、アクション操作はFCの『くにおくん』ダウンタウンシリーズに近い感触があります。また、HPもゲージやポイントではなく数字表示で、敵を倒して経験値を得てレベルアップしていくRPG要素も強いです。
SFC末期の作品だけあってドット絵の書き込みも非常に緻密で完成度が高い。
これだけの作品が何故クソゲー寸前の扱いを受けていたのか、その問題点が無いわけでもないです。
最大の問題点は、主人公を含め大きめなキャラの動きが人間的でよく動くということ、これは評価すべき点でもありますが、敵から攻撃を受けて痛がって仰け反ってから体勢を戻すまでの時間より敵の攻撃アクションのほうが短時間であるというのが致命的な設定ミスです。ほんのコンマ何秒かのこの設定ミスがあるおかげで、敵は飽きるまで、又は主人公が死ぬまで連続攻撃を加え続ける事が出来てしまいます。主人公が体勢を立て直す前に次の攻撃を撃ち込めるので。そのため、ザコ敵にですら先手必勝で攻撃して、一撃で倒せないなら反撃を受けないように遠くまで飛んで逃げておくという戦闘スタイルが必須となります。
まあ、リアルと言えばリアルなんですが、反撃されたら終わりという打たれ弱い主人公というのもどうかと思います。
あとは、それほど大きな問題点は無く、強いて言えば、後半になって飛行機などの主要なアイテムさえ開発出来れば、あとは都市を大して発展させなくてもエンディングに向かえるのですが、最後まで発展させた都市や発展途上の状態でしか見られないイベントや、立ち寄らなくてもよい村でのサブイベントなどにこのストーリーの真核に迫るような伏線が多く含まれていて、それらの伏線を回収せずに本編を終えても、いまいちなんの事だか分からないままだったりするところでしょうか。エンドロールのバックで伏線のその後がムービーで流れたり、真エンディングでの少女の家での出来事ですら、本編でその少女に会わなくてもクリア出来てしまいます。
結構面白いゲームだと思いました。