第一小話 : カインを可愛くしよう!選手権
パン屋の看板娘のミルちゃんは
カインより一個下の14歳だ〜♪可愛いぞー♪
朝ごはんの後、美少女カインは制服をカバンに入れる。丸帽子とエプロンも入っている。靴もキレイに拭いたし。爪もよし、髪もよし、汚れなし!
チェック完了。
「バイトですね、カイン(ニッコリ)」
「はいっ、バッチリです!」
セレナが「ふふっ(ニッコリ)」っと笑っている。何だかいつもより、微笑みが笑いになっている?
「気をつけて行ってらしゃい♪(ニッコリ)」
カインの右耳の髪をそっと撫でるセレナ。
その手には赤い花が握れれていて、今はもう持っていない。
「行ってきます。セレナさん!」
荷物を持って、小屋から出ていくカイン。
「よく似合ってますよ♪(ニッコリ)」
戸を閉めた後、セレナの声が聞こえた。カインは考える。
誰に言ったんだろ?
今日はセレナさんがお留守番の日で、バイトに行くの僕が最後だったハズ?僕に?いつものカッコだけど?・・・そっか。シオンだ!精霊のシオンがいたや♪
あんまり会った事無いんだよね。人見知りなんだって。
と、そんな結論を身につけてバイトに向かって行くと、その途中でラダムが立っていた。今日は一段と夜冷えるから、と。毛糸のマフラーと手袋を貸してくれる。もっこもこで、手袋の内側に丸い模様がついている。マフラーは先の方に、三角の大きな玉になった毛糸が付いている。くるくる回してキュッと縛る。
「ありがとうございます、ラダムさん!」
山小屋から今朝行った井戸を通り、村の中心に向かう。洗濯中の奥さん達に挨拶する。
いつもと同じ「おはよう」なのに、今日はみんなすごい笑顔だった。井戸を抜けたら奥さん達が「可愛い」ってきゃあきゃあ話している。
そりゃね。今の君はね。
「おはようございます!」
「ああ、おはよ・・う。カイン」
戸惑う、お肉屋のおじさん。
「おはようございます!」
「おはようさん、カイン・・くん?」
こっちも戸惑う、金物屋のお兄さん。
「おはようございます!」
「おはよ・・・デート?」
ふふ。ま、そうなるわな。
「バイトに行きますけど・・・?」
「あ・・・だよねー」
カインの返事に苦笑いな、八百屋のおばさん。
なんか変。と、思いつつも足は止めないカイン。
馬車の準備してる御者のおじさん、服屋のお姉さん、雑貨屋の女の子。みんなが彼を2度見している。
そりゃするよね、いつもと違うもん。
武器屋のバイトで荷運びしてるダイオ君は、カインの方を見て、荷物落としそうになってる。
「おはようございます!今日も一日よろしくお願いします!」
バイト先のパン屋さんに着いたので挨拶した。
「おはよ!カイン・・ちゃん♪」
パン屋の看板娘、ルミちゃん。
「おう、おはよう。カイン・・ちゃん?」
「あらあら♪おはようカインちゃん♪今日は看板娘が2人ね♪」
パン屋のご主人と女将さん。
「あのー・・・」
3人に、聞こうと思って声をかけたいが。なんて聞けばいいの?と、悩むカイン。
僕、今日いっぱい見られてて?自意識過剰な子じゃん!
ダイオさんが僕を見て、荷物落としそうになってた?たまたまじゃなくて?
なんて聞けば正解?なんて言うの?何言うの?
んーんーんー・・・
「カインちゃんどうしたの♪(ニッコリ)」
「なんで「ちゃん」なの?」
聞けたのは、これだけ。ルミちゃん、即答。
「んー♪可愛いから?」
「悲しいけど、僕知ってるよー?」
「んー・・・なんて言えばー・・・約束だしー」
頭の中をいっぱいの疑問で溢れさせ。「ルミちゃん・・・」と、情けない声を出す。
『ちょっと待ったぁ〜!!』
店の扉が勢いよく開き、シーネとガウが飛び込んできた。
はい!意味がわかりません。
『おー♪花にモコモコ肉球に首元リボンかー♪」
そう、花に猫手肉球にでっかいマフラーリボン。
「似合ってるよー♪カイン♪」
似合ってるよ、カイン君。
「あ"ー!!」
カインはセレナが触った右耳を触る。手袋でよく分からない。
手袋の内側を見るため、手の平を開いてよく見ると、肉球型のモコモコが付いていた。
手袋を外して右耳を触ると、何かあるのがわかった。フサッとしたものが・・・ある。恐る恐る取ってみると 、見事な赤い花が咲いていた。そしてマフラーの首の後ろの縛り目を前に持ってきてその縛り目を見たら、見事なリボンになっていた。
なあんてこった(笑)
「セレナさんっ!?ラダムさんっ!?シーネさんっ!!ガウっ!!賭けですか?罰ゲームですか?」
『うんにゃ♪』
カインに詰め寄られた2人は、首を横に振る。眉間にシワがよったカインを見て、2人が揃って口を開いた。
『カインを可愛くしよう選手権』
「第1走者セレナ♪」
「第2走者ラダム。」
2人は指でピースを作り頷き合うと、満面の笑みで声を揃える。
『模擬戦審査員、判定。勝者ラダムー♪』
2人は満面の笑顔のまま、盛大に拍手をする。
「はいっはーい♪それって私も参加していいの?」
ルミちゃん?
『もっちろん♪』
「やったー♪カインちゃんがんばろーね♪」
あははは♪カインの顔が「やだ」になってるよ♪
首を横に振るカインをほっといて、3人は話を進める。おじさんとおばさんも加わり、村のイベントになりそうだ。
・・・・すごぉく、張りきってる(笑)
「イヤです。シーネさん、ガウ」
「えー。冬は暇だから〜なんかしたいって言ってたじゃん♪カイン♪」
「言いましたけどー」
カインは後悔している。
冒険に出れなくて、バイトと筋トレの毎日で。筋トレは毎日するよ?もちろん。シーネさんに愚痴るんじゃなかった・・・と。
「カインを可愛いくしよう選手権」
『がんばろー♪』
『おー!!』
村ぐるみが決定した。
パン屋さんのおじさんはこの村では顔役で、発言権が強い。
カインに逃れる道は無い。合掌。
カインを可愛くしよう!選手権開催です♪
駆け足で行ってみよー!!(笑)