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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

黄金の雫

作者: きつね耳モフモフ

私の母は死にました。そして私も死にかけです。

 母が亡くなった。元々政略結婚でほったらかし気味だった母が

産んだ私が女の子だったせいもあってか父は私にすら興味が薄く、

母は後継ぎを産む間もなくして流行病であっけなく逝った。

 父はますます私に興味を無くしてしまったのか、

王都とやらの仕事にかまけて以前よりさらに寄り付かなくなり、

それをいい事に私は屋敷中の者達からつっけんどんにされる様に

なった。

 流石に身体的な傷を直接与える事には躊躇したのか、

冷たい掃除した後の濁った水が掛けられるのはほんの序の口で。

「遊び」と称して散々追い掛け回した挙句にご飯の時間に遅れた

からとご飯抜きだなんて陰湿極まりないったら。

 それでいて父への報告だなんて嘘八百も言い所で、物覚えが

悪いからと鞭打ちの刑とか段々過激になって来た気配すらあった。

 私の持ち物なんぞはとっくの昔に取り上げられた。

お気に入りの縫いぐるみから温かい寝間着やベッドや寝室まで。

やりたい放題の彼らは私の容姿を貶す事だなんて朝飯前だ。

しかも私の母が死んだのは私のせいだなんて事まで言い出した。

 ・・・私が一体何をしたというのだろう。

 そして今日も庭の隅で濡鼠にされて家に帰り着いた私に

待っていたのはやってもいない台所からの窃盗の犯人扱いだった。

 「違う」と言ってしり込みした私を折檻しようとした挙句、

逃げたら逃げたで皆で追いかけまわして物置小屋だかに閉じ込めて

真犯人な子が扉の外から私を嵌めたと蔑んで去ってくというオマケ付き。

 あぁ・・・お腹が空いたなぁ。もしも私が「男」に生まれてたのなら

私の扱いは違っていたものになっていたのかな?

それにしても盗まれたとかいう「黄金の雫」っていったい何だったんだろう?

「隠し味」とか言っていたけれど、私は現物なんぞ見た事もない。


御免なさい。お母様。・・・私、貴方との約束 守 れ そ う に


 その日、その国に激震が走った。王家を支えて来た伯爵家の一つが

解体される事になったのだ。別に王家に牙を向いた訳ではない。

詳細こそ伏せられたものの、有能かつ忠誠心の塊とまで称されて来た

伯爵はその領地を大幅に削られたばかりかその立場を失った。

 削られた領地と没収された資産の一部は一人娘が相続するらしい。

デビュタント前のまだ幼い娘では荷が重すぎるとして、

王家が選んだという後見人が後ろ盾として付く事となったと云う。


 結局の所、私の母の死は・・・・「病死」ではなく「毒殺」だった。

父は最後まで関与を否定してたみたいだけれど、私の扱いを鑑みれば

そう邪推されても仕方が無い程には領地をほったらかしにしてた訳で。

もし、王家が遣わした「監察官」とやらが私の置かれた現状を怪しみ

騎士団と共に私の「保護」に乗り出してなければ私の命もまた無かったろう。

  なにせ殺害の実行犯は家のコック長だったのだから。

 そう。私の母は例の「隠し味」だとかいう「黄金の雫」によって殺された。

「監察官」達が屋敷に踏み込んで来た時には「現物」は台所には残っては

居なかったけれど、盗んだ人の手元にソレはあったからもはや隠しようも無く。

 危うくメイドな姉に盛られそうになってた第2の被害者な子は摂取する寸前で止められ

結局普段よりも手厚い看護を受けられる事になったらしい。

 それにしても。一体誰が「監察官」に私の現状を告げ口したのだろう。

屋敷の者達はそれこそ一蓮托生な筈だから、例え買い物に出たとしても

私の現状を外部へ漏らすだなんてヘマをする訳も無い筈なのに。

 今、私の手元には母の遺品の一部が戻って来ている。宝飾品やらは知らない間に

売りさばかれたりしてて大分減ってたみたいだが、その中には本来ならありえない

筈の物まであったのには驚いた。

   いや、それは・・・私の記憶違い、だったのだろうか?

ピンクリボンが巻かれた母から私への最後の贈り物は、私の目の前で

これ見よがしにズタズタに引き裂かれてゴミ捨て場へと捨てられたと思ってたのに。

それでもその子は私の手元に戻って来た。もっと幼い頃の私のお気に入り。

 私が屋敷に勤めていた彼らに会う事は2度と無いだろう。

伯爵家の顔に泥を塗る形になった彼らに再就職先があるのかは知らないけれど。

それでも気になるのだ。私の現状を告げ口してくれたという「その子」が

一体誰だったのかに付いて。

―少なくとも私にはその子の心当たりは無いのだけど。―

 ふわもこ金色毛並みの可愛い狐の縫いぐるみは私の部屋の枕元で何も言わず、

今日もつぶらな瞳で私を見守ってくれている。

「黄金の雫」の正体は「蜂蜜」です。コック長が最初から殺害目的で盛ったのかは永遠の謎ですが、彼だけが食事にそれを盛れる立場であった事から実行犯とされました。父親はまぁ・・・配下に対する監督不行き届きという事でざまぁされてます。

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