一口サイズの話
アケビは町に来ていた。
一口に町と言っても、村から東海都までにいくつかの町があった。どの町に行ったかは定かでない。
だから先ずは一番近いところの村に攻め入ることにした。
とはいえ一口に攻め入ると言っても、隠密行動であるため、アケビの攻めは潜在的攻めであった。特段攻める必要はなかったが、仲間たちを置いて1人でイヴを救い出すというミッションは、少しでも守りに入ると動けなくなるとアケビは感じていた。
一口、一口。
チョコアイスと小籠包は一口で食べれた方がいい。
一口、一口。
ロバート・デニという俳優は、段位のように名前の後に一口とつける。
一口、一口。
あるコンビニは、他の店よりも一口損らしい。一口ソン。
歩いている最中ずっとこんなことをぶつぶつ言いながら歩いた。最中。一口最中。
「一口、何か一口」
通りで乞食に声をかけられる。この辺りはスラム街で、貧富の差が激しい町の中の、貧の部分を背負っていた。
「一口って言うても、いま食べもの持ってないねんよなあ」
というと、乞食は、
「与えよ、さらば与えられん。ありがとう、ありがとう」
と言って、満面の笑みでアケビを見た。
アケビは食糧を与えていないにも関わらず、乞食は礼を言った。どういうわけだ。
考察すると、2つのパターンが導き出された。
1つは、宗教。もう1つは、失語病である。ふらっと入ったひとつめの町で、どうやら当たりを引いたらしい。アケビは、町の中心の方にある、高いビル群を見上げて、小さく息を吐いた。




