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喋ったら、死ぬかも知れない。だから俺は、喋りまくる。  作者: 中田翔子
政治と保護

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23/51

擁立

村長の読みは少し外れていた。

町の人間は、まだ失語病のメカニズムをまだ掴んではいなかった。

つまり彼らは、イヴに特別な力があり、それによって病の進行が止まっているのだと予測していた。

町は、イヴを言語再生特別職に任命し、行政で囲うことを決定した。

さらに病院での隔離を解き、再び他の町への往来を可能にすることで、他の町にも病が発症するよう仕向けた。

イヴを囲うことにしたのは、町の求心力を高めるためである。

週に一度のイヴの高座には、病に罹っているかどうかに関わらず、毎回数万人の人が訪れ、みなイヴの言葉をありがたがった。

素人の世間話のために、巨大なホールを貸し切るというのは異例のことだった。


イヴの高座は、次第に話題となり、他の町からも多数来訪者が現れた。

そこには当然患者も大勢いるため、そのスパイラルはさらに勢いを増していった。

また、週に一度の高座とは別に、感染した町の企業の重役や政治家向けのサロンも頻繁に開かれ、町は一気に潤っていった。

なんたる。なんたる悪どさであろうか。



一方で村は、考えあぐねていた。

イヴの噂は村まで届いていた。もしかすると、これもイヴの幸せなのかもしれない、と村長は諦めの感情を抱いていた。

しかし、幸せなのかどうかというのも、まずはイヴの高座を聴いてからだ、とアケビは思っていた。

でもどうやっても村から出る方法がない。

イヴは特例が通る唯一の存在で、その他の人間は外に出ることができなかったから10年以上も村に閉じ篭もる事になったのだ。


そもそも国は何をやっているのだ。

あれだけこの村を隔離しておいてからに、町ではイヴが神格化されつつある。そしてその噂は当然国も承知しているだろう。

いや動かないのは当たり前だ。

なぜなら、国が動かないのは、町で病が蔓延していることが顕在化されていないからなのだ。

明らかになると一気に規制され、そんなに予算があるのかは不明だが、きっとこの村同様の処置を受ける事になるのだろう。しかしまだ顕在化されていないとなると。


アケビは考える。

そうだ、イヴさえ連れて帰ることができれば、町は全てが瓦解するのだ。イヴを連れて帰り、村で病が発症したと国に申請してしまえば、町は取り返すことが出来なくなる。


しかし。それはイヴの将来を奪うことだ。せっかく今、外に出る権利を得ているのに。きっと村長もこのことに頭を悩ませているのだろう。

いや、それでも。それはイヴに直接確認すべきことではないのか。相手のことを勝手に想像して、勝手に理解した気になって。そんなのはただの無責任だ。

とにかくイヴに会いに行かなければ。イヴに。


「アケビー。入るよ」

襖の向こうからタオの声がする。

「名を名乗れい」

「ゴトウタオよばか。入るわよ」

タオが部屋に入ってくる。


その時。フラッシュバックのように蘇ってくる光景があった。


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