正義感強い人は早死にする
「お、お嬢ちゃんどうしたんだい」
「きゃー何この子かわいい」
と言って話しかけてくれたら楽なのだが、町の人間は案外他人に興味がない。
偽ブランドを探そうにも、そもそも本物と似ているから偽物なのだ。偽物を見抜く主眼がイヴにはなかった。ブランドとは無縁の生活をしてきたからだ。
「そもそもイヴはブランド物がわかるの? 」
タオがアケビに聞く。
「いやわからんやろ」
アケビはそっけなく答える。そっけない。
「じゃあわざと転んで助けてもらうとか」
「それは良心が痛むやろ。助けてくれた人に移すなんて」
「でも他に方法なんて」
イヴはひた歩く。
苦しみを背負ってきたイヴ。
その苦しいという感情を知らずに育った不幸。
心配されたことはない。
優しい声をかけられたことはない。
そんな時だった、アケビと出会ったのは。
街を練り歩き練り歩き、練りすぎて赤黒くなった練り消しのようになる。
まだまだ暑さの残る季節で、水分もないイヴは、その場で、音もなく、倒れた。
都会の人間は、病人には優しい。
倒れた人を見つけると、とりあえず群がる。
大半はそこで誰かに委ねるが、やはり正義感の強い人というのもいて、そうした人はやはり経験があるのか手際がよく、救急を手配したり応急処置を施したりする。
病室。
若者は、診察の結果熱中症だったことや、ここは町の真ん中にある大きな病院であることを伝え、何か買ってこようかと気遣いをみせる。
それから、はっとして、サチという自分の名前を紹介した。
「女みたいな名前だろ? 」
と言い、少し笑った。
イヴは下を向いて微笑んだが、記憶を遡って戦慄する。
頭に冷んやりとしたものを感じて、だんだん身体の感覚が戻ってくるのを感じる。首の周りは濡れている。
「……。丈夫。丈夫、ぞ。……大丈夫だぞ」
ずっと誰かが声をかけ続けてくれる。そんなに熱心に心配してくれたら、安心してしまう。
「大丈夫だからな。もうすぐ救急くるから」
「……うん」
目は開けなかったが、小さくそう言った。イヴは確かに言っていた。
初めて会話した相手が、不幸にも見舞いに来ていたその正義感の強い、サチだったのだ。




