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喋ったら、死ぬかも知れない。だから俺は、喋りまくる。  作者: 中田翔子
テロ計画

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待ちブラ

「しっかし、ぱちモンのブランドバッグ持ってるやつってどういう神経なんやろな。ブランド物は、質が良いから解る。ノーブランドも、良いものやったり、安かったりするからこれもまた解る。ぱちモンのブランドって結局は品質も良くないのに余計なロゴとかついててかえって不恰好やと思うんやけど」

みたいな話をしている。


「結局は他人からどう見られるかしか考えてないんやろな。あるいは偽物摑まされたシンプルな被害者か。どちらにせよ見る目ないって言うてるようなもんやでな」


「まあ確かにそれはそうね」

タオがなんとなく相槌を打つ。


イヴが隣町へ出て一週間が経とうとしている。例の病は、感染は速いが発症していることに気がつくまで時間がかかる。

つまり、症状は進んでいても完全に喋れない初めての被害者が現れるまでは、対策を講じるところまで及ばないのだ。ましてやこの病気は門外不出、隣町の住人はその存在を誰ひとりとして知らない。潜伏患者はねずみ算で増えていき、パンデミックは必然である。


一方こちらの村待機組(イヴ以外)は、平和ボケした日々を過ごしていた。


「あとブランド物でも、でっかいプリント貼り付けたTシャツとか着て歩いてるやつな」


「でもそのロゴをオシャレと見る人もいるわけじゃない。スポーツブランドをでかでかとプリントされたTシャツを着て歩くことを」


「それも言うたらアスリートとかの真似事やろ? 彼らはそれで広告費を貰ってるからつけてるわけで、無償でブランドマーク付けて歩くなんて、歩く無料広告やん」


「まああんたのボロい着物よりはオシャレだと思うけど」


「なんでもええけどパンツ見えてんで」


「えっ嘘っ」

タオは慌てて下を見る。


「いや見る前に隠したらええのに」


「なんでも確認してからじゃないと動けないの」


「まあ、なんや。おおきに」


「陽気におおきに言わないでくれる? 」


「あ、韻踏んだ? 上手なったなあ」


「ばか。早く落語教えなさいよ」



ーー隣町。

町は賑やかだった。この前アケビを連れてきたときに出てきた以来、二度目の外の世界。

身体に貯めた限りある言葉をもって、イヴは歩いていた。

元来、会話という会話をしてこなかったイヴであるから、発語は自分の言葉というよりも台詞に近い。

アケビに教えてもらったとおり、贋作のブランドバッグを持つ人を探す。

これが、最小限の会話で、最大限の効果を得られる、言わばコスパ最高の手法であるという。

偽物のブランドバッグを持ってる人は、他人によく見られたいが自信がない。

だから、他人の話は大抵聴いてくれるし、知り合いが多い分、八方に繋がりがある。

ましてや知らない少女に話しかけられたらそれさえも話の種にするに違いない。

アケビがいかにも確信を持っているかのような語り口だったので、イヴはそれを信じることにした。

歩きがてら練習する。


「あのう、駅はどこですか」

「ありがとう」

「おしゃれですね」


あのう、は田舎者っぽく。偽ブランドは田舎者に弱い。

ありがとうは、子どもっぽく。偽ブランドは子どもに弱い。

おしゃれですねは、憧れを持って。偽ブランドはリスペクトに弱い。


イヴの旅はつづく。


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