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喋ったら、死ぬかも知れない。だから俺は、喋りまくる。  作者: 中田翔子
突破口

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16/51

還元システム

アケビが声を出す。

「落語、死神」


「おいそれが死にそうな人間に演る噺かっ」

村長がすかさず息を吹き返しアケビにつっこむ。


「村長生きてたのか。なんだよったく心配かけやがって。そのままくたばっちまえば俺が村長になれたのによ」

と、安堵のあまり口数が増えるゴトウは、口は悪いが相当心配していたらしい。


「で、爺さんなんで死んだフリなんかしてたんだよ」


「いつもお前は何かあったら落語をするのか」


「ああ、いやまあそうですね」


「なるほどやはりか……」


「……え、俺の質問は無視? 」


「アケビという男。会った時からどうも不思議な感じがしておった。躊躇いなく喋る姿、老若男女分け隔てなく話す人懐っこさ、舞台度胸、所作、演説、スピーチ、のど自慢」


「そんなシーンあったっけ」

タオがボソッとつっこむ。


「演説とスピーチ被ってるやん」

アケビも堪らずつっこむ。


「そして、君ならこの村の現状を打開する鍵になってくれるような気がしてな。そこで、この村に来てからの君を、村を挙げて極秘に研究させてもらっていた」


「え、勝手に? なに? 監視されてたん」


「すると驚く事実が見えてきたんじゃ。まず、初めてあった時から感じておった、君の言葉の基礎体力じゃ。それは、膨大な数の落語をインプット、アウトプットを繰り返した日頃の研鑽の賜物だろう」


「まあ死ぬほど稽古はさせられたからな。ものにならんかったけど」


「しかし、それだけではどうも計算が合わないことが分かってきた。いくら噺のスペシャリストとして経験を積んできたとて、3倍近い年月を生きてきたわたしよりも言葉量が多いということはどういうことかと」


「言葉量って、それは概念的なもんでしょ? 可視化されてないんやから、絶対爺さんの方が多いって」


「いや、総言葉量の可視化は、この病が流行してから、国が開発し実現してくれた。この村にもその機械が一台あるんじゃ」


「えー、なにそのご都合主義的マシン」


「この部屋に」


「え」


「お前は一日でも一般人の2-3倍は言葉を発している。しかし、初めて村長室に入った時から、言葉量が減っておらん。むしろ微増していると言っていい。これはどういうカラクリなのか」


「知らんわ。まだ病気に感染しない抗体を生まれながらに持ってるとかそういうのじゃないの? 」


「いや、それは残念ながら有していない。しかし、他人から話を聴く以外に、言葉量を増やす方法があった」


「え、それは? 」


「正確には分かっておらんが、その手がかりのようなものがあったのじゃ」


「いやだから、それは? 」


「聴きたいか? 」


「うん」


「どうしようかな」


「はよ言えや」


「それはな、言葉遊びじゃ」


「言葉遊び? 」


「そう。謎かけや見立て、アナグラム、回文、押韻、段駄羅、あいうえお作文などなど、様々な言葉遊びを取り入れ、ユーモラスな会話をすることで、発語した言葉の数%還元されるんじゃ」


「なんやそれ。ポイントカードやん」


「それも会話同様、大勢相手だとポイントも二倍三倍に跳ね上がる」


「ポイント言うてしもてるやん」


「だからさっきイヴが来た時に、ダジャレを仕掛けまくったのだ。そうしたらイヴがすごい曇った顔で出て行ってしもうて、ショックで寝込んでおった」


「なんやそれ」


「しかし、戻って来てくれてショックも吹っ飛んだわい。布団だけに」


「さ、みんな八百屋へ帰ろうか」

「そうましょう。夏でも夜は冷えるのね」


「待て待て、大切なのはここからじゃ」


「なんやねん」


「この発見は、まだ国は知らん。そこでじゃ」


「ん? 」


「これを使って、国を乗っ取ってみんか? 」


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