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喋ったら、死ぬかも知れない。だから俺は、喋りまくる。  作者: 中田翔子
突破口

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危ない夜


「あ、あのさアケビ。あんた、落語やってたんだよね」


タオが唐突に訊いてくる。

そうだと答えると、急にモジモジし始める。あれ、こんなキャラやったやろうか。もっと険のある感じやったよね。


「いやその、お父さんも元気になったし、村も少しずつ活気が戻ってきたし、お父さんがあれだけ元気になれば私もしばらくは安泰になったわけで。それも、まあなんていうの。あんたのおかげ、じゃない? 」


「別にそんなことないよ。ゴトウさんのカリスマ性やろ」


「で、でね。お父さんばっかりに頼ってても私も自立出来ないから、私も大勢の人に向けて喋ってみたいの。だから、あんたさえ良ければ、その、落語教えてもらえないかなあって思って……」


さっきゴトウさんから落語を習いたい奴がいるらしいとは聞いたところではあったが、まさかタオもその一人だったとは。


「わかった。じゃあ、稽古つけたるから、晩飯食うたらそっちの部屋行くわ」


言って、夕食の場へ赴く。

朝食はタオが、夕食はゴトウさんが作ってくれる。

2人とも料理の腕は確かで、この村に来てからすっかり健康体になった。

夕食を終えて、タオの部屋に入る。

タオは鏡を見て、眼の周りほぐしたり、顔全体を伸ばしたりしてハリを保とうと苦心している。その様は見ていて滑稽で面白い。


「おーいタオ」


「ちょちょちょっ。ノックぐらいしなさいよね」


「伊○園」


「お茶みたいに言わないで」


「あれ、イヴは? 」


「なんか村長に呼ばれて、今日は役場に泊まるらしいわ」


「えっ、村長とどういう関係? 」


「あ、言ってなかったっけ。村長の孫だよイヴは」


「あ、そうなん。あっ、どおりで秘密兵器めいてるわけやね」


「だから、今日はイヴはいないわよ」

と言いながらタオは思った。

あれ、てことは今夜は2人きりではないか。

ひとつ屋根の下、年頃の男女、何も起きないはずはなく。

これはこれはまずい状況になったわ。

べ、別に私はそんな不埒なことを考えてなどいませんわよ。

でもこの男がケダモノである可能性だってあるわけですし。

現に初対面で私のパンツをまじまじと……。


一方でアケビも、まずい状況になったと思った。

ゴトウさんは、イヴがいるから堂々と娘の部屋へと俺を送り出したわけだ。

もしイヴがいないとわかると、俺が何かをするのではと想像をたくましくするだろう。

幸いイヴは喋らないから、声が聞こえないということでバレる恐れはないが、あの面倒なおっさんに誤解されるのは七面倒だからなるべく避けたい。

誤解を解くのに言葉を尽くして言葉を失くしてしまっては本末転倒である。


そうして、2人の危ない夜がはじまる。


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