第二話 食料確保が簡単なわけがない
「あぁここ異世界なんじゃね?」と思ったあの時から数時間が経って、未だに俺は現実を受け入れられないでいる。
いやだって普通に考えてさ、転生するならするでもう少しマシな条件的なものがついてるもんじゃないのか?
ほら、チート能力を持ってるとか、アホだけどかわいい美少女兼女神様が一緒に異世界に来るとか、人との出会いだけ優れてるみたいな。
普通こんなんじゃん?
ではここで俺を見てみましょう。
・廃墟スタート
・誰もいない街
・飯もない
・家はある ←メリット
こんな感じでスタートから過激すぎやしませんかね。
なぜだか元の世界と同じ容姿でその上記憶まで引き継いでる点に関してはありがたいと言えばいいのだろうか、否、違う。
そうなったら異世界転生ではなく異世界転移なのではないかと疑問に思ったりする、
いや、でも一回死んでるな、俺。
じゃあ異世界転生かぁって納得するくらい俺のオツムは弱い。
そんな俺をどっかのゲームみたいにその身ひとつでいきなり大自然に放り投げられて「家とか適当に造って頑張って生きてね」みたいなレベルの世界に放り込むのは間違っていると思うんだ。
おっかしいなぁ、異世界ってもっといいところだと思ってたのに。
異世界は良い世界ってか。
うるせえこの野郎。
どうやら俺は異世界転生ゲームの難易度をベリーハードに設定してしまったようだ。
いや、設定したのはあれか、あの女神的なやつか。
やはりドジッ娘じゃないか。
さてそろそろ「俺はどうやって生きていけばいいのか」という現実的な問題を直視しようじゃないか。
ひとまず家ははあるのでここを拠点に何か食べれるものを探すのが当面の目標だろう。
何が食えるのかとか一切わからないけど文句は言ってられないよ君、社会は厳しいんだから……と、社会からハブられて異世界にいる俺が言うよ。
果物系は安全なのが多いからそれを探そう。
さっき見た感じだと、街から少し歩いたところに森っぽいのが見えたからな。
奥に進んでいくのは危険だと思うから最初は入り口付近から探索しよう。
なんせ俺は木で作った槍でワニやトラを撃退できるくらいの強さをもってないからな。
明くる日、俺は家を出て森へと進出した。
そこらにいる虫みたいな奴が既にもう虫じゃない見た目をしてるのでやっぱここ異世界だ。
虫って足は大体六本とか八本だもんな、三本とかじゃないもん。
てか足の数が三本ってバランス悪いだろ。
なんで奇数なんだよ。
なんでそんなんが自然界で生き延びてるの?
ダーウィンもびっくりだよ。
数時間森を歩いて、収穫は食べられそうな果物が8個だ。
赤いのと硬めの殻に覆われたのが4つずつ。
大体赤いのは食べられるという鉄則があるので、勢い良くかぶりつく。
……んん。
食えないことはないけど、美味しいとはいえないな。
赤いから熟れてるものだと思っていたが、味はなんとも言えない。
いや、無味なのかこれは。
果実特有の食感だけがありますみたいな感じですねぇこれは。
次は硬いやつ。
手頃な石で殻を割ってみると、中から水のようなものが溢れてきた。
ヤシの実みたいな感じで、果肉はほとんど見られない。
中から溢れでた液体を飲んでみると、以外にも美味しい。
味は薄いものの、手頃に水分補給できるという強みがある。
今後コイツにはお世話になるだろうな、よろしくヤシの実モドキ。
そうだ、思い出した。
水の問題をどうにかしないといけない。
このままだとひたすらにヤシの実モドキの汁を啜るか、泥水を啜るか、雨水を啜るかしかない。
川を見つければ問題は解決しそうなものだが、この世界の文明レベルが高ければ廃棄物やらなんやらの心配もしなければいけない。
というか街なんだから水くらいあるだろと思っていのがそもそも間違いだったのだ。
井戸は枯れていたし、水分という水分は見つからなかった。
何の事件だこれは。
異世界生活2日目にして色々な問題が積み重なっているが、地道に片付けていこう。
食料、水。
この2つさえどうにか出来ればある程度生活できるってものだ。
あぁ、人に会いたい。