色々と振り返ってみます
机に向かった私は、紙をだしてまとめ始める。
「桜華恋咲学園」これが私が転生した乙女ゲームの名前である。
まず、この世界には、華族というものが存在する。
華族とは、ぶっちゃけ富裕層や由緒ある家のことである。
華族を見分けるのは簡単。それは名字に花の名前が入っていることだ。
何を隠そう、我が「緋桜家」も、華族の一員なのだ!
・・・ん?緋桜風華?・・・あーーっ!そうだ!なんか聞き覚えがあると思った!!
私は唐突に思い出す。
緋桜風華。彼女は平たく言えば、全ルートで死亡するという転生ものにはお約束の悪役令嬢である。
性格は、我儘で、自己チューで、やることなすこと汚くて・・・最低だ。こいつ。・・・ホントはな?
現実は違う。まず、父と母に甘やかされてそだったと言う最低条件からして違う。
私のお父さんとお母さんはそれはもうぶっ飛んだお人だった。
お父さんは、緋桜財閥の会長として世界中を飛び回る傍ら私や妹、血の繋がらない、私と数ヶ月違いの義弟をとても良く可愛がってくれる優しい人である。怒っているのを見たことがない程だ。
・・・各国の首脳や大統領、王族からヤバイマフィアの首領や日本最大のヤクザの頭領までと親しい(人によっては親友関係)って、どういうことだ。突っ込んではいけない。ツッコンデハイケナイヨ・・・ハハっ。
母は、緋桜家当主の座を私に投げ渡してさっさと父に従って海外をまわっている。
普段は優しい。優しいのだが、怒ったら無茶苦茶怖い。私は二度の人生で初めて、げんこつをくらって地面に埋まる経験をした。いやぁ、阿修羅様が降臨なさったかと思ったよ。うん。忘れよう。思い出したら軽く死ねる。
・・・あれ?ゲームと全然違うじゃねーかっ!え?私の周りにまともな保護者っていたっけ?
えーと、後は・・・おじいちゃん。
おじいちゃんと呼んでいるが、正確には、ひいひいひいひいひいひいひいひい・・・・・・おじいちゃん。
本人にも正確な年齢が不明の化物みたいな御方である。
(本人曰く、富士山から煙がでたり、都に鬼が出たと騒いでいる頃には生まれていたらしい。)
そんな人に私は昔から鍛えられてきた。
矢が一本だけで、鹿と猪10匹ずつ狩ってこいと家を叩き出されたり?
風邪で高熱をだしている時に、漢方薬と言って、間違えて毒草を飲まされたり?
谷に問答無用で叩き落とされたり?
底が見えないほど高い滝から、押されて滝壷に命綱なしで飛び込んだり?
沖縄の無人島から、ナイフ1本で大阪まで帰って来いと無人島に置き去りにされたり?
“修行”という名の“いじめ”もしくは“虐待”を必死にくぐり抜けた私は、
空手、柔道、古武術、剣道、剣術(真剣)、槍術、弓道、狙撃、暗殺術etc・・・
をマスターすることになったのだ!
おじいちゃんは一体私に何をさせたかったのだろうか。
・・・思い出したら目から汗が出てきたよ・・・。グスン
そして私は、大阪を中心として、日本一の番長と呼ばれるようになった・・・って、ええええええ!?
なんでだっけ?
えっと・・・中1の時、親友がある番長に絡まれました。そいつを成敗したら、姐さんが今日からリーダーだ!
って感じになって、気付いたら日本一の番長とか呼ばれるようになったんだよね?・・・うん。
・・・なんじゃこりゃぁぁぁぁっっ!!元番長の悪役令嬢とか聞いたことねーよっっ
武闘派の悪役令嬢とか新しすぎんだろーが!!誰の理解も得られねーよっ
グレた令嬢とか言われたら、ゲーム関係なしに終わりじゃん!
・・・どうしよ
びっくりの保護者たちです。風華の性格の土台の部分をつくったのはこの人達。
・・・幼児教育の偉大さがわかる一幕ですね。
ちなみに、おじいちゃんの修行には、悪意はこれっぽっちも入っていません。
これくらいできるかなー。とさせてみたら風華が意外とできたので調子に乗ってるだけです。
ちなみに風華は紛れもない天才。普通はこんな非常識な修行なんてしませんし、13歳で家督を継ぎ、緋桜家の当主についたりなんざしません。