一つ目
前回書き忘れたのですが、この話は既に完結まで書いてあるのでサクサク投稿していこうと思います。
……ジリリリリリリ!!
やかましい目覚ましを止める。視界は今度こそ明るい。
そう、あれは夢の世界だ。
あのリアリティのある世界を夢の一言で片付けるわけにもいかないし、同じ夢の続きを八回も見るなんて勘弁だが、眠ると行くのだから便宜上そう呼んでいる。
そんなわけで、初めてあの世界に行った時、僕は叫んだ。
「マジで猿夢か!?」
それは、「宵闇時計」の話を聞いたその日の夜だった。
記憶に新しいとかいうレベルで表現しても良いのか迷うほどのタイミングだったので、突然の暗闇にも混乱することなく時計まで歩けたのだと思う。
それについてはアイツに感謝したいが、そもそもこの世界に来た原因が「噂を知ること」だった可能性も否めないので、結局僕の中ではプラスマイナスゼロということで片付いている。
いや、この落着いた態度のせいでアイツに初見から絡まれたんだ、やっぱり片付いていないわ。マイナスだ。
「いらっしゃーい! こんばんは、お客さん?」
「はぁ?」
「うわ、初っ端から冷たい態度! いやー、君度胸あるね! あの暗闇を迷わず直進するなんて。……本当は何回か様子見てから登場するつもりだったのにね?」
「知るか。……あれか、メインは遅れてやってくる的な」
「そうそう! わかっているね、気に入った」
「え、やめろよ。そういうのいらない」
「返品は承りませーん」
「……うわ」
「ちょっとー、その反応は傷つくよ」
最初の印象:馴れ馴れしくてウザい。
「傷ついて嫌ってくれるなら万々歳だろ」
「ファッ!?」
第二の印象:ちょっと抜けている?
「き、嫌わないし」
「チッ」
「舌打ちやめろ下さい。……泣くよ?」
第三の印象:メンタルが弱そうだ。
「……はぁ、で、お前はなに」
「この時計の今の主」
「ふーん」
「反応薄いな!」
「じゃあ、どういう反応を望んでいるのさ?」
「わぁ、なにそれ、カッコいいね! ……みたいな?」
「おーけーおーけー、やってやろう。……「わぁ、なにそれ、カッコいいね!」どうだ、上手いだろ」
「……」
「あら、うけなかったか。残念」
「いやいやいやいや!! なにそれ、上手い! まるっとまねされたことが気にならないくらい上手いんだけど!!」
「僕の特技」
「すごいすごい! ますます気に入ったよ」
「……あ」
なんてこったい、やっちまった。目的を見失って自慢してどうする。しかも好感度稼いじまったじゃんか。
「……さて、色々聞きたいことがあると思うんだけど?」
「まあな。とりあえず此処は、噂の「宵闇時計」ってことで良いのか?」
「そうだね」
「……」
「な、なんだよー?」
「いや。どうせ質問させておいてロクに答える気無いんだろうな、と思ってな」
「そんなことあるわけないデショ? もー、そんなに疑うんなら一個だけ何でも答えてあげる!」
「……その言葉忘れるなよ」
「え、ちょ、やっぱり……」
「なし、は無しな」
「なんか怖いんだけど。……し、質問は?」
「は? 今するなんて言っていない」
「うわ、それずるい」
「ずるくて結構」
軽口を叩き合っていると、身体に違和感を覚えた。
「あ、もう帰っちゃうのか」
「そういうことか。……もう会わないことを祈る」
「……ふふふ、またね」
最後に見たのは、アイツの楽しそうな顔だった。
ああ、一発叩きたい。殴るのは猟奇的だから勘弁してやろう。