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現実逃避してたら異世界に連行されたようです  作者: wine
第四章 異世界で逃走します
43/44

暴露と隠蔽

「いっつ……」

「カヨ、大丈夫か?!」


 近くではカホの声。すっごく焦ってる感じ。


 それもそのはず、私はあのアジトの入りらしきの穴へ飛び込んだわけだけど、この穴、軽く10mはあった。足から降りた(落ちたとも言う)からボッキリ何処かその辺が折れたらしい。超いてぇ。逆に感覚のない状態。


 アレだ、私、馬鹿だな。どうしようもないアホだ。


 確かに他の人が平気そうに降りてるからって続いちゃダメだった。無用心過ぎた。


 ここに来て不信の心の発動してない不利益が訪れるとは……まあ普通に慎重に行動しろよって話だよな。てか、いつになったら不信の感情元に戻るんだろうか。ここのところ何となく血を飲む前でさえ持ってた疑う心というか、慎重に選択する事もできなくなってる気がするのは気のせいじゃないはずだ。


「村人、村人!」


 と、命の恩人さんがアオツキに抱えられながら降りてくる。


「ほんまアホやなー。お前、この子おらへんかったら確実どっかで死んでんで」

「いや、まあ……返す言葉もねぇ」


 実際、一回死んでるも同然だしな。


 で、命の恩人さんが私に触れて足の傷を治してくれた。

 いや、これ何度目だよ。立て続けに使役しすぎだよな。何となくだけど、カホの何とも言えない表情見るにあんまよろしくない気がする。するんだけど、ありがたいことに変わりはないしな。そんなわけで、スッカリこの能力に甘えてます。


「ありがとう」

「村人、治す、当たり前」


 ニコニコと言い切る命の恩人さん……未だに私この人の名前知らねぇや。さんざん治してくれてんのに名前聞いてないのとか、おかしいよな。そして私は村人ではない訳だし……。


「あのさ、私の名前はカヨって言うんだ。だから村人じゃなくて、カヨって呼んでもらえねぇかな。それで、命の恩人さん、君の名前は?」

「え……名前……」


 相手は緑の目をパチクリさせる。

 ん、挨拶の仕方間違えたか?!言葉遣いが悪かったとか?ど、どうしよ……。


「これと、あれとお前と、ひと……でなしと……」


 お、おう、コレト・アレトーマエト・ヒト・デナシト……さん?

 流石は宇宙語の文化持ちだ、長い名前だな。何となくこそあど言葉っぽいけど……まだあるのか?


 本人でさえ思い出そうと考えているらしい。困った、こんな長い名前を呼ぶのはなかなかキツイ。


「あ、えと、じゃあニックネーム……じゃなくて、愛称的な感じでコレトって呼びたいんだけど、良いかな」


 だ、ダメかなぁ。命の恩人さんはキョトンとして私を見つめている。

 あ。名前最後まで聞かないのってダメかも知れん!しかも勝手に省略してるし、そこもダメだったかも。あー、私のコミュ障!


「うん、コレト、いいよ」


 命の恩人さんはニコリと笑った。


 わーい、いい笑顔。怒ってないみたいで良かった。

 あ、感情ないから怒らないのか。そういう面で言うとこの世界ってコミュニケーション楽なのかも知れないな。


「…………ええのんか?今のちゃうと思うねんけど……」

「いや、……何とも……」


 アオツキとカホが微妙な顔で私たちを見てる。

 ん?何かあったのか?


「カヨ、気をつけろよ……て、俺がもっとしっかり見とけば良かったんだよな……ハァ」


 カホがいよいよ落ち込んだ顔になって溜め息ついた。


「あ、いや、ごめん。カホのせいじゃないし、私がアホ過ぎたせいだからさ、責任感じないで欲しい」


 私は脚が治ったのでパッと立ち上がった。


 うん、完治してる……お、おお?ふらふらするような……。


「おい、急に立ち上がんな」


 フラついた私をカホが支えてくれた。


「ま、そうなるやろな。アオメ、こいつら用に飯と部屋の用意や、なるべく早うしたって。そんでリンは家族会議の手配や、開始は今日の18時。それから……」

「「はい」」


 アオツキは苦笑いしながら周囲の人らに次々と指示出しをする。


 こいつ、やっぱりこの集団でもお偉いさん的な立ち位置なのかなー。まあ、強いしな。


 て、ん?聞き流してたけど聞き覚えのある表現が……。


「アオツキ、その時間の言い方……」


 カホに支えられつつ私が不思議そうに問いかけるとアオツキは自慢げに丸い金属の塊を見せた。見慣れた12の数字の書かれた文字盤と長針短針……時計だ。


「ええやろ、異界人からもらったんをこの世界用に改良したんやでー。ここはこんな感じでお前の世界と似たようなんがいっぱいあんねん」

「へー」

「何だ?これ。方位計か?」

「時計やで。黒族は不定時法やからこれやなくて別の日柱みたいなん使ってるみたいやけどな」

「トケイ……フテージ?」


 カホは興味深そうにマジマジと時計を見ている。そっか時計知らないのか、何か新鮮だな。


「アオツキ兄様、取り急ぎ果実の方をお持ちしました、これで取り敢えずは繋いでいてください」

「お、サンキューやで」


 焼き物風のお皿に葡萄がたっぷり乗っている。紫色の巨峰に似た大粒の葡萄だ。見るからに美味しそうだな。


「ほら、しっかり食いや。樹葉族の能力は身体ん中で有り合わせを切り貼りして時間操作するだけやねん。元になるもんが無くなったら身体壊れんで」

「???」


 どういうこと?

 私は葡萄の皿を受け取って座りながら考える。


 身体を切り貼りって……つまり?

 出血とか、傷とかの壊れたところを別のところから取ってきた身体の一部で繋ぎ合わせている感じ?そんでもって時間を遡らせて治してるんじゃなくて、身体の中の時間を進めてるってことか?


 てことは、だ。私のこの立て続けの回復って、タンパク質とかその辺の傷を治す元になるやつが急速に消費されてることになる。医療関係には詳しくないけど、それってあんま良くないんじゃ……。それから、体内時計が急速に進められてるってことは、アレか?寿命みたいなんが短くなってる的な?


 サッと血の気が下がる。

 なるほど、確かに多用したくはないかもしれない。


「じゃ、お言葉に甘えて、いただきます」


 私は目の前の葡萄を一粒千切って口に運んだ。


 ……甘っ!

 ここの世界の葡萄って全部こんな甘いのかな。超喉乾く。


 ふと視線を上げると私しか食べてない。皆んななんだかんだろくな食事してないはずだ。


「カホもアオツキも、食わねぇのか?」

「あ、ああ、食う。アオツキありがとな」

「礼はええで。俺は甘いのん苦手やからいらんー」


 アオツキは甘いの苦手なのか……じゃあなんでアオメさんこんな激甘果実もってきたんだよ……反抗期か?


 まあいいや。

 えっと、あと1人にも聞いとかないと。


「コレトも食べねぇの?」

「え、え、ボク?」


 命の恩人さん……もといコレトは不意をつかれたようで困惑している。


「いい、の?」

「当たり前だろ。ほら、これ食いな」

「わ、わわ」


 私が一粒手渡すと、両手で受け取りながら目をパチクリさせて葡萄を見つている。食べ方わかんないのかな……。


「ここの皮剥いて、中に種があるんだけど、それは食わないようにな。上級者は口の中で全部出来る」

「おおーっ」


 私が手本を見せるとコレトはすごく興味津々で手順を追っていく。まあ、葡萄だし、教える内容てほどのもんでもないんだが。


 赤黒い皮を剥き終わり、種を取ってコレトの口に入れてあげる。


「ふ、あ、ぉ……ぁ」


 何か、凄くどっちの反応なのか判別つきづらいな。目を見開いてモグモグと口を動かしつつ、よく分からない声を小さく発している。


 初めて食べるにしては甘過ぎるからな……苦手かな?好きなようだったらもうちょい剥いてあげようかと思ったけど……。


「美味い?」


 私の問いかけと同時にコレトの咀嚼は終わったらしい、こくんと飲み込んだ。


「おいしぃー」


 そりゃ良かった。


 あ、嬉しい感情がストップする。でも関係ないな、コレトの笑顔見てると何か自分を助けてるようで救われた気持ちになるのに変わりはないし。

 ならもうちょっと剥いてあげよう……。と、カホが私の剥こうとする葡萄に手をかざして妨害する。


 何で?


 カホを見ると若干口を尖らせてジト目になっている。


「なに?」

「いや、コイツの世話じゃなくて、自分がちゃんと食えよ。コイツだって自分で食えるだろ」

「あ、そか……」


 確かにコレトは何だかんだ年上だし、世話されるの嫌かも知んないよな……。


「ぼく、カヨが剥いたの、良い」

「よっし、オッケー。ちょっと待ってな、カホ手どけて」

「うっ」


 コレトがして欲しいならやりましょう。カホは眉間にシワを作りつつも手を下げる。


 確かにカホの心配も有難いけど、今はコレトになんかして上げたいんだもん、わかって欲しい。


「はい、コレト口開けて」

「あーん」


 年上のコレトには悪いけど、親鳥ってこんな気持ちなのかな……アレ、感情途切れた。喜びあたりの感情かなぁ。


「ちっ、おいてめぇ、自分で食えよ!」


 む、カホが不機嫌だ。

 コレトのことあんまよく思ってないのか?まあちょっと使い道狂えば怖そうな能力だししょうがないのかもしれないけどさぁ。そこまで目くじら立てなくて良くない?


「嫌、カヨの欲しい」

「こ、こいつ、何言って……一旦灰にしてやろうか」


 カホが若干照れたように顔を赤くした後、怒ったみたいで瞳が真っ赤になる。


「カホ、やめろよ。心配してくれてんの有難いけどさ、私も適宜食べてるし良いじゃん。なに突っかかってんのさ」


 私がアオツキに突っかかってる時に止められて思ったけど、カホも人のこと言えないよな。何度も助けてくれてるこの命の恩人さんに対して結構雑な扱いしてる。


「だってお前っ!コイツ……」


 カホが赤い目で私を睨む。そんでもって何か言いたそうだけど急にどもり出す。


 どうした?


「えっと……」


 なんか言いにくそう……。赤い目のまま視線を泳がせている。


 うーむ。どうでもいいけど、カホのこの目、怖いんだよなー。や、まあ感情は沸いてこないんだけどねぇ。あの地下室の出来事が脳裏に蘇って緊張するというかなんというか。


 あ、カホの目が黒くなった。口をへの字に噤んで大人しく元いた場所に座り直す。


「……ごめん」


 謝罪された。


 何で急にしおらしくなったんだ……て、あー、カホ心読めるんだった。これは私が怖いって思ったの読み取ったのかな。


 ごめん、そこまで怖いわけじゃないから。でも大人しくなってくれた方がいいからこれで良かった……?


「はー、俺が男もイケてたら、この三角関係に参入できたんになー。ほんま惜しいわー」


 うざい奴が割り込んできた。

 私は無視して葡萄を自分の口に放り込みつつコレトの分を剥き剥きする。


「あ、また無視したっ!ほんまお前瑪瑙ちゃんを見習ってや、あの子無視はせん子やねんぞ。無視は最大級に寂しくなんねんで。俺はお前の世界のうさぎちゃんやねんで。放っとかれると泣いちゃうんやで」


 うざっ。

 誰かコイツ回収してくれ。もしくはこの口縫い付けてくれ。


 仕方なしに冷たい視線だけ送る。これで無視ではないから黙るだろ。


「ええな、ええなぁ、その目嫌いやないでぇ。まるで俺の大好きな初代お嫁さんと同じちゃう?」


 うぇ、なんか喜んでんのか?いや、こいつのニマニマはもっと根源的な危機感を抱かせるな……。

 てか、初代お嫁さん?てことは、もっといるってことだよな。一夫多妻制とか、こういう世界だとあるかも知んないな。


「お前、嫁何人いんだよ」


 興味本位で聞いてみた。こんなうざい奴でも強いし見た目はまあまあ良いからな、嫁の数人は居るかもしれないな。


「フッフッフーこう見えて俺、愛の化身やからな、モテんで。今まで全部合計すると38人や」

「さ、さんじゅ……はち?!?!」

「お前、嫁多いんだな。大変そう……」


 私は言葉を失った。


 それに対してカホは呑気な返しだ。


 だって38人だぞ?!やべぇよ、どこの王様?どこの征夷大将軍?!

 とりあえず言えることは……


「……女の敵だな」

「え、何でや?ちゃんとしっかり愛せる数でキープしてんねんで?」

「キープ……?つまり責任も取ってない女も含めるともっと居ると?」

「ちゃう、ちゃうで。今おんのは3人やで」

「????」


 つまり?35人も切り捨て……もとい離婚を行ったと?

 ほんとゴミじゃん、コイツ。何が愛の化身だよ。


「あー、今だいぶ不本意なこと思われてそうやな……。でも暴露すんのもアレやしなぁ……」


 アオツキが何かぶつくさ独り言を言う。


 不本意って。いやいや、どんな言い訳並べ立てようともクズはクズだろ。


 あー、コイツと話してると葡萄が不味くなる。

 いっぺん私のあずかり知らぬところで死んでこないかなー。


「わー、氷雪族の術みたいな冷めた目線やなー」


 と、私がアオツキを睨んだ延長線上に、ふと人影がチラついた。


 一応この場所を説明しておくと、私たちが国境を越えしてきたトンネルみたいな構造をしてるんだけど、一本道とかじゃなくて、蟻の巣みたいに沢山の通路が敷かれている。私たちが今いるところは多分普段出入り口に使っているからか廊下の行き止まりになっている。で、私は奥に続く通路の方を見ている形なんだが、アオツキの後ろの方に白い布みたいなのがチラッと見えた。


 うーん、幽霊?なわけないよなー。


 でも誰であれ、すぐ居なくなったみたいだ。


「カヨ、欲しい」

「あ、うん。ハイ」

「ちっ」


 コレトのおねだりって何か可愛いよなー。ん、感情途絶えた。アレか、この目の前のクズの持ってる血の感情か?愛情……ねぇ?


 因みに舌打ちはカホな。


「それにしても、カホの嫁さんはどんななん?何族?」

「え」

「げほっげほっ、な、急に、何言って、げほっげほっ」


 カホが喉に葡萄を詰まらせたらしい。

 いや、……え。カホに嫁?


「え?黒族でその歳ならおるやろ?しかもカホ君は、いむぐっ」


 カホが会話の途中でアオツキの口を塞ぐ。アオツキも塞がれることを前提に話してたのか甘んじて口を塞がれている。


 嫁さん……カホいるんだ。

 私はそっちの方に軽くショックを受けている。だって、14,5歳くらいの生意気少年に結婚とか、現実味が……。


「お前、いつから気づいた?」


 カホが声を低めて牽制している。


 んー?能力者だってことについてかな?アオツキにばれたのか。


「そんなん、初めに火を使ってからやで。火炎の顕現するくせに黒族におれるゆうことは、2パターンしかあれへんやん」


 2パターン……?

 1つは能力者であることだろうけど、もう1つあんのか?


「それより早よ嫁さんの出身教えてや!流れ的には|ユキ≪・・≫一族か?あの一族やと、めっちゃ自信過剰な上に扱い間違えるとすぐキレるもんなー、難しいねんなー。でもそこがまたええっちゅうか……」

「う、お前、何でそんな内情詳しいんだよ」

「当たりか?でもまぁ、あの一族美人さんやもんなー。しゃーないよなー。俺も惚れたで、昔」


 いやいやいや。待て待て待て。

 こいつら何の話してんだ?


 えっと?カホにはお嫁さんがいて?それでそれで?

 ユキ一族?ユキナガとかの名前の上に付いてる奴のことかな……?それで……えっと。


「まー、お前見るからにお人好しやしなぁ。弱みにつけこまれてじゃじゃ馬つかまされてそうやわ〜」

「お、おま、言い方選べよ」

「否定せぇへんとこ見ると、まんまかいな。でもまー、カホなら火の血が流れとるしなかなかええとこまでいけたんちゃう?属性の相性は大概劣勢側が優位な方に惚れてまうもんやからな。かく言う俺も、水滸の女には弱い」

「知らねーよ」


 何か思考が鈍い。でも情報はあるに越したことはない。そしてそれを拾って考えて出したことも大事だ。これは自分が自分の行動を判断する上で必須だから。


 だから、考えろ。

 ユキ……って名前がついて、じゃじゃ馬……。

 すごく心当たりが……。


 と、カホと目が合う。


「お前が来るまでの間、俺の嫁だったんだよ」


 観念したのか、諦めたような口調。ただ、言いにくそうだ。

 ……誰が、誰の嫁だって?


「会ってただろ、お前」


 ドクンッ

 心臓が嫌な風に鼓動を大きくする。

 そして何処かの何かがズキズキと痛む。


 月明かりの純和風の庭のあの風景が目に浮かぶ。風流な景色を堪能できなかった、我を失うくらい言い寄られて焦りまくったその原因……。


「ユキメだよ」


 情報は大事だ。でも私はそんなもの、カホから聞きたくなかった。

小さな伏線回収です……伏線とは言わないかもですが汗

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