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現実逃避してたら異世界に連行されたようです  作者: wine
第三章 異世界で闇を視ました
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闇にて

 見渡す限り真っ暗だ。


 黒。黒。黒。


 目を凝らしても……いや、見渡せてんのか?そもそも目を瞑ってるのかもしれない。いや、目を瞑ってるだけでこんな黒くならないよな。明るさとか瞼の裏でも分かるもんだし。変だ。


 無音で、真っ暗な世界。所謂いわゆる闇に私がいる。


 んー。


 とりあえずアレだ。状況整理だな。

 さっきまで何してたっけ。そこから思い出せばなんか分かるだろ。


 確か、大怪我してて地下に治療してくれる人がいるらしくて、でも血を飲まなきゃいけなくて……あ、ひょっとして暴走したせいで意識飛んだ?


 いや、待てよ。それならこの世界来た最初の時みたいに完全に意識なくなるはずだよな。今、ある程度思考出来てるんだけど。


 これってどんな状態だ?死んだのかな。


 これが死の世界ならなんつーか、何もないな。真っ暗だし無音だし、もちろん無臭、感覚も……


ピキッ


 痛っ!?痛ったー!

 なんだこれ、くっそ痛い……え、今は痛くない。一瞬だけ悶絶レベルに痛かった。


 え。どゆこと?


 はぁ、ため息吐きたい……て、息吸ってるのかすら怪しいよな。意識して吸っててみるか。ちょっと落ち着いて考えないとだし。


 すーーはーーすーーはーー


 あれ、今、鉄の味がし……


――カヨ


 お?何か呼ばれた気がする。くぐもってる感じ。うーん、また無音だ。聞こえてなかったかもしれん。


――カヨ!


 あ、聞こえた。

 やっぱ聞こえてるわ。やっぱりくぐもってるんだけど、今の声はカホだな。なんとなくそんな気がする。


 てゆーか、もしかして私って今、精神だけが孤立してるんじゃなかろうか。

 で、さっきめっちゃ身体を走るような痛みにあったのって、絶賛暴走中みたいな?実際は意識ないけど何故か今ある状態。


 てことはこの黒い視界とかって私の心の中なんかなぁ。


 真っ黒じゃん。


 うん、わかってたよ、黒いことくらい。こんな真っ黒な心でよく人と関われてたよな。笑えねぇ。


 ま、それはそれで置いとくとして。暴走中ってことは不信の感情が制御できてないってことだよな。今の私はその反動で通常状態なのかな、分からないけど。つまり周りの人たちに危害及んじゃってるんじゃないかな。カホなんか自分の身顧みずに止めに入ってくれそうだよな……。


 うん、止めたいのは山々ですが、どうしようもないや。こんな真っ黒で塗りつぶされた世界だと何もできやしない……。


《それは黒い訳じゃないよ、お嬢さん》


 ……え?誰?


 何処からともなく声が聞こえてきた。


 男の声……かなぁ。声の低めの女の人とかでも通りそうだな。自信はないけど雰囲気男かなって感じ。


 正確には聞いてるんじゃなくて、感じてるに近い。耳から聞き取ってるのとは違う感覚だ。


《名乗ったら奴らにバレちゃうから、異物Aとかかな》


 異物Aて。

 誰だって聞いてる本質をガン無視の名乗り方だな。


《ごめんよ、ちょっとお邪魔したかっただけだから。すぐ出てくし》


 でも、Aとかいう外国語使うってことはこっちの世界の人じゃなさそうだな。


《ゔ、親近感出そうとして墓穴掘った。……あーもう、オレこういうのほんとダメなんだろうな。向いてないもんな》


 何か勝手に落ち込み出した。何なんだコイツは。


 で?すぐ出てくのに何で話しかけてきたのさ。ここって私の精神の中であってるよね?


《概ね間違ってないね。君は今、精神のとある感情に作り出された殻のなかだ》


 殻?

 殻って、卵とかの?


《そうそう》


 へー、確かに、それなら真っ暗なのも頷ける……わけないやん?これでも人間なんですけど。鳥じゃあるまいし……てか精神の中で殻って?何の殻や。


《あはは、君って通常時ほんとに愉快だよね。オレ、ハヤテじゃないけど、そういう楽しいの好きだよ》


 おふ、生まれて初めて人に好きとか言われた。


《え、そっか……君って本当に不幸な星の下に生まれてるんだねぇ。でも安心していいよ、オレ、人じゃないから》


 余計なお世話だよ。


 好きとかサラッと言えるなんて何処の女たらしデスカ。


《あのねぇ、女たらしなわけないだろ。オレがそんな力持ってたら即行で好きな子おとしにかかってるって》


 どんな女たらしでも本当に好きな子の前では上手くいかないものなのです。


《なるほどねぇ。確かに君に話してるくらいに思い通りに話せたら苦労してないかもだねぇ》


 うんうん、私、恋とか知らんけどね。本からの受け売りだ。


《そうか、そっちの界の人間の本って、良いこと書いてるんだな。流石は全部の感情を持てるだけあるよ》


 私が書いてたわけじゃ無いけど、こっちの界の人に褒められると照れるな。


《いや、ほんとに羨ましいよ。君らの界みたいになれたらオレも好きな子のためにこんなまどろっこしい事しなくて済むもんな。あとオレ、人じゃないってば》


 ふーん、まどろっこしいことって何だ?


《秘密だよ》


 ったく、秘密なら言うなよ……て、え?

 あんた人じゃないのか?!


《あ、今突っ込むんだね。最初にカミングアウトしてから時間差有りすぎて興味無いんだと思ったよ》


 すっごいサラッと言われて完全に流してたわ。興味云々以前でしょうが。

 確かに人の精神に話しかけてくるとか、よくよく考えればあり得ないよな。


 人じゃないなら何?神か何か?


《凄い投げやりに正解言われたら、どう返せばいいんだろう……》


 そりゃ投げやりにもなりたくなるさ。

 意味わからんもん。


 ん?正解?


 神か。マジかよ。詐欺じゃない?


《信じなくてもいいよ。寧ろ信じられて騒がれると困るからね。今は異物Aってことでよろしくお願いします》


 お、おう。


 と、とりあえず、て、丁寧語とかで一応話しといたほうが良いのかな。尊敬語とか出来るか怪しいんだけど。


《あ、良いよ。堅苦しいの嫌いだし。で、かなり話逸れちゃったけど、本題に戻るぞ。実は君に残された時間は少ない》


 お?……おお。


 そう言えばこんな呑気に話し込んでる場合じゃ無いんだよね。私は今暴走中で、絶賛死への直行便に乗車してる訳ですよ。


 ま、どうすれば良いのか全くわかってないんだけどさ。


《そう、君が殻にこもっちゃったからオレも心配で呼びに来たんだ。このままだと本当に死んじゃうからな》


 あ、やっぱりそうなんだ。

 暴走って怖いな。


《んー、暴走も怖いんだけどねぇ。この程度の暴走ならウチのカホだって直ぐ止められそうだよ。今はオレが時間止めてるから何も変化ないんだ。こうやって話してる間に死ぬことはないさ》


 え、マジかよ。

 時間止めるとか、神て凄いんだな。てか本当に神なんだな。


《いやぁ、それほどでもないよ。……て、オレが神だって信じなくていいって言ったろ》


 や、うん、冗談だし。本音は半信半疑だから。時間が止まってるとかこんな真っ黒の世界で確かめる術無いしな。


 で?暴走が原因じゃないなら、何でこのままだと死ぬんだ?


《うん、実は結構君自身が軽く見てるけど、君の怪我、かなりの重症なんだ。心臓の近くに小さな骨が刺さっててさ、体内で出血してるんだ。安静にしてても最長で明後日までには死ぬんだけど、暴走しちゃったらというか、激しく動けば死期が早まるんだ。カホだって心読めても体の全部分かるわけじゃないしねぇ。気付いた時には死んじゃったってオチが見えてる》


 見え……てる……だと?!

 それは、神の代名詞に出てくる未来視で見えてる的な感じすか。予言的な。


《え、そんな代名詞あるのか?さっきのはオレの予測の範囲で言ってたんだけど。オレは未来視出来ないよ……実際に起こってないことを見るなんて神でも出来る奴と出来ない奴がいるからねぇ》


 あ、そうなんだ。


《そうそう。で、また逸れたから戻すけど、君の近くにいた樹葉族の子に早いとこ治療してもらわないといけないよって忠告しに来たんだ》


 あ……はい。


《うん》


 それだけ?


《え、うん》


 マジかよ、神様。


《なんだよ、なんか文句あるのか?》


 や、うん、文句とかじゃないんだけどさ。死なないように気を回してくれたのは有難いんだけどさ。

 それって、時間止めてまでわざわざすることなん?


《そんなこと言われたってさ……》


 だって、なんだかんだ神様にとって私って、何十億っている人間の中の1人だよね?


《こっちの界はそんなに人いないけどね。オレにとって君は久々に会えたお気に入りの子だからね、忠告に来るくらいするさ》


 はぁ……そうなんですか。なんというか、ありがとうございます……?


《いえいえ》


 …………。

 ……うーん。

 やっぱ、なんか、こう、釈然としない。


《何?》


 普通、って言っても元の世界での本とか伝説とかの知識だけどさ。そんな軽いノリでお告げに来たりしないんだけど。

 大体は、そなたの使命はーとか、我が力を授けてやるからどうのこうのとか、言うじゃん。


《まあ、言いたいのは山々なんだ。でもあんま干渉しちゃうとオレが君の精神をプチっと潰しかねないし、それはただの傀儡と変わらないから面白くないだろ》


 何かサラッと怖いこと言ったね。


 あと正直言うけどさ、その忠告今されても私どうしようもなくない?この通り、真っ暗闇の中なんだから。


《うん、出来るならオレとしてはここの突破法とかも教えてあげたいんだ。けどさ、君に君自身の死因教えるのって、なかなかの強い干渉なんだよ。前の干渉の余波もあって既に君の感情に影響出してるんだけど、もっと強くなるかもしれないんだよねぇ。これでもギリギリなんだ。ごめんよ》


 や、謝られてもどういう対応すればいいのか困るんだけど。


 まあ、神様なんだったらこの世界から出る方法くらい教えてほしいなとは確かに思ってたわけだけど、無理なら別にいいや。出来る範囲で頑張ってみるか。


《うん、その意気だ》


 まあちょっと言うとしたら、アレだな。


《ん?なに?》


 私が干渉を最小限に抑えて、尚且つ死なない方法をこんな感じで教えに来たとしたら、まず死因は教えないんじゃないかなと思って。


《え……》


 死期とかその原因教えないで、単純にここの突破法だけ教えるよ。


 元々治療してもらう予定だったんだしさ。干渉少なくて済むし、スムーズにこの暗闇から出れて即行治療してもらうから確実に今の状況より死ぬ可能性低かったんじゃない?


《あはは、面白いこと言うな》


 ん?どこが面白かったのさ。


《じゃ、そろそろオレ帰るよ》


 え、なんで急にそそくさと会話切り上げてんのさ。生意気なこと言ったから?


《あはは、生意気なんて思ってないよ。君って何気に頭いいよね。……うん。そうすれば良かったねぇ☆》


 軽っ!?


 今なんとなくあんたの歯がキラッと光ってるの想像できたよ。


 神様だって思いつかないことがあるんだな。


《あ、でも、君の不信の感情て本当に強いからな。あの状況で樹葉族の子を信用するなんて早急な危機感無いと無理だろ?》


 ああ、まあ、確かに。


 それ言っちゃうとあんたの忠告だって信用できないんだけどな。根拠薄いし、私が夢の中で作り出した妄想かもしれないし。


《…………》


 ごめんて。元も子もないこと言った。


《いや、うん。良いんだ。実行するのは君だしな。俺は信用されたいわけじゃないしな》


 あ、何か元気ない。


 ごめんて。


 凄く有難いとは思ってるんだよ。

 だって言ってくれなかったら、焦ってこの暗闇から出ようとか思わないわけだしさ。無理な願いじゃないなら、また何かこんな感じで私に危険があったら来て欲しいくらいだよ。


《本当?》


 うん、干渉は最小限にして欲しいけどね。潰されたくないし。


《良かった。それなら何かあったらまた来ようかな》


 お、おう。マジかよ。


《うん、君と話すのって割と気楽で心地いいからな。じゃ、オレ本当に帰るわ。あ、サービスで干渉しない範囲のヒントだけ言うと、正の感情ってどの感情でも足し算なんだよね。負の感情は別ベクトルだけどな》


 ……は?


《君が面白い把握の仕方してたから、それ風の解釈だよ。ま、くれぐれも死なないようにな》


 え、あ……はい。

 どういう事だよ?


 あの、えっと……異物Aさん?

 本当に帰ったのか。


 ……………………。


 あ、あいつ帰ったら時間動き出すじゃん。

 やばい。どうしようか……。

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