下山、帰宅
気づけばユニーク人数1,000人軽く超えててびっくりです。
頑張りますっ!
山を降り始めて約15分後には下に着いてしまった。私の片道およそ5〜6時間が、たったの15分だ。
なんつうか、アレだ。泣いていいかな。泣いていいだろ。
「泣くなよ。お前は何も手順踏んでないくせにちゃんとやってたんだからよ……ったく、お前無茶苦茶だ」
無茶苦茶?何が……?
「カホ?どうしたのですか?」
カホの言葉を疑問に思った時、シグレの声が掛けられた。思わず身体がビクッと強張る。
だって、この世界じゃ誰でもできるノルマを半分しかこなせてない。顔を合わせづらい。
「あ、カ……オル様も降りてきたのですか?」
ヒスイの声も聞こえてくる。私の名前を普通に呼ぼうとして思いとどまったらしい。
私が振り返ろうかと迷っているとカホの私を抱える腕に力がこもった。全身打ち身とかしてる訳だしかなりの痛みがくる。
と、私が痛がってるのが分かったのか、力は緩んだ。チラッと見える横顔は凄く険しいから、カホが何かしらに怒ってるのが分かる。辺りの空気がじわじわと熱を持ち始めてきた。
因みに能力者の話で触れた者を蒸発云々聞いてるから、大丈夫かな?とカホが火炎族の能力持ちじゃないのは分かってても内心少しビビってたりする。
「どうしたもこうしたも、先生もヒスイも、もうちょいコイツのこと考えてから授業しろよな!」
カホが怒鳴る勢いで大きい声を出しながら2人に詰め寄る。
あ、もしかしてもしかしなくても私を庇ってくれてる?
「シグレ先生はこういう授業形態をとるって言うのは知ってますが、流石に酷いんじゃないですか?せめて山を登る上での注意事項くらい言ってやっても良いじゃねぇですか。コイツ、ここで外に出んのも初めてだし、血脈の法も何一つ知らねぇってのに!」
カホは私を丁寧に降ろして地面に立たせながら相手を睨みつけた。
「カホ、何をそんなに粗ぶっているのですか。生きる方法を見つけ、いかに自らの命と身体を繋ぎ止める力は、誰から教わるのでもなく、自分で構築してこそなのですよ。私はあくまでそれを導く手助けをする以外に手を出しません。そういう方法でこれまでも数多の生徒を送り出してきたのです。今更変えようとは思いませんが」
シグレ先生は、落ち着いた口調でカホに語りかける。それこそ、物分かりの疎い生徒を諭しているような感じだ。
確かにシグレ先生の言葉も尤もな気はしてくる。生き残る力と、実際の強さは別だ。で、戦争とかの命の取引の時に必要なのは、生き残る力を最大限引き上げること。これは先生としての戦場に向かう生徒への優しさとも言えるかも知れない。
「コイツのこの状態見て、何にも思わねぇのかよ!」
その言葉とともに、私の周囲に火の玉が6つくらい生まれて飛び回る。そのために私の周りが一気に明るくなって私の姿を照らし出した。
いや、待て。一応服着てるわけだし、所々破けてるとは言え、カホが言う程悲惨な状態でもないんですけど?
案の定、先生は大したことないじゃんみたいな顔を私に向けている。
「コイツ、一直線にあの山登りやがったんだよ。あの急斜面を両足括り付けた状態で!んでもって何回か転げ落ちてるらしいんだ」
「「え……」」
シグレ先生とヒスイの声が見事に重なり、信じられないものを見る顔をした。
いや、そんな顔されても、私はどんな顔してればいいんだ?あ、顔隠してるんだったな、ボケっとしてよう……。
ヒスイが山の頂上でカホが見せたような表情をしながら慌てて近づいてくる。
「どこかを怪我されたのですか」
ヒスイが不用意に私へ手を伸ばし、今朝落馬した時のように肩あたりを掴もうとする。
あ、この状態でアレされたら、かなり痛いやつや。避けたくて退こうとしたけど、まだ足を括ったままのせいで後ろに転けそうになる。
とカホが私のバランスが保てるように支えてくれた。そんで私とヒスイの間に割り込んでヒスイの手を弾く。
「パッと見た限りで鎖骨と腰の骨が折れてるかヒビが入っているはずだ。服で隠れて見えねぇけど、他にも全身に重度の打撲と擦り傷をしてる。不用意に触るな」
「な……」
ヒスイは言葉を失っている。シグレ先生は微動だにせず、口を一文字にし他状態だ。フードから僅かに見える水色の目は私を凝視したままでいる。
そんなびっくりするようなことなんだろうか。
それぞれの傷の痛みは別々で見ると今までにも何度もあって、耐えてこれた程度だ。今回は全身色々痛いから確かに気が遠くなりそうなレベルでは痛い。でも耐えれない程でもない感じなんだ。
骨折か。この程度の痛み普通に今まで感じてたってことは、そんな大層な怪我をしょっちゅう負ってたってことか。そら変な風にくっついて可動域狭まる訳だよな。病院行ったことないから知らんかったわ。骨折ってもっと痛いと思ってたけど、本当に痛いのって最初だけだったしな。案外大丈夫なもんなのかも知れん。
先生とヒスイの2人が言葉を失ってることで、やっと頭が冷えてきたのかカホは周囲の温度を徐々に下げさせていく。ついでに火の玉も消えてしまった。
「とにかく、急いで処置しねぇと手遅れになり兼ねない。俺とコイツが気付いてないだけでまだ深刻なのがあるかも知れない……」
シグレ先生がここでようやく身動ぎする。
「すみません、まさかそこまでになっていようとは想像出来ておりませんでした……」
声のトーンが低く、暗いものになっている。
あぁ、ダメだ、この先生の方針は大筋間違ってなかったはずなんだ。私が危険意識なしに勝手にやってしまったことなのに、責任を感じさせてしまっている。
確かに、普通なら急斜面過ぎたら別のルートくらい探すもんだよな。いくら疲れてるとは言え、改めて考えると自分が愚か過ぎる。
「いえ、私が馬鹿だったんです。普通に考えればルート変えるくらい選択するもんだろうに、何にも対処しなかったんですから」
「いえ、私の責任です。とにかく、急いで医務室へ行きましょう」
私はまたカホに抱えられつつ医務室に向かって応急処置を受けに行く。
医務室には治療師がいて、私の状態を見て目を丸くさせていた。
で、全身薬湯をぶっかけられるレベルで治療された訳だが、超痛かった。もうね、それこそ何で意識飛んでくれないのって感じ。意識無い方が楽じゃん。辛いわぁ。
で、今帰り道。
直接馬に乗ったら腰が逝かれているせいで激痛が走ることがわかった。
結果、カホが例の俵担ぎで歩いて帰ってくれることになった。結構な距離だし、なかなか申し訳無い気持ちになってくる。
ていうか、私ゴミクズやん?
ただでさえ世話になってんのに、この世界の人並みに運動も出来ず、無駄に怪我して迷惑めっちゃかけてる。最悪だわ。
私が自責している間に、カホとヒスイが何言か会話していたけど、私には耳を傾ける余裕までは無かった。
次回はカホ視点です。




