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現実逃避してたら異世界に連行されたようです  作者: wine
第二章 異世界で修行します
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食堂にて

 結局、昼休みの時間帯までの間はひたすらヒスイから文字の読み方を教わった。コツを掴めば波打ってる文字でもある程度は把握出来そうだ。ただ、知らない漢字が多いので、これはこれで勉強が必要そうだ。


 そんでもって文体は簡単に言うと古文だった。実際そのまま読んでも分からなくもないけど、文を更に口語訳する必要がある。ただ、私の知ってる意味と大きく違う文法は少なかった。比較的今の感覚に近い言語らしいのが唯一の救いかな。


 まあ、1時間やそこらでスラスラ読めるわけもない。それこそ空きコマとか暇な時間にヒスイから教わるに限る。地道に行こう。


 で、食堂に来た。


 カホもホトリのジイさんも食堂の入り口で待っていた。周囲が避けてるから2人の周りはポカッと空間が出来ている。


 カホは一方的にジイさんを避けようと距離を取っている。あからさまに嫌そうな顔だな。対するジイさんは、まだ何かしら説教をカホにしようとしてるけど周りの目もあってか抑えてる感じだ。


 私はその状況に苦笑しながら2人に近づいて声をかける。


「すみません、お待たせしましたか?」


 一応待たせてた感じなので謝っておく。もうちょい早めに図書室を出ても良かったんだけど、つい粘ってしまった。


「いや、昼休みの時間は本来自由に過ごしてもらって良いのです。早速この学びの場に興味を持ってもらえたようで何よりですな」


 ホトリのジイさんは、寛大にそう言ってふぉふぉと笑った。カホも特に気にしてないようだ。


 てか、このジイさん、見た目結構若く見えるけど、歳いくつだ?喋り方時々かなり老けてそうな感じになるよな。


 ジイさんはヒスイに教室の場所とクラス名を言って、さっさと去っていった。昼ご飯は別で食べるんだろうか。


「ジジイは教師達と食うんだよ」


 去っていくホトリの背中を見つめていると、カホが教えてくれた。


「ふーん。で、私お金持ってないんだけど食堂でご飯食べれるの?」

「ここの食事は先払いだから、金を払う必要はねぇよ」


 先払い……払ったのか?あ、払ったことにされるのか。


 どっちにしろお金一銭も持ってないから私にどうこうしようもないけど。


「じゃ、私もここで食事出来る?」

「当たり前です。昨日のうちに手続きしておきましたので、大丈夫ですよ」


 ヒスイが声をかけながら私に食堂の中へ入るように促した。


 タダ飯とはありがたい。素直に従って食堂に入ってみた。


「うわー」


 食堂の中はかなり広い、人がわちゃわちゃと多くて正確な広さは分からないけど、中学校の体育館くらいの広さの畳の間になっていて、長机がたくさん置かれている。で、入口近くにいかにも食堂みたいな感じでカウンターがあってセルフサービスらしく、料理の乗った皿が置かれている。


 思わず圧倒されて立ち止まっていると、後ろから入ってきた人達が迷惑そうに肩を当てていった。


「カヨ、邪魔んなるぞ」


 腕を取られてカホに道の脇に引き寄せられる。


「あ、うん。ごめん」


 私の視線はカウンターの料理に釘付けだ。


 なんだ、あの料理の量は?あれ、全部取って行って良いのか?

 あ、後から来た奴らがトレイに料理をどんどん乗せていっている。一人一品とかじゃなくて、好きなだけ貰っていいのか?


 …………すごいな。夢の国じゃん。


「ぶっ」


 カホが吹出した。すぐに何もなかったかのようによそを向くけど、絶対こいつ今私をバカにしたろ。


「いや、バカにしてねぇよ」


 弁解されても、何かしら嘲笑ってるとしか思えないタイミングだったからな。


 心の中で突っ込むとカホは曖昧な表情を浮かべる。


「まあ、カヨは食うのが好きだよなって思っただけ」

「嫌味か」

「そのまんまの意味だ」


 ったく、余裕ぶって相手をからかうとか趣味悪い。


 今更だけど心読むってとんでもないアドバンテージだよな。正味心さえ読めてればいつ殺されるか分かんないとかいう疑心暗鬼にならないし。火神の祝福よりも水神のが良かったわ。色んな意味で。


 まあいいや、言ってもしょうがない。


 てか火神の能力てなんなんだろ。結局言われてないわ。


 とかそんな考えは、とりあえず目の前に広がる料理たちを取り終えてからだな。

 トレイを取ってめぼしい物を探していく。純日本料理って感じのものばかりだけど、料理名とかよく分からない。見た感じ煮物が多い。まあまあ美味しそうな匂いがするし、きっと普通に美味しいんだろう。学校の給食より質が良さそうな感じだ。

 それを好きなだけ取れるとか、毎日昼食バイキングじゃん。私もこの場にいるけど、羨ましい限りだ。


 でも一つ問題がある。

 ただいま全くもって腹が空いておりません。


 朝飯食べてから時間経ってないし運動したわけじゃないしな。

 あと、こんないい匂いに囲まれてるのになんだか食欲が湧かない。ある程度腹が減ってなくても食べれるときに食べておくっていう習性があったはずなんだけど、今はあんま食べれる気がしない。


 無理に食べるのも良くないよな。しょうがないから白ご飯と煮物と味噌汁を取る。


 振り返るとヒスイがもう自分の分を取り終えて待っていた。


「部屋を取っています。付いてきてください」

「?あ、うん」


 そっか、今私は口元覆ってるから不用意に食事出来ないんだ。全体的に開けてるこの場所で布を外すと皆んなに見られて意味がなくなってしまう。


 ヒスイについて行くと四方を私の身長より大きいパーテーションみたいなもので囲まれた所に通された。中には4人座れそうな正方形の机と座布団が置かれている。パーテーションは手で持って移動出来るものだけど、ここなら食事しても外から見られることは無さそうだ。


 私とヒスイ、後から来たカホもその中の机を囲むように座った。


 カホのお盆には3つのコップも乗っていた。


 気がきくなぁ。

 そう感心しながらコップを覗き込むと、空だった。


「え、何で空?これって何のために持ってきたん?」


 カホに尋ねると、カホはヒスイに目を向けた。


「ヒスイが入れてくれるんだ。ほら、さっさとやれよ」


 なかなかの頼み方だな。私が頼まれてるわけじゃないし、良いけどさ。


「飲み水くらい入れてくればいいでしょうに……」


 ヒスイはやれやれといった顔してるけど、水を入れるのは特に大したことではないらしい。何食わぬ顔でコップの中に水を作り出した。


「すっごい……」


 本当に一瞬だった。

 瞬きの間にコップには水が満たされていた。訳がわからない。何をどうしたんだ?


「どうやったの?」


 私が興味津々にヒスイに聞くと、ヒスイは目をパチクリさせた。そして、ふっと顔を綻ばせる。


 うっ、こいつ笑うと結構イケメンだな。てか笑ってなくても俗に言う細目イケメンだわ。第一印象最悪だから顔とかあんま見てなかったけど、さすが未来の王子だな。ああ、時期当主だったか。


「顕現さえ出来るようになれば、この程度は簡単ですよ。手を開くのと同じ感じで水を作れます」

「へー……」


 そうか、これ出来たら水分不足にならないから良いな。

 コップの水をゆっくり口に含んでみる。ちょうどよく冷えた水が喉を通っていく。


 飲んだ水が身体に染み渡る気がする。


「あ、美味しい」

「だろ、ヒスイが出す水が一番美味いんだ。だから俺はこれしか飲まねぇ」


 カホが自分の分のコップを呷りながら、さも自分のことかのように自慢気に言った。

 ヒスイは満更でもない感じでちょっと口の端を上げている。


 なんつうか、この2人見てたら友情ってあるんだなって思えてくる。


「仲良いね、ほんと」


 素直な私の感想に、ヒスイは照れ隠しなのか無表情で「そんなことありませんよ」って言って食事を始める。カホはその様子を見て、ニヤッと笑いながら肩をすくめた。


 あ、カホ、今ヒスイの心読んだんだな。それであの反応……うん、微笑ましい。


 因みに、この世界で、というよりこの里で食事の前に頂きますとか言う習慣は無いようだ。徐に食べ始める感じ。感謝の感情は持っててもそういう習慣があるとは限らないわけね。


 私も元の世界で無理やり言わされる以外で言ってた覚えはない。言ってる暇があれば口に放り込んでないと次の瞬間床の上にひっくり返されてるかもしれないしな。まあそこまでのことはなかなか無かったけど、実際腹空かせてたし、言ってる余裕なんてなかった。


 そんなことを考えながら暫く白飯を口に含んでいたけど、食欲が全然沸かない。思わず箸を置いてしまった。そして自分の前に置かれた料理を見つめる。

どうしようか、これ以上食べられない。


「カヨ、もう食わねぇのか?全然食ってないじゃねぇか」

「……うーん、お腹いっぱいで……」


 食事が喉を通らないなんて、初めての経験だ。自分でも戸惑う。


「カヨ様、無理に食べなくても良いですよ。ただ、午後からの授業はいきなりですが、野外での鍛錬になります。途中で力不足になるかもしれませんので、米だけでももう3口程食べておいてください」


 ヒスイが私を宥めるように声をかける。


 野外か、走ったりするんかな。確かに食べてないとキツそうだ。


 私は頷いて箸を取り、ヒスイに課されたノルマをクリアする。3口目を口に入れた時、猛烈な吐き気が襲ったけど、何とか耐えてヒスイの注いだ水で流し込んだ。すんでのところで堪える。


 この水はいくらでも飲めるのにな。

 私は残してしまう料理を見つめる。このまま残したら捨ててしまうことになるんだろうか。初めて食べ物を捨ててしまう罪悪感と、どうしても胃が受け付けない自責で気持ちが暗くなる。


「そんな暗い顔すんなって。俺が食うからよ」


 カホがポンと私の頭に手を置いて、料理の乗った皿に手を伸ばした。皿にこんもりと残っていた煮物、味噌汁、白米もぺろっと無くなってしまった。


「ありがとう」


 素直に言葉が出てきた。若干、煮物料理も味わいたかった気はするけど、今は何か食べられなさそうだ。辛いな。

 それにしても、カホいい奴だわ。ありがたい。


 と、手に持っていたコップの水が唐突に跳ねた。軽く水しぶきが顔にかかった。


????


 何だ今の。

 思わず呆然と今の現象に見入った。


「もしや、カヨ様がされたのですか?」


 ヒスイも驚いたように声をかけてきた。ヒスイの仕業かと思ったのに、違ったらしい。


「え、そうなのかな」

「ああ、今のはカヨがやったな。初動が出来た」


 カホが断言してくる。

 心読めるし、その辺ははっきり分かるようだ。


 でも何で出来たんだ?感謝したから?


 もう一回変化が起きるかと思って見つめるけどそれ以降は特に何も起こらなかった。感謝の気持ちって、そもそもあんまりよく分かんないし、その辺が原因かも知れない。


「流石は救世の主様ですね。こうも簡単に、何も知識のない状態で初動をこなせるとは」


 感心したようにヒスイは呟いている。


 うーむ、今のが自然を操るって事だとすると、理解に苦しむな。実際ちょっと出来たようだけど、結構難しい気がしてきた。


 まあ、そんなこんなで私たちは食事を終えて食堂を後にした。

しゅ、修行してる、はずっ。

次回がちゃんと修行です。

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