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現実逃避してたら異世界に連行されたようです  作者: wine
第二章 異世界で修行します
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馬と目つき

 食事が終わると、カホがいつの間にか居なくなっていた。


「あれ?カホは?」

「カホは馬を取りに行っています。恐らく食事も終えてくるでしょう」

「あ、……そうなんだ」


 確かに、カホもご飯食べないとだもんな。


 それにしても、馬て……。


「もしかして、馬で修練所に行くとか?」

「はい、その予定ですが」


 マジか。馬かー。うーん、確かにこの文明レベルじゃなんとなく普通に移動手段として馬乗ってそうな気がしてくる。私乗ったことないや……。


 ここは素直に言ったほうがいい気がする。


「あのさ、私、……乗馬出来ないんですけど。直接見たことないし」

「ご自宅では馬に触れていなかったのですか?」

「え?うん、ない。乗ったことも無いし見たこともないかな」


 本とかビデオとかならあるけどさ。


「え……」


 ヒスイは驚いて固まる。


 そんなにか。そんなに馬乗るのは普通なのか。

 どうしよう。微妙な沈黙が苦しい。


 ヒスイは暫く何かしら考えていた様だけど、憐れみの目を向けてきた。

 何で憐れみの目なんだ?


「それは、こちらの界では不問となるでしょう。私が共に馬を繰るのでご心配無用です」

「あ、……ありがとう……?」


 なんか一緒に乗ってくれるらしい。とりあえず礼は言うけども。


 てか不問?中国語の無問題的なイメージ?

 でも、ヒスイが凄く可哀想な子を見る感じの顔だ。


「城の外には、庭では見られぬ多くの動物や植物がおりますので、カヨ様は驚くことになるかもしれませんね。初めてお会いした森では良くお見えになれなかったでしょうし」

「……?……??」


 微妙に文脈がよく分からない。


 城の外には動物や植物が沢山いるらしい。

 動物園や植物園みたいになってんのか?いや、それとも自然豊かだよって自慢してんのか?


 にしてもヒスイの憐れみの目が何となく腹立つな。いや、腹は立てないけど、なんかイラッとくる感じだ。


 んー、早よカホ来ないかなー。


 そんなこんなで、十五分くらい待ってると襖の向こうで馬の嘶きが聞こえてきた。


 私は居づらいのもあって、急いで部屋の襖を開けた。カホが二頭の馬を廊下の手すりに繋げるところだった。結構手馴れた動作でくくりつけていく。またヒスイになんか怒られそうな気がするけど、これはセーフなのか?


「ん?もう行くのか?」


 カホはこちらに気づくとのんびりと笑いかけてくる。


 口の端に米粒ついてるし、平和ボケって言葉が一番似合いそうな気がする。


 と、私の思考を読み取ってか、慌てて口を拭っているカホ。まあ、アホだな。


 むっとした様子のカホをよく見ると服装がちょっと変わっている。甚平ぽいのは変わらないけど、今まで着ていたのが式典用なら、今回来ているのは部屋着みたいな感じだな。ちょっとラフだし若干汚れがついてそうに見える。黒だから目立ってないけど……あれ?普通逆じゃない?


 一方でヒスイは昨日とあんま変わらない感じの服だけど。


「あれ?なんかあったのか?」


 カホは、私とヒスイの間に微妙な気まずい感じが生まれてるのを読み取ってくれたらしい。不思議そうに首を傾げている。流石だな。


 私は黙って、後からついてきたヒスイを見る。

 カホも吊られてヒスイに目をやる。

 ヒスイはやはり可哀想な子を見る目で私を見ながらカホに言った。


「カヨ様は馬に乗った事がないようなのです」

「そうなのか?!」


 カホもビックリした顔で私に聞いてくる。


 何?そんな馬乗ったことないのって重要なのか?


「え?でも、あれ?お前って外には出たことあるんだよな?」


 カホはビックリしつつも不思議そうに聞いてくる。


 ん?外って?


「家の外ってこと?それならあるけど……」


 カホは不思議そうに腕を組んでいる。

 何だろう。ヒスイも「えっ?」て小さく声を発して首を傾げている。


 ……よくわからないな。


「ヒスイ、多分だけどな、カヨは俺らの考えてる感じじゃねぇ気がするぞ。あっちの界は馬に乗る習慣がないんじゃないか?」

「うん、そう。私の周りでも馬に乗ったことのある子あんまり居なかったし」


 私はとりあえずカホの言ってきた内容が正しいので頷く。動物園で乗ったことのある子はいたけど、さすがに馬を飼ってる子はいなかった。

 田舎の方とか行けばいるかもしれないけどさ。あいにく私のいた場所は小さいけど都会だ。


「カヨ、こっちの界じゃ、馬に乗って外に出ない事がないんだ。馬に乗れるってのは外出が許される身分ってことで、馬に乗れないってことは外出できない身分ってことなんだ」


 へー、そんなのがあるんだ。

 だからヒスイは外の環境のこと言い聞かせてくれてたのか?


 でも外出が許されない身分って何?


「そうでしたか、これは大変失礼致しました。私としたことが、少し勘違いしていたようですね。カヨ様は異界のお方ですから、こちらの常識では通じないということを把握できておりませんでした」


 ヒスイは丁寧に頭を下げた後、目頭を軽く揉み解している。

 今日会った時から思ってたけど、何か疲れてそうだよな……


「いや、別に良いよ。それより、外出が許されない身分てどんな身分のこと?」

「罪人の子であったり、捕虜の身分であったり、遠くへの外出が許されない者のことです。その者らは一生を屋敷の中で過ごしますから、カヨ様もそういった方なのだと思い違いをしておりました」

「へー」


 ……なるほど。

 で、異世界に来たしそれをわざわざ守る必要は無い、だから不問て言ったのか。


 捕虜はなんとなくわかるけど、罪人の子って、そういうのもダメなんだ。そりゃ確かにちょっと可哀想な気がしてくる。何でそんな制度あるんだ?罪人の子……言いえて妙だな。まあいいや。


 確かに、この世界って馬乗ったことなかったら遠出できないし、中々クリティカルではありそうだな。でも流石に捕虜の人は捕まる前に出来てたりするんじゃないかな……どうでも良いか。


 そんな感じで、微妙な空気を解消したので、出発の準備をする。

 私が早速靴を履いているとヒスイが話しかけてきた。


「カヨ様、こちらをお召しになって下さい。少し着心地は宜しくないでしょうが……」


 ヒスイは申し訳なさそうな顔をして手に持っている布を差し出してきた。


「これは?」


 受け取って広げてみると、額当てっぽい物だと分かる。ただ、少し幅広の布が一体化している。


「念のため、素顔を隠していただきたいのです」

「あ、そう」


 私は素直に従う。

 ちょうど目のところだけ切れ込みが入ってて、額当てをキツく結んだら鼻の上あたりの布も同時にキュッとなる。なかなか良い感じにフィットするな。


 そういえば某忍者学校の先生とかこんな感じのしてたな。アレは別々に分かれてるからちょっと違うかもしれないけど、口元がぴちっとなってない分、こっちの方が話しやすい。


「でもこんなのしてたら悪目立ちしそうだけど」

「修練所は格好についての大きな決め事がありませんので、時々こういったものを付けている人もいますよ。なのでお気になさらないでください」

「そ、そうなんだ」


 いわゆる中二病的な奴がいるのだろうか……?


「その者たちの多くは、やはり戦場や実力者同士拮抗した訓練中の事故等で顔に傷のある者ばかりなのですが、隠して仕舞えば分からないものです」


 ヒスイはニコリと笑みを作った。


 サラッと言ってるけど、それってなんだかんだ強いやつしか付けてないってことだよね?

 私新人なんだけど。

 私みたいなヒヨッコがつけていったらイキってる感じにとられるんじゃないの?ヤダよ、行った瞬間そんなんで絡まれるとか……


 そんな感じで焦っていると、カホが私の肩に手を置いて満面の笑みを見せた。


「心配すんな。お前かなり目つき悪いから、ちゃんと強そうに見えるし、絡まれる前にお前が睨めば大抵のやつは一瞬で逃げてくぜ」

「…………あ、そ」


 なんか、一瞬で焦りとかが消えた。

 でもカホ、お前フォローしてねぇよ。寧ろ傷ついたわ。てかムカつくわ。


「カホ、お前後でツラ貸せ。ブン殴ってやる」


 思っ切り睨んで啖呵切ってみる。意外とスラスラ出て気持ちがいいな。

 因みに本気で言ってたりする。カホも昨日の奴らみたいにベコッとなるのか気になるし。


「やめてくれ」


 そんな私の心情ごと読み取ってか、カホは私の肩に当ててた手を退けてキリッとした顔をした。


 あ、ガチなやつや。割と本気で拒否ってきたのがなんとなく分かる。


「はい、やりません」


 ちょっと調子に乗ったな。気をつけよう。


「うん、気をつけろよ。なんたってお前、歴代最高と言ってもいいくらいは目つき悪いからな、絶対絡まれるぜ」

「私、そんな目つき悪いのか?」

「あぁ、やべぇな。多分歴戦の野郎でもなかなかこんな目にはならねーよ」

「そっか」

「目つきで人が殺せるとか噂が立ちそうだから、ちゃんと考えて行動しろよ」


 いくらなんでも、そんな何回も目つき悪いて繰り返し言わなくてよくないか?


 思わず下がっていた視線をカホに向けるが、そこにはニマニマと気持ち悪いくらい笑顔のクソガキがいた。


 あぁ、この顔知ってる。人を小馬鹿にしてる時の顔だ。

 こいつ、途中からからかい半分で言ってた?てか最初からか?


「こ、の、野、郎」


 私は思わず口元に笑みを作りながら指を鳴らす。

 私の様子を見てカホは慌てて首を振る。


「あ、わ、ごめん。嘘。あんまりお前が言われた通りに落ち込むから。ちょっと言ってみただけだから」


 カホはいそいそと告げると馬の陰に隠れた。


 ふぅ、アレだな。教訓だ。カホはあんま信じちゃいけない。


 ん?そう言えばヒスイ、何だかんだカホが調子乗ってたら止めてる気がするけど、そうじゃないんかな。


「ヒスイ、さっきから黙ってるの何で?」


 思わずムスッとした顔で聞いてしまった。カホが馬の陰で「馬鹿、聞くなよ」とか言ってるけど無視だ。


 私の不機嫌そうな顔に対して、ヒスイは爽やかスマイルを見せる。


「いえ、カヨ様は歴戦の将に勝るとも劣らない、なかなか険しい目つきをしてらっしゃるので、カホもあながち間違っていないかと思われましたので」

「……あ、そ」


 わー。さわやかな笑顔が痛い。ナチュラルに傷ついたわ。


 そういやヒスイって、こうやってズケズケ言うやつだったな。こいつのこれを無愛想にしたら初期に戻りそうだ。つまり、今までのは見下してるからじゃなくてデフォだったってことか。


 ……うん。どうやら私、目つき悪いらしい。

サブタイトル適当ですよね……すみません。

てか早よ修練所行けよ……と自分の中で叱咤しております。

が、これも書きたかったんです。お付き合いいただきありがとうございます。

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