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漆黒のレコードキーパー  作者: 辻村深月
5/17

レコード5

空中に白い欠けたレコードが舞う中、2人にの少女が固まって何方も動こうとしない。

膠着状態の中で、張り詰める緊張感に息を飲む。

そして、先手を切ったのは柏木さんの方だった。


白いレコードが杖の上部に集まると、火の玉が無数に表れ少女に向っていく。

爆風が吹き荒れ砂が視界を覆った。

その光景を前にし、サッと血の気が引いていく。


「やりましたかね?」

「やりましたかね、じゃないですよっ!なんスか今の!?死にますって!!」

「え?」


俺は血相を変えて、ケロっとしている柏木さんに詰め寄る。

大惨事じゃないといいのだが…。

しかし、自体はまた俺の予想を裏切る方へと進んでいった。

砂塵から姿を見せた少女は手をかざし立ち止まったまま、まったくの無傷だったのだ。


「なっ…柏木さん!あの子人間じゃない!?」

「そうですね、異界人です。とりあえずカマかけて適当につついて見ますんで、よく様子を見ながら下がってて下さい」


俺がかなり取り乱すのも気にせず、柏木さんは淡々とそう言った。

そして杖を振りかざし、異常な速さの突きを連続で繰り出しながら少女に向っていく。

本当につついてるし…。

物影に隠れてそう思いながら、同じく異常な速さでそれをかわしている少女の様子を見つめる。


「逃げてばかりですかっ!?芸がないですねっ!」


いやいや、突いてばかりの貴女はどうなんだ。

思わずそう思いながら、少女に変化がないかを確かめ続けた。

そして見逃さなかった。

少女の口元が、また弧を描いたのを。


「柏木さんっ!!なんかヤバいです!!」


俺が叫んだと同時だった。

紫色の怪しい閃光が辺りを包み込んだのは。

それと一時置いて、柏木さんが物凄い勢いで飛んでいき、壁に打ちつけられる。


「柏木さーん!!」


俺はまたこれ以上ないほど叫ぶと、柏木さんに駆け寄った。


「柏木さん、しっかり……?」


あれ…?

俺は駆け寄って体を支え、違和感に目を丸くした。

何かが思ってたのと違う。

その違和感の正体は、程なくして判明した。


「おっ、オトコー!?」


驚愕の余り俺は奇声を上げる。

その声に目を覚ました柏木さんは、ワナワナと震える俺を尻目に、何事もなかったかのように立ち上がりながら言う。


「どうかされましたか?」

「どうかされましたか、じゃーないでしょ!どうしてくれるんですかっ!今すぐ全国の銀髪美女好きに謝って下さいよ!!」

「なんの事ですか?」


まったく悪びれた様子のない柏木さんを睨みながら、今までの経緯を振り返る。

そう言えば迫力のある美人が苦手とはいえ、女子と二人きりだと言うのに妙な違和感がついて回っていた。

こうなると考えれば考えるほど、本能的に気づいていたような気がしてならない。

やっと俺がスカートを見ながら白い目をしてるのに気づくと、柏木さんは悪びれるどころか程よく長いスカートを軽く持ち上げながら微笑んだ。


「これ美しいですよね。本当に君の世界は素晴らしいものだらけで驚きました。飾り立てがいがあります!」

「…は?」


そうこうしている内に、不意に視線を向けると例の少女の閃光が上がった。

紫色の閃光はジグザグに周囲を走りながら俺たちに迫り来る。


「柏木さーん!後ろ後ろー!」

「はい?」


危機感のない彼女改め彼の応答に、俺の目の前は次第に暗くなる。

だが、恐れていた痛みは訪れなかった。

獣耳…?

緑色の長いストールをした何かが視界をよぎると、少女を巨大化した大きな手で叩き飛ばした。

少女が吹き飛んでいった方から、砂塵が上がる。

呆気に取られ茫然と立ち尽くしていると、目の前に現れた目つきの悪い視線が俺達を捉えた。

彼は鋭い視線を向けたまま俺達に近づくと、無言のまま、しかしどこか自然な動きで柏木さんを張っ倒した。


「はっ…はぃいっ!?」


俺が声を上げたのにもまったくお構いなく、突如現れた少年は柏木さんに対し、攻撃の手を緩めない。


「こっの鳥カマ!!俺に何も言わずに、どこほっつき歩いてやがった!?」

「止めてよ雅、悪かったってば!それと私は鳥だけどカマじゃない!!」


俺を置き去りにし、知り合いらしい二人は暫く何やら言い争っていた。


「あのぅ、お取込み中悪いんですけど…」

「あぁ?誰だお前は?」


当たり障りないよう敬語で笑いかけたが、目の前のケモ耳君にはまったく効果がないようだ。

むしろ逆効果だったのではと思うほど、ガンをつけてくる。


「雅!彼は新しい仲間です、そんなにガンくれてはいけません!」

「いや、まだなると言った覚えは…」

「えぇ?なって頂けないんですか!?」

「いや、だからそれはその…」


そんな俺と柏木さんのやり取りを聞いていた彼は、今までもそうではあったが更に不機嫌さを増した表情になり、俺たち二人を丸ごと吹っ飛ばした。


「何だお前は!?煮え切らねーな、男ならはっきりしやがれ!!」

「雅…暴力はいけません」

「鳥カマは黙ってろ!」


柏木さんとケモ耳君の話を聞いているうちに、俺の中の何かがプツンと音もなく切れた。


「いやいや、君こそちょっと黙っててくんねーかな、ケモ耳君」

「はぁ?何だとこのウジウジのチキン野郎が!」


俺とこの雅とか言うケモ耳が取っ組み合いをしそうなところに、柏木さんが割って入って止める。


「雅、いい加減にして下さい!綾瀬君も、生物学的には私の方がチキンに近いですから!」


男三人が揉みくちゃになっていると、再び閃光が伸び雅を捕らえた。


「ぐっ…!」

「雅!!」


柏木さんが杖を構えるが、その動きはピタリと止まる。


「そうそう、そのまま動かないでいて下さいね…すぐ終わるんで」


俺と柏木さんは目を大きく見開く。

黒いワンピースの少女は、リボンの下から同じ色のツノを出しながら、俺達を見下ろしていた。



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