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Wau×7 狩り×魔獣

 仕来りというか、風習に従って7歳になれば狩りを覚える為に大人たちに同行して獲物を持って帰る。

 これは犬獣人(トッグスロゥプ)が7歳で身体能力の強化を本能的に使うようになる事と関係があったのだと思っている。子供だと良くて5割増し、慣れれば長時間使えるようになって行く。だからその訓練も兼ねているんだろう。

 今日は森に初めて入る。草原の狩りと違って危険も伴うけど獲物の数も種類も増える。だからこの森で獲物を獲られるように為れば一人前と認められる。まあ、こういった風習とかは馬鹿にも出来ない。

 草原で危険と言えば野犬ぐらいだ。森には熊や魔物もいるからね。

 やっぱり一人前と言われるにはそれだけの事をこなす必要がある。

 食べ物の種類も増えるから採取もできるし、犬獣人(トッグスロゥプ)の生活の基盤だもの。


 槍と弓、そして腰に刀とナイフを差してベルトに投擲具を嵌めて、準備ができたと思ったら隣の家で言い争いが聞こえるんだけど……

 まだ諦めてなかったんだね。


「私、魔術も使えるし、狩りだって弓もナイフも槍も使えるわ!」

「いや、それは知ってるが」

「なんで森にいっちゃいけないの、私の方が狩りだって上手なのよ、アルトには敵わないけど、ほかの子には負けないんだから」

「それも判っているがな、これは決まりなんだよ」


 そりゃね、シャルが優秀なのは判ってても、風習はそう簡単に変えれないだろう。でも森には熊とかの危険が山程あって行って欲しくないっていう気持ちを無視するのもどうかと思う。難しいなあ、狩の腕前だけだったら間違いなく若手でも飛びぬけているもんな。


「シャル、いるかい?」

「ア、アルト? ねえアルトからも言ってよ、狩りで私の方が他の男の子より上手だって」

「うーん。ねえシャル、シャルは畑仕事は嫌い?」

「嫌いじゃないわ、でも狩りをする腕があるんですもの、勿体無いじゃない」


 まあ、そう言うと思ったけどさ、小父さんも小母さんも困ってるじゃないか。


「じゃあ、こういうのはどうだろう、小父さん、小母さん、長に聞かなきゃ判らないけど、子供達の面倒をシャルに任せるのはどうかな? 僕が抜けるから心配だったんだけど、シャルの腕前なら安心して任せられるし、狩りの成果森で上がらなかった時に助けになると思うんだけど」

「ふむ……まあ今までの事を続けるというのは」

「あなた、いい考えだと思うわよ、シャルだって畑で腕を振るわないよりもいいし、子供達も安全だし」

「うーむ、わかった、シャル、それでいいか」

「森じゃないのは残念だけど、アルトの代わりに皆を守るなら……」

「よし、じゃあ長の所に確認にいってくる」


 小父さん、説得頑張ってね、大丈夫だとは思うけど。後で追いかけようか……


「アルトは今から?」

「うん、その前に話し声が聞こえてきたから」

「え!」

「あれだけの声だもの筒抜けだわよ、フフフ、よかったわねシャル、アルトが来てくれて」

「お、お母さん気づいてたら言ってよ!」

「ま、まあそう云う訳だから、じゃあまたねシャル、皆を宜しく」

「任せて、ノンもしっかり面倒見るから」

「うん、頼むね」


 さあ、変な話になる前に退散しないと、よし長の所へ行こう、うんそうしよう。


 長の説得に助太刀をするのは簡単だった。畑を全く手伝わないってことじゃないしね。子供の仕事は多岐に渡るし、何よりも実績があるのは大きい。俺が森に行くからその分の獲物は減る可能性があると言えば長としてはなるべく安定させたいと考えるのが普通だもの。


 小父さんから礼を言われながら村の出口へ向かう。

 狩りについていくのは全部が同じ集まりじゃない。

 俺の場合は親父と小父さんについていく。二人のコンビは中々優秀だし、学ぶ事も多い筈だ。


「いやぁ、しかしよぉアルトに付いてこられるってのは親ながら大変だべさ」

「んだな、下手な腕だったら逃げ出すべさ」

「んだどもまあ、ライっちゃ一流だでな、問題なか!」


 とまあ小父さん連中が騒いでいる訳で、森には流石に初めてだからなあ、そこまで自信は無いんだけど。そもそもこうやって狩りに子供を連れて行って鍛えるのは親の役目だからね、父親が嫌がっても逃げられない宿命なんだよ。まあ父さんが嫌がるとは思ってないけど、小父さんは微妙な顔してたもんなあ。

 父さんのパートナーだからということで諦めていただこう。あれだよ、7歳の子供なんだから、心配しすぎ……

 という風にはするつもりだから!

 ちゃんと空気は読めるよ、初日でドヤなんてしないから。それに出来るけどそれって弓の性能が大きいのであって槍とかで熊に対峙したこともないしね。いやしたくないけどさ、犬獣人(トッグスロゥプ)ってそう言う所でスパルタというか、ビルシュ(鹿)を狩ってきて半人前(既に済んでるけど森でね)熊を皆で倒してやっと一人前という世界。

 普通の熊で済ませたいなあ……

 そんな風に思ってたのがいけなかったのか、森に入ったら仲間を『集め』る笛が鳴った。

 しかも『緊急』の知らせ……

 少し意味が判らないな。


「アルト急ぐぞ、ついて来れるな?」

「大丈夫だよとうさん」

「ハハ、アルトの足なら問題ないだろうライ」


 既にキョッピを2羽と|ケッコーも2羽仕留めている。練習という事で両方とも一羽ずつは俺が仕留めていた、まあ、射線さえ取れれば弓の性能がいいから問題は無い。どうせならビルシュか森特有の獲物がいいなと探していたんだけど、この騒ぎで中止になった。

 大体がこういう場合は手に負えない大物か危険が迫ったときなんだ、笛は音のならない笛だけど凄く遠くまで聞こえる。方向を定めたら身体能力を強化して一気に駆けつける。そしてそこで見たのは巨大な灰色熊グレムベルよりも恐ろしいウィグレムベル、所謂魔獣だった。


「ちっ、魔獣か……」

「『呼び』で鳴らしたのは何処の馬鹿だ……」


 父さんと小父さんが悪態をついたのも仕方が無い、魔獣は危険だ相手によっては逃げる事だけに専念するように決まっている。そういう場合は『逃げ』という鳴らし方をする。今回のような危険な相手なら笛の音は『逃げ』『危険』『緊急』が正しい。それが『呼び』『集め』『緊急』だったので違和感があったが、間違えたのかそれとも……

 逃げ惑っているのはノームだった、口には笛を咥えている。

 何をやってるんだか、もう3年は森にいるのに……

 理由は簡単だった、ノームの小父さんが倒れてる、出血もしてるし、襲われたんだろう。

 せめて魔獣でもウィウル(魔狼)とかなら対処もできたんだろうけど、この大きさ、相当知恵も回るみたいだ。

「父さん、ノームの小父さんが」

「ああ、こりゃ参ったな」

「しゃあねえ」

「ま、見捨てる訳にもいかん、が、これ以上は増えても逃げれるか判らない事に仲間は集めさせれないからな、『逃げ』『危険』『間違い』を頼むはルート、ちょっといってくる、アルトはノームを隙をついて助け出せ、ルートはノートの奴を頼むぜ」

「判った」

「任せな!」


 父さんが槍で牽制に入ったところを身体強化を使ってノームを連れ出す。


「な、アルト、お、親父が!」

「落ち着けって、父さんと小父さんが助ける手筈になってるから」

「そ、そうか、でも……なんだあの熊……こっち見てるんだ?」

「え」


 確かに親父が牽制してる。にも拘らず熊の注意がこっちに?

 何でだ……

 判らない、判らないけど子供狙いなのか、とにかく拙い気がする。


「ノーム怪我は無いよな」

「ああ、じゃあ逃げるぞ、運がよけりゃ逃げ切れる」

「わ、判った」


 あの父さんの腕でも傷を付けるのが難しい相手なのか、コンパウンドボウの全力なら行けそうだけど、無理は禁物だ、とにかく打ち合わせどおりに撤退しよう。そう決めて俺たちは走り出した。勿論ノームの強化に合わせてだ。なのに、魔獣は父さんを力いっぱい振り払うと突然体の向きを変えて俺たちに向かって走り出した。


「アルト、なんでだ、なんでアイツはこっちに」

「判らんが、とりあえず下るぞ」


 元の世界だったら不可能……と言っても魔獣相手に何処までできるかだな。

 あの巨体だから、普通は下りは若干苦手だっていうのに、木を押し倒しながら全力で走ってくる。

 なんだ、何でこっちに来た?

 筋力を俺のレベルで強化できないノームだと捕まるな。

 くそ、普通の熊なら逃げ切れるだろう、木を押し倒すなんて反則だろうが、こっちは限界まで走ってるし、殆ど落ちるように走っててなんで追いつくんだ。


「ノーム斜めに走れ、真っ直ぐだと転がるように走ってくる!」

「判った」


 よし、流石にいう事を聞いてくれた、と言っても反撃は無理、一か八か足止めしないと……


 開けた森のスポットの場所を過ぎる瞬間にボーラをつなげ合せた物を投げつけた。

 切れたらそれまで、一瞬でも足を絡めてくれれば儲け物だ……

 本当なら罠でも仕掛けたいけど無理だしね。


「グルゥォォォオ」


 忌々しそうに前足に絡んだロープを引きちぎろうとしている。

 だけど、それは特別製だから簡単には千切れないよ。

 本当に持ってて良かった、流石蜘蛛の蟲糸製、勿体無いけどくれてやるさ。


 そこから村へ向かって、俺たちは一目散に逃げた。叫び声が聞こえなくなってやっと一安心したが、もう二度とあんな無茶は御免だな。

 なんであの魔獣がこっちに執着したのかは謎だ、別に奴の子を浚ったとか殺しては居ない事もわかった。

 そもそも最初は父さんに気をとられていた筈なんだ。


 ノート小父さんも幸い助かったし、被害は最小限だった、父さんも振り払われたけど、怪我は無かった。

 それだけにあの魔獣について討伐するか如何かが検討される事になった。

 仲間がもしもやられたら犬獣人(トッグスロゥプ)族は必ず敵を討つ。それは危険を摘むためでもあり、仲間の報復でもある。だから怪我をしたのみで済んでいるならば必要ないのじゃないかという意見もでたのだ。

 俺の個人的な意見なら討伐すべきだ。なにせ森のそんなに深くない位置で追いかけられている。川を使ったりして匂いは追えないようにしているけれど、危険すぎる。


「ライはどう思う、実際に戦って」


 長が父さんに尋ねる、ノート小父さんは怪我だし、この場で実際に対処した大人は父さんだけだ。

 まだ一人前じゃないノームだと相手の力が測りきれてない。

 正直言えば生きてて不思議なぐらいだ。


「あれは強いな……おそらく傷も浅いものしか与えてない」

「いくら一人だといえど……ライで傷を付けれないとは」


 村で一二を争う腕前の父さんでもやっぱり牽制程度だと傷がつかないのか……

 そうだよな、あれだけ木をなぎ倒して平然としてるような奴だ、皮膚も毛も相当に硬いんだろう。


「戦った場所も場所だったので振り回しも効かなかったし、牽制に徹したからな。槍で突けばまた話は変わるだろうが、俺はやっておくべきだと考える、ノートが襲われた事も考えて普通に狩りをしていて襲われるだけの知恵をもっているんだろう。途中で俺から狙いを変えたほどだからな」

「うむ……では明日朝から討伐を組む、皆に伝えてくれ」

「「「おう」」」


 こうして俺たちはあの魔獣を討伐する事になった。

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