Wau×6 ライバル
グウェンドリン達が山へと戻ったあの宴の日から月日は経っていた。
この月日という考え自体が無い世界だったので慣れるまで苦労したよ。『一年が何日』とかそういった学問どころか考えが存在していないのだから仕方が無かったけど。一つの村で暮らすだけだと問題が無いのが実情だからね。
春になってこの花が咲いたら種を撒く、実ったら収穫するといった方法で農作物は育てられて収穫を迎えるし、狩猟に関しては言うまでもない。生活とは生きるための糧を得る日々なのだから六日働いて一日休むといった事は当然無いし。獲物が無いと暮らしていけない世界だからそれが当たり前だ。
だから毎日獲物を確実に村へと持って帰ってケッコーの件なども含めて大人から信頼を得ている。鍛えている子供たち全員がこれまでにない活躍をしているのだから当然かもしれないけど、少々照れくさいね。
ただ自分としてはやはり日付がないのはどうも感覚的に寂しかった。
だから、一年の日数を図ってみた。もしかしたら閏年があるのかもしれないけど、この世界でも一年は日数は変わらず三百六十五日だったので五日を一括りにして目安にした。ほら7日で1週間ってなんだか変じゃない。半素数なのでどうやっても割り切れないし、七十三週と考えてもこれは素数になってしまうので考えるのを諦めた。広めるには苦労したけどね、休みってのはないけど交易やなんかには使えるからさ。
どうせ信仰といっても自然信仰でしかないし、月は浮かんでいるけれど月の周期で考えると一年が一定しなかったので物々交換には使われているが不便だと思う。なにせ次の交換の時期はこの満月が2回過ぎた後で出立すると云った取り決めになるのだ。大よそで60日周期での交易となるのだけど不定期どころの話ではない。どうしても季節がずれたりするから得策じゃないんだよね。目印としては悪くないんだけど。ほら、満月だねえって1日前後は変わらないしさ。
最初に聞いてた予定からグウェンドリンが遅れた時には随分心配した。それが普通だと思えばいいが2日遅れればなにか途中であったんじゃないかとヤキモキしてしまう。
そこで月を利用しないで交易の日にちを決定する方法を生み出した。
まずお互いの村に行き来する日にちを算出しておく。
今のところは闇輝人と猫獣人のみだから差も大した事は無い。
大よそで4日あればこの村へとやってこれる。なので交易を終えて帰る代表に石が入った袋を渡すのだ。その袋には入っている石が60個、村へ帰る翌日の太陽が昇れば一つ石を取り出す。そうして残りが此村へ来るのに必要な数になった所でまた来てもらう。
こうしてこの村を中心にして交換の市を開くことに成功した。これは大きい発展だと思うよ。将来は別の獣人種も参加を呼びかけたいと計画を立てているところ。
他にも村の耕作に使う土を森から持ってきた土を混ぜてみたりと色々工夫をしたりと、生活を少しでも豊かにするべく頑張った。そうして認められれば認められるほどにノームが突っかかってくるのだけど、だれかどうにかして!
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「アルトォ」
「せめて人の名前なんだからさ、アルト、ォは要らないの」
「アルトハルトォ」
「本当に面倒な……」
「俺は、お前にだけは負けない!」
「あのさ、別にノームが俺に対抗意識を抱くのはいいさ、でも一昨年の宴の勝負からどれだけやったよ。全部俺が勝ってるよね、というか、今から狩りでしょ。勝負なんてしてる暇はないよ?」
「お前も今日から大人に混じって狩りに来るんだろうがっ」
「まあ、7歳だし?」
「だからこそ、本当の勝負だ!」
「一人でやってなよ、森に入るのにそんな事に気をとられてたら死ぬよ?」
「グヌヌヌ」
「じゃあね」
本当に困った奴だなあ、顔を真っ赤にして。
まあ突っかかってきた時から顔が赤いから興奮してたんだけど、本当に面倒臭いやつだ。大体20日に一回のペースで挑んでくる。最初は相手にしなかったんだけど、ノームがシャルティを景品扱いした事に怒ったシャルティが勝負を受けて以来ずっとあの調子。そもそもだ、怒るのはいいけど勝負を受けるってなんでさ。
おかしいよな、何女の子の7歳ってそういうものなの? 怒るのは俺も怒ったから良いんだけど釈然としないなぁ。
手の掛からない実の妹と、なんだかんだで手の掛からない筈がすっごく手の掛かる事がある幼馴染っていうより妹的な。
『兄上の言いたい事は判らなくもないのであるが……シャルが不憫である」
『リックね、考えてみて、俺は将来あの馬鹿神を殴らないといけないんだ、だから旅にでるのにシャルを連れて行けないだろ、その辺りはハッキリさせておかないといけないのさ』
『無駄な努力であると思うのである』
確かに、未だに狩りをさせたら他の面々よりも上手いシャルティがいう事聞くかなあ……
困ったなあ、あのプラドが成長して仮の腕も悪くないのにシャルよりも成果が低いんだよなぁ。原因は詩化も俺だろうな。魔術の使い方とか色々と教えてて、英才教育に近いのかもしれない。
ま、まあ何とかなるはずさ!
「サラさん! 出来てる?」
「よう、アルト、ハハハ誰に言ってるんだ、出来てるに決まってるさ。特にアルトのは魚のためにも疎かにできないっ」
理由がそれなのがなあ、別に魚は問題なく届けるのに。まあ、そのお陰で色々助かってるんだけど。
「ほれ、特注の鏃付きの鉄矢と投擲用ナイフの研ぎも終わってるぞ」
「助かるよ」
「なに、アルトに良い武器を渡せばそれだけ獲物を獲ってきてくれるからな、それに勉強になる物を作らせてくれる。いやあの時の決断は正しかった!」
胸を張ってますけど、あの決断も最初は良かったけど、結局魚目当てでしたよね?
後女性なんだから胸を張らないで、スタイルも悪くないんだから!
「サラさん……いつも言ってるけどさ」
「女性だから慎みをってやつだろ、ハハハ、アルト相手だからやってるだけだ」
「俺もオトコナンデスケドネ!」
「フッ、まだまだ」
「今日の魚は無しでいいってことで」
「ちょぉっとそれは酷いわ!」
「じゃあ慎ましやかにする努力もして下さいよ、グェンドリンさんや奥さんにも言いますよ?」
「マテ、まって! 揶揄ったのは悪かった、謝る、謝るから母さんにだけは勘弁して! それにアルトにだけってのは本当だからな」
「はぁ……わかりました」
駄目なんだろうなぁこのやり取りもノームじゃないけど、半年前ぐらいから何度もやってる気がする。ナイスバディなのに自覚が無いというか。7歳の子供相手に誘惑するとか何考えてんだろうかというか揶揄うのは酷いと思う。この人自分が美人なのを完全に放棄してるからなぁ。あれだよ、この人は体がファンタジーなんだよな、引き締まった筋肉と艶やかな肌なのに胸が筋肉じゃなくて筋肉+脂肪の塊がブルンって、そうブルンではすまないなヴルンヴルンって感じでたわわなのだよ。お前筋肉じゃねえのって話しかけてみたい。どこかのアブヤロウみたいに話しかけたら会話が出来そうなぐらいの存在感が……
駄目だ奴の魔力は危険だ。あーまあそういう訳で、自分の魅力に気が付いてなかったくせにこうして揶揄うのは平気でやるんだよ、純情なんだこっちは。
武器の手入れの腕も作る腕もいいし、美人なんだけどなあどうしてこうも残念なのか……
考えないでおこう。
兎も角武器の準備もあるし、そろそろ家へ帰って装備を整えよう。
リハビリ済みました……
再開するのがこんなに大変になるとは!
世界観の読み込みがツラタンでした。